OpenAIにDeepMind、Stability AIの創業者たちがAIを語るーーNVIDIAオンラインイベント、ジェネレーティブ(生成)AIだけでも70セッションに

SHARE:
Image credit:NVIDA

14回目を迎えるNvidia GTCのオンラインイベントでは、ジェネレーティブ(生成)AIに関するセッションだけでも70件、全体では650件以上のセッションが行われる予定だ。オンラインイベントは3月20日から3月23日まで開催され、筆者(訳註:Dean Takahashi氏・VentureBeat/GamesBeatのリードライター)がモデレートする産業用メタバースに関するセッションは太平洋時間22日の朝に放送される。

Nvidiaのマーケティング担当副社長であるGreg Estes氏は、Nvidiaのテクノロジーエコシステムに関するイベントの内容の多くは、ジェネレーティブAI、メタバース、大規模言語モデル、ロボティクス、クラウドコンピューティングなどに関するトークが中心になるとインタビューに答えている。

AWS、Dell Technologies、Deloitte、Epic Games、Ford、GM、Google、HPE、Jaguar Land Rover、Lenovo、Lockheed Martin、Microsoft、Oracle Cloud、Pixar、 Samsung、Shell、 Target、TSMC、米国宇宙軍、VMwareなど数百の組織からリーダーたちが発表する予定となっている。

「少なくとも25万人が登録する予定なので、GTCが一般に与える影響について、私たちは非常に良い手応えを感じています。実際にはそれよりもかなり多いかもしれません。参加者数も指標のひとつですが、スピーカー陣についても、OpenAIの共同設立者であるIlya Sutskever氏がJensen氏とAIの未来について語るものなど、その質もすばらしいものになっていると自負しています」(Estes氏)。

創設者兼CEOのJensen Huang氏の基調講演は3月21日(火)太平洋時間午前8時からライブストリーミングで配信される。

注目のセッション

NVIDAのCEOのJensen Huang氏

おそらく最も興味深いセッションは、AIでセンセーションな反響を生み出した「ChatGPT」の生みの親であるOpenAIに焦点を当てたものになるだろう。OpenAIの共同設立者兼チーフサイエンティストであるIlya Sutskever氏はHuang氏と一緒に、AIの現状と将来のビジョンについて熱弁を振るうことになっている。

DeepMindのCEO兼創設者であるDemis Hassabis氏は、AIを活用して科学的発見を加速させるDeepMindの取り組みについて説明する。また、Stability AIの創設者兼CEOであるEmad Mostaque氏は、Stable Diffusionと、それがどのようにしてジェネレーティブAIツールの爆発的な普及を可能にしたかを説明する。

Adobeの最高製品責任者であるScott Belsky氏は、NVIDIAの応用研究担当副社長であるBryan Catanzaro氏との対談に参加し、ジェネレーティブAIがいかに創造的プロセスを変革しているかについて説明することになっている。機械学習研究のシニア・ディレクターであるAnima Anandkumar氏は、NvidiaとShellの同僚とともに、地球シミュレーションとモデリングが気候変動の緩和戦略の開発にどのように役立つかを議論する。

Nvidiaのチーフサイエンティスト兼研究担当SVPであるBill Dally氏が、Nvidia Researchの最近のハイライトを紹介。Nvidiaの自動車チームと研究チームのメンバーが、ジェネレーティブAIがAV開発にどのような革命をもたらすかについて説明する予定だ。

「NvidiaはAIファクトリーとなりました。顧客は我々をファウンドリーとして利用し、そこで彼らはモデルを訓練し、独自のワークフローを作成し、何でもすることができるのです。彼らが望むならゼロから始めてもいいですし、完成したソリューションを持ち込んでその調整をサポートすることもできる、というわけです」(Estes氏)。

NvidiaのBryan Catanzaro氏は、幅広いオーディエンスのために、ジェネレーティブAIを解明しようとしている。

AIアーティストのパイオニアであるRefik Anadol氏は、ニューヨーク近代美術館のキュレーターやNvidia副社長のRichard Kerris氏とともに、AIが芸術に与える影響について説明する。専門家パネルでは、AIとシミュレーションがどのようにロボット工学を進歩させるかという解説もある。

Amgen、Autodesk、AWS、Evozyne、GM、Icahn School of Medicine at Mount Sinai、London College of Fashion、Microsoft Research、SK Telecomによる、コンテンツ制作からグラフィック、創薬までジェネレーティブAIがいかに応用できるかの複数のセッションも用意されている。

メタバースとオムニバース

Nvidia の Omniverse が RTX ラップトップに登場する

筆者のセッションは、産業用メタバースの現状報告で、シーメンス、BMW、ベントレー・システムズ、Nvidiaのリーダーを招き、メタバースの産業応用について議論する。しかし、メタバースに関するセッションは70も存在しない。これは、ジェネレーティブAIがメタバースを凌駕してしまった、ということを表しているのだろうか。

「それはとても興味深い質問ですね。企業が消費者と交流するためにこのような3D世界を作るというアイデアのクレイジーな部分は、セカンドライフを思い出しますよね」(Estes氏)。

確かにクレイジーな部分はある。しかし、Nvidiaはメタバースに対する産業や企業の関心に注目しており、企業のエコシステムがNvidiaのOmniverseコラボレーションツールを活用している。Omniverseはデジタルツインを構築し、製品設計やロボットシミュレーション、工場の建設計画などを行っている企業の基盤のようなものになっているという。これは、メタバースの収益を生み出す部分だとEstes氏は主張する。

