急成長を目指すSaaS向け資金調達「Arc」の仕組み/GB Tech Trend

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2000万ドルを調達した「Arc」(Image Credit:Arc)

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

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従来、SaaS企業は四半期や半年、年間契約を結びながら月額で利用料を支払ってもらうケースが大半でした。利用者(利用企業)にとってはキャッシュアウトを抑えられてコスト予測ができるため月額支払いは便利です。

他方、SaaS企業は契約金回収までの期間がかかります。特に初期スタートアップは開発コストがかさむため早く回収したいというニーズが生まれます。契約を獲得できて成長スピードを上げたいが、契約金が手元に来るまで時間がかかる、株式による調達だと時間と希薄化が進むのでキャッシュフローと成長のトレードオフは常に頭の痛い問題になります。

Y Combinatorの2022年プログラムに入っているデジタルバンク「Arc」は、こうしたSaaS企業向けの資金調達サービスを開始しました。今回、2,000万ドルのシリーズAラウンドの調達を発表したのですが、報じてるTechCrunchによると、前回ラウンドでは1,100万ドルのシード調達に加え、1.5億ドルのデッド調達を成功させているそうです。

ArcはSaaS企業の将来支払い能力を独自のアルゴリズムで計算し、48時間以内に資金を提供する金融サービス「Arc Advance」と、SaaS企業向けのキャッシュ運営口座サービス「Arc Treasury」を主力サービスにしています。銀行における融資サービスにあたるのがAdvance、口座にあたるのがTreasury、というイメージです。

Forbesによると、将来収益の20〜80%を前払いし、アルゴリズムによって評価された借り手のリスクに応じて、将来返済額の5〜12%分を差し引きます(一般的な融資での金利にあたるもの)。一定の手数料で一括融資を受けられるビジネスローンのような仕組みに「マーチャントキャッシュアドバンス」というものがあるのですが、これに類似しているとしていました。

こうした「非希釈性」の資金調達サービスには市場からの需要も徐々に高まりつつあり、スタートアップの参入市場として注目を集めています。なかでも以前ご紹介した「Pipe」は、ユニークな手法でこの領域の注目株になりました。

Pipeは、SaaS企業がARR(年間定常収益)をもとに借入を行うことができるサービスを提供しています。つまり、顧客のサブスクリプションの年間価値をすぐに自社資金とすることができる、というわけです。年間サブスク料金の建て替えは、SaaS企業に投資したい投資家とのマッチングを採用しています。

他にも「Clearco」や「Mercury」が類似の資金調達サービスを提供しています。いずれの場合も利用企業の将来支払い能力を事前予測するAIによってリスク管理いる場合が大半であり、あとはArcのように自社で資金をプールして提供するのか、Pipeのように投資家とのマッチングによるモデルで極力運営側のデフォルトリスクを減らすのか、どちらかのパターンになってくると思われます。

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