京都に新たなスタートアップハブ出現ーー「京都芸術大学 Art&Bizファンド」設立したのはあの人たち

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ニュースサマリ:京都芸術大学を運営する学校法人の瓜生山学園は9月6日、テクノロジー・スタートアップに投資するファンドの設立を伝えている。設立したのは京都芸術大学アートアンドビジネス1号投資事業有限責任組合(通称は京都芸術大学 Art & Biz ファンド)で、無限責任組合員(GP・ジェネラルパートナー)は関連会社のクロステック・マネジメントが担当する。同社によると国内の芸術系大学で投資ファンドを設立した例は初。

GPとなるクロステックマネジメントは2016年に瓜生山学園と小山薫堂氏が率いるオレンジ・アンド・パートナーズ、awabarのオーナーで京都芸術大学にて教授を務める小笠原治氏が代表を務めるABBALabが共同出資して設立した会社。また2018年には電通も出資者として参画している。同社が今回のファンドを通じて出資するスタートアップへの支援を手掛けることになる。

ファンドは6月にファーストクローズを実施しており、集まっている金額は3億円。今後、ファンド規模は10億円程度までを見込む。投資のフェーズはシード前のプロトタイプ開発からアーリーステージまでが中心で、投資テーマはアートやデザイン・教育分野のデジタル化(DX)支援や、Web3、メタバースなどのテクノロジー先端分野、食や音楽・エンターテインメントなどのコンテンツ分野としている。

出資の方法は普通株や優先株、J-KISS、CB(コンパーティブルボンド・新株予約権付社債)などで、チケットサイズは数百万から1,000万。プロトタイプやシードに出資したのち、フォローオンで3,000万程度を想定している。ファーストクローズの資金については20〜25社程度に出資し、フォローオンで3、5社程度を想定しているということだった。

京都芸術大学アート・アントレプレナーシップ教育プログラムおよびクロステックデザインコースの講義風景

話題のポイント:京都に新しいスタートアップ・エコシステムの拠点ができました。中心になっている小笠原(おが)さんは実業家・エンジェルなどの顔を持ち、六本木・awabarを作ったことでもよく知られた人物です。DMM.make AKIBAのプロデュースやtsumug、Gateboxなどへの支援、福岡スタートアップエコシステムでの活動などなど、文庫本一冊ぐらい書けるぐらいには活躍されているので、本稿では一旦脇に置いておきます。

そんなおがさんがここ数年、立ち上げに尽力してきたのが京都エコシステムでした。彼の出身地でもある京都なんですが、テック・スタートアップとしてははてな以降、IPOした企業がありません。昨日に6億円を調達したGyazoで知られる検索型FAQ「Helpfeel」(旧社名はNota)などがありますが、やはり多くの人にとっては「京セラ」「任天堂」「堀場製作所」といったグローバル企業の方が馴染みあるかもしれません。ちなみにおがさんが長年エコシステムづくりに携わった福岡も似た環境でしたが、今年になってヌーラボが上場を果たしています。

前置きが長くなりました。

今回、組成したファンドそのものはそこまで大きな規模ではありません。一方、彼らがいることによって「東京」への情報アクセスがスムーズになります。実はこの情報アクセスこそがエコシステムのガソリンになる要素です。大学というフレッシュな人材を集める装置にこの情報アクセスの機能が追加されると、自然とスタートアップへの道が開けてきます。そういう意味でおがさんたちが作った今回のスキームはひとつの形になっていると感じました。

そのハブのような場所になるのが「awabar kyoto(アワバーキョウト)」の存在です(店長はtsumug代表の牧田恵里さん)。現在のawabarは東京・六本木を聖地に福岡、沖縄と拠点を広げているのですが、2010年代に六本木に集った起業家、投資家の顔ぶれはいつしか東証のリストに並ぶようになりました。個人的に思い出深いのが家入一真さんと鶴岡裕太さんのコンビです。大学生だった鶴岡さんは家入さんたちが立ち上げたスタートアッププログラム「liverty」に参加し、BASEを生み出しています。

201o年代を飾ったスタートアップの聖地、六本木 awabar前の路上にて(写真左から鶴岡さんと家入さん)

河原町御池という京都市の中心部にあるスタンドバーですが、これがあることによって生まれるのが「信頼できる人との出会い」です。この10年、私も現場で取材してきましたが、起業家にとって特に重要なのがシード期です。いい人に会うことはもちろんのことですが、それ以上に大切なのが「ややこしい人に会わない」方法です。

特に出資を伴うような関係において、資本政策というのは後戻りしにくいものです。一度入れた不安要素はその後、ずっとスタートアップの経営につきまといます。つまり時間のロスです。awabarのような場所があれば、気になる人物のリファレンスも取りやすくなります。エコシステムの情報アクセスはインターネットには転がっておらず、人に会わなければ取得できません。一方、その最初を誤るとそのままずっと道を外れたままになります。

なお、家入さんや鶴岡さんはおがさんが京都芸術大学で教鞭を取るクロステックデザインコースの客員教授としても参加しているので、京都のawabarで会えるかもしれません。

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