ソニーからカーブアウトしたMUSVI、臨場感と気配の再現に優れた「窓」で空間接続事業を開始

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左から:大野木健氏(MUSVI 取締役 CFO)、三木大輔氏(MUSVI 取締役 COO)、阪井祐介氏(MUSVI 代表取締役 Founder & CEO)、佐渡島隆平氏(セーフィー 代表取締役社長 CEO)、小林毅一氏(北海道地図 代表取締役社長)
Image credit: Masaru Ikeda

MUSVI(ムスビ)はソニーで約20年間にわたり商品設計や事業提案に関わってきた阪井祐介氏が、2022年1月に創業したカーブアウトスタートアップだ。2000年、時のソニー CEO だった出井伸之氏が開設した社内人材育成プログラム「Sony University」で、入社間もなかった阪井氏は「人と世界をつなぐ『窓』と空間事業戦略」という事業を提案。技術や社会が進化し、モメンタムを迎えた今年、この事業を具現化するために、ソニーを退社して仲間と共に MUSVI を設立した。

MUSVI の旗艦プロダクトである「窓」は、離れた複数の拠点間をつなぐテレプレゼンスシステムだが、リモートワークの浸透で利用頻度が格段に増えた数々のツールと大きく異なるのは、〝臨場感〟と〝気配〟を再現しようとしている点だ。話をする相手とは実は離れているのだけれども、まるで同じ空間にいるかのような感覚は、認知心理学に基づけば、科学的なアプローチで再現できる。MUSVI は、ソニーがこれまでに開発した関連技術をライセンス供与される形で窓を開発、さまざまなシーンに社会実装を試みる。

通信技術は軍事技術に端を発していて、上官が下官に間違いなく連絡を伝えられるよう発達してきた経緯がある。だから、既存のツールでは、誰かが話をしているときは勝手にそれ以外の人の音声入力をオフにしてしまったり、声以外の周囲ノイズを全部切ってしまったり、ということが起きる。窓では、ソニーが開発してきたステレオエコーキャンセル技術などを使って、自然な会話ができるようにした。(阪井氏)

常時つながった状態で利用することが期待される使用法だが、当方や先方が話せない状況にあるとき、右のデバイスのように、カーテン(ぼかし機能)を有効にすることができる。
Image credit: Masaru Ikeda

映像にも工夫が必要だ。例えば、バストアップの映像のみだと人は相手の臨場感を感じにくく、反対に足元を隠さず頭の先からつま先までを映し出せば臨場感を感じやすくなる。また、チームの研究によれば、世界中にあるドアの縦横比はその多くが21:9でできているとのことで、縦長比21:9のディスプレイで窓を作ると、人はそこに映し出された相手がすぐドアの先にいるように錯覚しやすいことがわかった。相手と視線が合うようカメラはディスプレイ中央に配置され、周辺視野を確保することで奥行き感も得られる。

今回の事業発表とあわせ、MUSVI はカーブアウト出身母体であるソニーグループ、クラウド監視カメラサービスのセーフィー(東証:4375)、ソニーグループ傘下の SRE ホールディングス(東証:2980)から資金調達したことを明らかにした。調達額は明らかにされていない。ちなみに、セーフィーは元々、ソニー木原研究所からカーブアウトしたモーションポートレートに在籍したメンバーが創業したスタートアップだ。セーフィーは今回、かつての自分達と同じ境遇にあるスタートアップを支援する形となる。

MUSVI のビジネスモデルは、窓の販売以外に、導入時のコンサルティング、サブスクリプションサービスなどで構成される。今回出資した SRE ホールディングス傘下の SRE AI Partners が先行する形で、日本各地の企業などと約50に及ぶプロジェクトを展開してきたが、今後は MUSVI 自らも「空間接続事業」として積極的な販売活動にコミットしていく計画だ。この分野の競合としては、Google 出身のメンバーらが設立した tonari が今年6月、プレシリーズ A ラウンドで約4.5億円を調達したのが記憶に新しい。

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