#17 作る国から買う国へ変化した、中国市場の今 〜UNITY ZERO Kiki COO × ACV本間〜

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容の一部をテキストとして掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズ (ACV)がスタートアップと手を組み、これまでにないオープンイノベーションのヒントを探るポッドキャストでは旬のスタートアップをゲストにお招きし、カジュアルなトークから未来を一緒に発見する場を創っていきます。

日本人の中国に対する考え方は、何年も前から止まってしまっているかもしれません。世界の製造工場であることは今も変わらぬ事実ですが、同時に、貪欲で超巨大な消費市場でもあります。しかし、日本企業には政治や社会環境の違いから中国市場を敬遠する動きもあります。

そんな背景から、ローカライズしなくても売れる一部の製品やキャラクターを除いて、積極的に中国に最適化した製品を作り市場投入する日本企業は多くありませんでした。隣国という地の利を生かし、超巨大市場のもたらす恩恵を享受するにはどうすればいいでしょうか。

今回は長年にわたり、日本と中国を結ぶマーケティングやクリエイティブに携わり、UNITY ZERO の共同創業者でチーフクリエイティブオフィサーを務めておられる周卉卉(Kiki Zhou)さんに話を伺います。

聞き手はアクセンチュアのデザイン組織「Fjord Tokyo」でプログラムマネージャーを務める本間美夏さんです。(ポッドキャストの一部をテキストにしてお届けしています。)

ポッドキャストで語られたこと

  • 「中国でモノを作る」から「中国でモノを売る」への転換に気づくのが遅かった日本企業
  • 周さんが感じる、日系企業の中国市場に対する誤った認識

周:中国生まれで UNITY ZERO で CCO を務める周卉卉と申します。弊社はクロスボーダーのコミュニケーションカンパニーで、日本のブランドの中国やアジアへの展開、中国のブランドのアジアや日本への展開を、コミュニケーションの立場からサポートしている会社です。

私が日本と関わることになったのは、2003 年に留学することになり、その時の留学先に日本を選んだことがきっかけです。その頃、ファッションビジネスを勉強したいなと思っていて、日本の文化が結構好きだったので、文化服装学院という学校を選びました。

本間:日本から中国に進出している企業は少なくないですよね。彼らを見ていて、中国市場で事業を展開していく上で、どのような課題があると思われますか。

周:「中国でモノを作る」から「中国でモノを売る」への発想の転換を早い段階から感じていた方々は 2011〜12 年からいたと思います。しかし日本の大きい企業も小さい企業でも、大勢の方々は 2015〜16 年あたりから全員そう思っていたと思います。日本企業で私が社員だった時も、社長になった時もそうなのですが、(中国企業と)日本企業が一番違うのはネットワークです。

日本企業は情報感度が低いと思います。 2012 年より前に上海にきていた日本企業の駐在員の方々は企業の中で出世競争からは少し外れたような方が中国に来ていたし、2 つ目は中国に来ても大体皆さん3 年間勤めて日本に戻るからネットワークが日本人コミュニティなんですよ。でも、日本人コミュニティで見ている中国やそこで想像する中国と実際の中国は全然違う。

2008年以前の中国と2013年頃の中国では本当は変わっているのに、日本人コミュニティではリアルなトレンドの情報を掴めていないのが一番の課題だと思います。中国支社でもトレンドは掴めていません。現地で雇っている中国人スタッフの質にはばらつきがあるので仕方ありません。

日本企業の給料は、欧米企業や中国本土の企業に比べると安いという現状があります。、それに加えて日本企業は現地で採用をするときに日本文化に近い感覚を持つ人たちを雇っています。、狭い世界の人たちからでは優秀な人はあんまりゲットできません。意識が遅れることが一番課題だと思います。日本の経営者も、中国支社の日本人は意識が遅れていて、日本の本社で決裁される方はさらに中国のリアルを知らないことが課題だと思っています。

本間:日本から、中国の方に対してアプローチをしようとした時にどこから手をつけていいかも分からないし、何が違うのかが全く分からないと思うこともあります。日本から中国にモノを売るためのブランディング支援をしている企業は多くないのでしょうか?

周:私の知ってる限りでは少ないです。日本が中国で OEM したいときに、貿易上の日本と中国の間をサポートするサービスをやってる会社は多いですが、例えばブランディングとマーケティングとかコミュニケーションを行っている会社は少ないです。

もちろん、中国市場について、日本の広告代理店大手が頑張ってはいますが、さっき言ったように、日系企業が中国でやってる2つの間違いがあります。日本で権利を持ってる日本の駐在の方が日本のコミュニティばかりやってて、中国人スタッフに関しては、日本文化に近い中国人ばかり雇っている。すごく狭い世界で中国を判断しています。

中国人が経営している企業で日本の企業の中国展開のコミュニケーションやブランディングだったりリサーチとか深いところで中国のリアルを知る会社はあまりないと思います。

本間:周さんが思われる日本人が勘違いしている中国人の姿、何か思い付くことありますか?

周:まず 1つ目に、日本のマスコミですごく報道されている、「中国人が洗脳されて、中国を愛している」という考え方は間違いです。私の年代も含め、中国政府がすごく良い生活をもたらしてくれているから、心から中国を支えているというのが正しい答えで、年代が下がれば下がるほど中国を誇りに思っています。

2 つ目に、中国の今の人たちはフラットに世界のことが分かっているので、情報が物凄く早い。例えば昨日夜に日本で地震がありました、じゃあ福島がどうなってるとか、何人の方が亡くなっているとか、日本のニュースの 1 分遅れぐらいで中国のトレンドに入ります。洗脳されて外のこと知らないよというのはミステイクだと思います。

3 つ目に、日本の方からだと想像しにくいかもしれませんが、中国のマーケットは単一ではありません。14億人もいるし、土地がすごく広いから違うライフスタイルだというのもあるんですけど、アングルが違うので価値観も違います。

よく言うじゃないですか、中国には10% のお金持ちの人がいて、その数は約1.3 億人で日本の人口と同じですと。その人たちのライフスタイルは同じではなく複雑です。昨日もうちのスタッフとそういうような話になってて、例えば日本から見ると日本酒の売上が中国で上がっているけど、一般的な中国人にとっては日本酒はまだすごくニッチなジャンルなんですよ。

シャンパンのモエ(モエ・エ・シャンドン)が世界で売れてるじゃないすか。中国でもすごく売れてまして、私達の生活から見ると日常品と思ってても、99%の中国人はモエすら知らないという現象が起こるので、中国のマーケットは単一の数字の分析で同じ方向で同じトレンドと思っていることが違うと思います。とても複雑です。

本間:チャンスがありそうですよね。逆に情報ギャップがあるということは、それだけこれから何か売れるチャンスがあるということですもんね。

周:政治の状況がどうであれ、中国人には日本のカルチャーや日本のモノに対するそもそもの信頼感を持っていますよ。日本のカルチャーも好きだし、アニメなどのエンタメも中国人はすごく見ているし、日本の商品は安心感がありますよ。その安心感に対して 2 倍のお金払っても買いますよ。

次回へ続く)

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