ハイブリッドワークどう実現する?ACALLが10億円調達「WorkstyleOS」拡大へ

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ニュースサマリ:ワークスペース管理サービスを展開するACALLは5月25日、第三者割当増資の実施を公表した。調達した資金は10億円で、ラウンドはシリーズB。引受先になったのはジャフコとEmellience Partnersの2社。Emellience PartnersはBIPROGYグループ(旧日本ユニシス)のコーポレートベンチャーキャピタル。同社の累計調達額は18億円となった。前回ラウンドは2020年の6月で、ジャフコとDBJキャピタルから5億円を調達している。

同社の創業は2010年でオフィスへの訪問客管理「ACALL」を中心に、会議室の入退室などオフィスで働く人々のワークスペース・マネジメントサービスとして成長。その後、コロナ禍などの環境変化に応じた働き方の多様化を背景に、サービスコンセプトを業務情報を集めた情報基盤「WorkstyleOS」として発展させている。

クラウドサービスWorkstyleOSを導入した企業は、「会議室の予約・管理」や「エントランス無人化」「フリーアドレスでのチェックイン(ホテリング)」など、働く人たちの環境に応じたプロダクトを組み合わせて利用することができる。チーム単位での導入も可能で、利用料金は利用人数による月額課金。出資したBIPROGYグループなどと連携し、企業のオフィス環境デジタル化(DX)を進める。調達した資金はサービスの開発強化とシンガポールを中心とする東南アジア展開に投じる。

話題のポイント:ジェネシアベンチャーズさんがシード期から支援しているACALLは、神戸拠点という関西スタートアップの成長株です。同社代表取締役の長沼斉寿さんに今回の出資の背景などをお聞きしましたが、やはりアフターコロナを見据えた企業の動き、特に働く環境への対応をお話されていました。

コロナ禍で働き方が激変したのは言うまでもありませんが、実際、極端なリモートワークを経験するとそのメリットと課題も明確に見えてきました。制作や開発など主に手を動かして集中的に取り組むタスク仕事は外の環境から切り離されていて、かつ、自由に環境を整えやすいことから効率がよくなる傾向があるようです。一方、孤立やサボタージュなど、コミュニケーションについてはオンラインのみでは解決しがたい壁もありました。

長沼さんはこのオフィスとリモートのちょうどよいバランスを取ることができる「ハイブリッドワーク」こそが、企業における次の働き方になるとサービス開発を続けておられるのですが、では、具体的にこの「ハイブリッド」とは何を指すのか、その課題はどこにあるのか、企業は何に悩んでいるのか、そのあたりをインタビューでお聞きしています。ぜひ新しい働き方に興味ある方は、長沼さんのお話をお聞きください。

ポッドキャスト全文

BRIDGE編集部・ポッドキャストではテクノロジースタートアップや起業家に関する話題をお届けいたします。今回の取材では新しい働き方「ハイブリッドワーク」を推進するACALLの長沼さんにお話を伺ってきました。

コロナ禍で大きく変化した働き方ですが、企業はその対応に迫られるようになりました。単にハード面でオフィス環境を整えたり、リモートワークを導入すればよいというのではなく、社員のワークライフバランスを含めたソフト面にも頭を使う必要に迫られています。特にテック業界などの人材獲得競争が加熱している領域では、働き方が採用に与える影響も大きく、各社、独自の取り組みを整えている状況です。

ACALLはそのインフラをクラウドで提供するべく、WorkstyleOSというコンセプトを打ち出しました。オフィスにいてもワークフロムホームであっても、どこでも働ける環境づくりを目指し、今回、ジャフコなどから10億円の資金調達を成功させています。新しい働き方が話題になって数年、何が最適解なのか。長沼さんの声をお聞きください。

今回の調達の概要について教えてください

長沼:今回はジャフコさんとBIPROGYグループのEmellience Partnersという会社から出資していただき、シリーズBラウンドのファーストクローズをさせていただきました。両社でコ・リードという形で合計10億円になります。Emellience Partnersさんは、スマートシティの領域とワークイノベーションの領域、この二つの掛け算に事業注力にされています。

私たちが「WorkstyleOS」というプロダクトを提供しておりますけども、働き方をどう変えていけるか、それをOSレベルで変えていくという中でオフィスの中だけではなく「街全体」に入れてゆくゆく広がっていく、そういった働き方との接合点に対して大きな期待をしていただきまして、出資いただいた運びになります。

