ドローンが山火事で消失した森林を再生「DroneSeed」の威力

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前回につづいて2社目はドローンを活用して森林火災再生を支援するDroneSeedをご紹介する。2015年に創業された同社はワシントン州シアトルに拠点を置き、現在までにシリーズAラウンドの資金調達を実施し、調達総額は約4,000万ドルとなっている。

森林火災の原因には人的なものと自然発火がある。日本で多い森林火災の原因は焚き火、火入れ、放火、たばこなど、人為的なものがほとんどで自然発火は稀だ。これに対して、世界各地では高温乾燥によって枯れ葉や枯れ草同士が擦れる摩擦熱、雷による自然発火による森林火災が実際に発生している。National Academy of Sciencesによると、カリフォルニア州で起きた森林火災の16%が自然発火だという。

人為的と自然発生を合わせた森林火災による被害は2022年のアメリカで約2832万km2(757万エーカー)にも及ぶ。1エーカーあたり200~500本の木があるため、15億~37億本の木が消失している計算だ。これだけの数を苗木で補填するにはコストがかかりすぎるだけでなく、苗木の在庫が足りないため現実的ではない。森林火災後の土地を再生するにはすぐにそのため種を植える必要がある。何も手を加えないと雑草が広大な面積を覆い、カーボンクレジットはもちろん、再利用が困難な状態に陥る可能性が高いのだ。(除草剤をヘリコプターから撒いてキープする手段もある

そこで同社はドローンを使って肥料や自然の害虫駆除剤などを入れた種子パッケージを焼かれた土地に自動で運搬し、種子の生存率が高い状態で植える作業を行う。そのために同社はLiDARとマルチスペクトルカメラで土地を調査し、地形と障害物の3Dモデルを作成し、ドローン群の飛行を計画する

調査の目的は砂利場、川などを特定し、よく育つマイクロサイトを見つけることだ。また、近赤外線((NIR)を使用して、地面が土、木材チップで覆われているかどうかを識別し、機械学習や空間定量的手法を用いて最適な植栽ルートを決定する。

再生の方向性としてポリカルチャー(多くの多様な種類の木)にしたい、木材を伐採できる森林にしたいなどの土地所有者の目的に合わせてこれら作業、植栽を複数のドローンで一気に作業する。

これら重量物を抱えた複数の自動運転ドローンの同時操作という部分も、他のドローン運送に挑戦する企業を差し置いて連邦航空局(FFA)にアメリカで初めて承認された同社の強みの技術なのだそうだ。現在、4機のドローンが同時に運用されており、それぞれの重量は最大115ポンドで最大57 ポンドのペイロード(種子、除草剤、肥料、水)を運ぶことができるという。

ビジネスモデルとしては1エーカーごとに料金を支払うサービスとなっている。最初の植林プロジェクトはオレゴン州メドフォード2018年10月に行われ、約28k㎡の焼失した土地で植林が行われた。自然発火は未然に防げるものではない。日本では大規模な森林火災が少ないだけに実感が湧かない人も多いかもしれないが、同社が与えるインパクトは意外と大きいと言えるだろう。

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