「私たちはある意味、産業向けのメタバースのようなものです。ファッションとしてのメタバースの流行に乗ろうとはしていません。私たちはビジネスにフォーカスしているのです。GTCでは、さまざまな業界の有名企業がワークフローをベースに、実際のビジネスでOmniverseを使っている例をたくさん見ることができます」(Estes氏)。

OmniverseでNvidiaは、AutodeskやAdobeなどと競合するのではなく、3Dアセットの共有に使われるUniversal Scene Descriptionなどの規格を中心に、各社のツールを接続するというよりオープンなアプローチを取っている。Nvidiaは基盤となるハードウェアとソフトウェア・インフラの一部も提供している。「私たちはすべての真ん中に座っているんです」とEstes氏は語る。

スタートアップ・ベンチャー

メタバースのアートを自動生成できるのか、Image credit: Nvidia Research

1万3,000人以上のメンバーを持つスタートアップ・プログラム「Nvidia Inception」では、スタートアップのビジネス成長と業界知識の収集をサポートを目的としたトラックを開催する予定だ。また、400社のVCが加盟するNvidia Venture Capital Allianceプログラムでは、投資家向けのセッションが開催される。Nvidiaの開発者プログラムには、全体で400万人以上の開発者が参加する。「これらは非常に速い速度で成長し続けています」とEstes氏は言う。

セッションには、ジェネレーティブAIスタートアップに不可欠な技術に関する講演も含まれる。AIスタートアップは、Nvidiaの技術でジェネレーティブAIを加速するためのNvidiaソフトウェア開発キット(SDK)を使用することによるパフォーマンス、コスト、スケーラビリティの利点について学ぶことができるようになっている。

ベンチャーキャピタルをテーマにしたセッションでは、NvidiaのエキスパートがジェネレーティブAIの最新のブレークスルーを取り上げ、VCのパネルでAIが生み出す新しいアプローチを活用するスタートアップについて議論する。さらにスタートアップの創業者たちが新しいジェネレーティブAIソリューションを開発し、ダイナミックな市場をどのようにナビゲートしているのかについて解説する。

ダイバーシティ&インクルージョン

Nvidia Omniverse アバター クラウド エンジン

Estes氏はGTCは全世界で利用できるオープンなイベントだと述べる。特にこれまでAIという、日の当たらなかった場所で活動してきた開発者や研究者、科学者、教育者、専門家や学生は、参加することをお勧めする。AI労働力の準備態勢を強化し、より包括的なAIエコシステムを構築するNvidiaの取り組みの一環として、GTCではトレーニングやセッションが開催される。

AI専門家のパネルが、世界を変えるための課題や重要な学習など、彼らのキャリアジャーニーについて語る予定だ。Nvidiaの研究者はプロとしての経験や、AI研究を加速させるための学生向けのヒントを共有する。

さらに、Nvidiaは、HBCU、HSI、コミュニティカレッジなどのマイノリティ支援機関に対し、GTCで行われるNvidia Deep Learning Instituteワークショップを提供する。

「私たちは、AIだけでなく、スーパーコンピューティングやグラフィックスなど、あらゆる分野で絶対的なトップレベルの優秀な人材を招き入れ続けています。GTCはスタートした当初から、大きく発展してきたと思います。GTCは、学術研究者と企業、すべてのエコシステムを結びつける唯一のカンファレンス、あるいは数少ない場所として、世界でもユニークな場所を作ろうとしてきました。研究から始まったものが、今ではMasterCard、Pepsi、Netflix、General Motors、Target、Sonyといった大企業も参加するまでになりました」(Estes氏)。

適切なタイミング

仮想ラーメン店を紹介する Nvidia Omniverse Foundational Tech Montage の画像

Estes氏は、大企業がGTCを利用して新しいイノベーションについて語ることを誇りに思うと語った。ChatGPTが世界を驚かせた一方、Nvidiaのセッション・プログラムはすでにジェネレーティブAIを強く意識したものになっていた。

「世界全体が変わったのは数カ月前です。ChatGPTとジェネレーティブAIがもしなければ、そしてこのNvidiaのカンファレンスがなければ、バーベキューの席で自分たちがどのような仕事をしているのか、隣の人に説明するのに苦労したほどです。それぐらい人々の想像力をかき立てた分野が数多くあるのです」(Estes氏)。

Nvidiaは、ChatGPTのような新技術を活用するために人々が使うプラットフォームを持つ企業として、自らを位置づけている。

GTCを最大の技術カンファレンスにするのではなく、コミュニティの役に立つことが目標だとEstes氏は説明する。

「開発者や研究者にとって、本当にインパクトのある有益なカンファレンスになるよう、チームが全力で取り組んでいることをとても誇りに思います。今回は過去最高の人数になると思います。しかし、それは規模が大きいというだけです。それ以上にインパクトのあるものにしたいのです」。

ある時点で、イベントは物理的なものに戻るとEstes氏は考えているが、それがいつになるかはまだわからないという。

「GTCは業界が一堂に会し、情報を交換し、人々が何をしているかを知り、新製品や新技術を発表するのに最適な時期、最適な場所になると考えています」。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録