ACALLの最近の状況を教えてください

長沼:この社会情勢受けましてオフィスワークだけではなくてもリモートワークをどう組み合わせていくのかという、いわゆるハイブリッドワークの働き方を積極的に取り入れていかれようとする企業さんに導入いただけています。オフィスワークにおいては、これまでも提供させていただいていたサービスの中ではあるんですけど、必ずしも毎日出社するわけではないのでできるだけ省力化、省人化、自動管理みたいなところをオフィスに求めていくという動きがあります。また、リモートワーク に関してはオフィスとリモート含めて見える化、つまりワーカーの方々が困ってないかとか、そういった状況を踏まえた見える化を出発点としていますね。

どういった点が導入社の方に好評でしょうか

長沼:全てに共通している「チェックイン」という概念です。仕事の始まりでチェックインが出ます。今、働く場が多様化しているので、いろんな場所に簡単にチェックインができるという考え方がありまして、それをWorkstyleOSで実現できる体系を作ってるのですが、特にクローズアップいただいているのは、オフィスの中のフリーアドレス化をまずしましょうというところで、必ずしもその固定席いらないよね、っていう流れになってきています。

そこをフリーアドレス化するにあたって、数百人の企業さんがあれば一人一席なくなりますからそれをお互い融通しあったり、ウェブ会議用のブースがあるとか、 1人で集中したい時にも結構その場所を取り合いだよね、とか。それを防ぐためにお互い融通しあうところがOS内でできるので、その場所の共有や時間、何時から何時までで誰が使える、そういったところが評価いただいているかなと思います。

この数年間の間にどういうものがハイブリッドワークなのか見えてきたと思います。長沼さんたちの考えるハイブリッドワークとは

長沼:今、多くの企業さんはオフィス一択の働き方から、リモートワークを含めた働き方の多様化に大きく舵を取られておられます。ただ、そうは言っても「週に3回はオフィスで来てください」とか、一律的な働き方になっているのかな?と思っています。私たちとしては「Ture・ハイブリッドワーク」と言っているのですが、本当のハイブリッドワークとは、一律で週3回とか週4回とかでなく、より自由なチームであったり、組織でワーカーの働き方に応じて自由にデザインできるというものが、本当のハイブリッドワークなんじゃないかなと考えています。

企業にとってのハイブリッドワークのメリットは

長沼:働く方々のエンゲージメントの中に「働く場の体験」が非常に大きなウェイトを占めてくるんじゃないかなと思っています。一律オフィスに行きなさいとかって思ってしまうと、そこに納得感、合理性がない限り働くワーカーの方々のエンゲージメントどんどん下がっていくんじゃないかなという風になっているんですが、その時にどうKPIとして企業としても共有していくのかってところが求められている中で、それに明確な尺度がまだないところがあります。先行的に海外の研究者の方々とか、その他のソリューションも見出されていて、例えば主観的ではあるんですけども、オフィスに行くことによって自分自身のエネルギーがどれぐらいチャージされたのか、逆に減ったのか、そういったところをまだ十分に把握できてないと思っています。

そういった部分をワーカーさんに寄り添って、その特の感情の変化であったりとか、それによってどれぐらいコラボレーションの結びつきが増えたのか、また減ったのか。後はより対外的なコラボレーション含めてですけど、そういったところの尺度がいくつか出てきてます。この辺りをワーカーの方々と一緒に取り組んでいくということが会社に求められていると思っています。

企業はこの取り組みをどこから始めるべきなのか、また価格についても教えてください

長沼:まず会社としての方向性みたいなところは打ち出していく必要はあるかなと思っています。本当に一律にあり続けるのか、フレキシブルで行く方向感なのか、この辺りの中でオフィスとオフィス以外のシェアオフィスであったりとか、あとはサードプレースをどれくらい活用されていくのかってことは一つ方向性として共有頂けるところがまず出発点なのかなと。

その上で使われるワーカーの方々の数に応じて、いきなり全社導入っていうところもやり方としてはあるかもしれませんが、まずは一つの部署だったり、実験的にこのチームから始めていこうみたいなやり方で十分可能です。(料金については)ワーカーさんごとの課金させていただいております。で、もちろん使う機能によっては数百円からでもできるんですが、人数とあとは単価というところで課金させていただいているので、月額でも10万円とか、そういった金額から始めさせていただけるのかなと思いますね。

ありがとうございました。

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