B2CやECの顧客体験をパーソナライズ化、「ReviewBank」開発が1億円をシード調達

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Revie の皆さん
Image credit: Revie

顧客体験パーソナライゼーション SaaS「ReviewBank」を開発する Revie は28日、シードラウンドで1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドに参加したのは、ジェネシア・ベンチャーズと DNX Ventures。Revie では、B2C や EC 事業者に対し、特徴量エンジニアリングを活用した、顧客の深層ニーズの理解と、その結果に基づいたパーソナライゼーションの手段を提供する。

Revie は、Bain や Strategy& など米系戦略コンサルファーム出身のメンバーを中心に、2021年7月に設立された。チームは役員、社員、業務委託あわせ約10人いるが、うち、4人が Kaggle Master、1人が Kaggle Expert を保有するなど、データサイエンティストがメンバーの多くを占めている。

Amazon をはじめとする巨大 EC は、顧客に対してレコメンデーション機能を提供してきた。多くのサイトでよく実装されているのは、協調フィルタリングや内容ベースフィルタリングによるものだ。これらの手法はあくまで、多くのユーザが何を買ったかとか、商品同士の関連性に基づいてレコメンドしているので、ユーザが本当に何を欲しているかどうかの条件は反映させれていない。

ユーザが本当に何を欲しているのか、アクションの裏側にある深層心理を見抜いて、それに基づいた提案は可能なのだろうか。それを実現するのが「特徴量エンジニアリング」という技術だ。機械学習に生データをそのまま食わせるのではなく、生データから変数を抽出して変換し、トレーニングや予測に特徴を使用できるようにしたものだ。Revie はそのアルゴリズムを開発している。

「ReviewBank」
Image credit: Revie

具体的には、属性や行動データを機械学習モデルで読み解くことで、ユーザ一人一人の深層ニーズを特定。これによって、ユーザに対する B2C 事業者や EC サイト側からのアクションや提案を相手に応じて変化させられるようになる。例えば、あるユーザに対しては、同じ商品の価格の安さを強調したり、機能性を強調したり、あるいは、異なる商品を提案したり、といった具合だ。

こうした施策をとることで、欧米の B2C や EC 事業者では、コンバージョンレートが従来の数割増から2倍程度にまで増えるところが出てきているという。Revie では、JavaScript のコード1行を Web サイトに挿入するだけで、ユーザの深層ニーズ特定から Web サイトの表示出し分けまでを実現する仕組みを開発中だ。ユーザ毎に異なる文面が届くメールの出し分け配信なども検討する。

Revie がベンチマークしているのは、フィンランドの Nosto だ。2011年に創業したこのスタートアップは、これまでに概ね1,600万米ドルを調達、今年6月には、Shopify のヘッドレスコマース・スタック「Hydrogen」の推奨ソリューションに選ばれ、より裾野が広がることが期待される(ヘッドレスコマースとは、フロントエンドとバックエンドを切り分けることで、フロントエンド開発を柔軟にする仕組みのこと)。

ReviewBank はまだ開発中だが、特定された顧客毎の深層ニーズは、顧客体験の改善のみならず、商品開発やマーケティング戦略の検討などへの活用も期待される。従来の CDP(カスタマデータプラットフォーム)よりもリッチな情報を手に入れられる可能性を期待できる。この文脈では、クラウド電話 SaaS などを展開する Twilio が2020年、CDP ベンダーの Segment を32億米ドルで買収している。

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