Unity、2023年のデータ分析からゲーム開発者についての意外な結果を導き出す【Unity Gaming Report 2023】

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Unity’s 2023 gaming report Image Credit:Unity

ゲーム開発者の労働時間が短くなっている。経済的な逆風が吹いても、開発のスピードは落ちていない。スタジオは、より多くのモバイル専用ゲームを始めているーー。これらは来週のGame Developers Conferenceに先立ち発表された、ゲームとゲーム開発の現状を毎年調査するUnity Technologiesの2023ゲームレポートから得られた結果の一部だ。

23万人以上のUnityクリエイターからのフィードバックと、その約2倍に及ぶ広告データを収集したこのレポートには、現場の専門家がこの先の1年を形成すると考えるトレンドに関する考察が含まれている。

Unity CreateのシニアバイスプレジデントであるMarc Whitten氏は、GamesBeatの取材でこの結果について語った。同氏は、2022年は経済的な逆風が移り変わる一方、ゲームにおける創造性と革新性が注目されたと述べる。

「私たちは常に、ゲームはかなり永続的なものであり、成長し続けていると考えています。昨年は明らかに逆風が吹きましたが、開発者、特に小規模な開発者は、1年も経たない内にゲームを作っています。彼らはより多くのゲームをリリースしています。そして、そのゲームはより長持ちしているのです。また、ゲームをより長く楽しんでもらうために、さまざまな工夫をしています。これは、彼らがいかに回復力があるかということを示すものだと思います」。

データは、モバイル、PC、コンソールゲームにまたがるソリューションを通じて、リアルタイム開発プラットフォームUnityとUnity Gaming Servicesから集められたものだ。ゲーム業界の多くの部分について示唆に富んだ内容を示している。

Whitten氏は、ゲーム開発者は回復力と強さを見せたと述べている。開発者は効率化、最適化、発売後の取り組みに注力した。

「私はいくつかの開発者が小さなプラットフォームをターゲットにしていることに驚きました。Unityがより多くのプラットフォームにゲームを提供することに特化しているにもかかわらず、このようなことが起こっているのです。複数のプラットフォームに対応するには、複雑なアップデートやライブオペレーションなどの欠点があります」(Whitten氏)。

ほとんどの小規模スタジオは12カ月以内にゲームをリリースし、少ない労働時間でそれを達成している。また、規模の異なるスタジオはプラットフォームへの投資に関しても戦略的であった。

大規模スタジオでは、マルチプラットフォームやクロスプラットフォームの開発が前年比で増加したが、小規模スタジオの大部分(90%)は単一プラットフォームでの開発を選択している。しかし、すべての規模のスタジオで一貫しているのは発売後のサポートを優先することだった。開発者は既存のプレイヤーにより長く楽しんでもらうために、ゲームの寿命を33%延長させていたのだ。

今後、Unity Gaming Report 2023では、クリエイターの生産性を高め、ゲーム制作に必要な時間とリソースを削減するために、ジェネレーティブAIが開発プロセスにさらに関与するようになると予測している。

「厳しいマクロ経済環境の中で、素晴らしいゲームを作り続けている開発者コミュニティの情熱、創意工夫、そして粘り強さを目の当たりにして、感動を覚えます。Unityはゲームの制作からプレイヤーのスケール感、ビジネスの成長まで、あらゆる段階で彼らを支援するクラス最高のプラットフォームを提供することに尽力します」(Whitten氏)。

インディーズはゲームをより迅速に出荷し、より少ない労働時間で行う

Whitten氏によると、複数年にわたり開発者の労働時間が短くなる傾向が見られたという。彼はそのことに驚いたが、その結果を別の視点で確認する方法は存在しない。開発者は、時間を節約できるツールに常に関心を寄せており、より賢くなっているのかもしれないと彼は述べる。

モバイルゲームを増やす?

開発者がモバイル専用ゲームを増やしているという意見を見て私は驚いた。Appleがターゲット広告よりもプライバシーを重視することで、ユーザー獲得がより難しくなっているため、逆流を泳いでいるように思えたからだ。

「確かに、そこにはいくつかのニュアンスがあります。しかし、モバイルは引き続き非常に好調です。昨年はプレーヤーが増え、全体としてモバイルでのプレイは増加しており、パンデミック後に予想されたこととは異なっていたと思います。しかし、同時に課金者の数は少し減少しています。それが必ずしもIDFA(Appleが広告主向け識別子を廃止する動き)のせいなのかどうかは分かりませんが、人々が家に閉じこもっていないことも原因かもしれません」(Whitten氏)。

Whitten氏はリリースされるゲームが増え、マルチプレイヤーゲームも増えていると考えている。「モバイルゲームを始める人が増えているのは確かです。ゲームをより早く完成させるようになっています。人々がいろいろ試しているのかもしれません」と付け加えた。

事前に作成されたアセット

既製のアセットが人気を集めている

スタジオも、アイデアを素早くテストするために既成のアセットを使っている。OpenAIのジェネレーティブAIプラットフォームであるChatGPTが、AIを使ったアセット作りに刺激を与えていることは周知だ。しかしWhitten氏はこの調査はChatGPTが軌道に乗る前に行われたものだと言う。

彼はレポート結果以外では、ここ数週間で、AIジェネレーティブツールによるクリエイティビティの異常な爆発を目の当たりにしており、それは今後も増えるだろうと語った。

「これは私たちがかなり興奮していることのひとつです。一時的なトレンドというよりも、結果は来年のレポートで読むことになるでしょう」(Whitten氏)。

レポートの結果については、小規模な開発者がUnity Asset Storeに入り、プレイ可能な状態でゲームループを生成するためにアセットを素早く取得しているようなものだという。開発者は、SpeedTreeのようなツールを使って、たくさんの木を自動的に作っている。

「このような機能は何人かの人々と一緒にテストすることができます。そうすれば、このアイデアが実際に有効かどうかを知ることができます。それらのパッケージを使用する人が増えているのです」(Whitten氏)。

主な調査結果

Spatial のアゴラ アート ギャラリー

数百人にインタビューを行うにあたり、Unityはスタジオの規模や場所、プラットフォーム、その他の重要な要素についてもまとめている。Unity Gaming Report 2023の主な調査結果は以下の通りだ。

  • 小規模なスタジオではゲームのリリースが早く、労働時間が短いため効率が重要。インディーズの62%が1年以内にゲームを公開し、小規模なスタジオ全般の労働時間は平均で1.2%少ない(総労働時間の5年分に相当)。
  • 投資を最適化するため、規模の異なるスタジオは開発するプラットフォームの数を戦略的に決めている。小規模スタジオの90%近くが単一プラットフォームでリリースしている一方、大規模スタジオは2022年に制作するマルチプラットフォームのゲーム数を2021年と比較して16%増加させている。また、大規模スタジオの88%はクロスプラットフォームに投資している。
  • 開発者は既存ゲームの寿命延長とプレイヤーの囲い込みに力を入れている。モバイルゲームの寿命は昨年比で33%増加した。50人以上のスタジオの約84%が、6カ月以上ゲームを更新している。

レポートでは、メタバースやブロックチェーンといったトレンドにはあまり触れなかった。しかしWhitten氏は、ブロックチェーンは多くの実験が行われていると述べている。UnityはGDCにおいてGaming Report 2023に掲載された開発者によるクリエイター・ラウンドテーブルを開催し、エンドツーエンドのゲーム開発、マネタイズ、ライブ運営の現状と将来について、業界のリーダーが業界動向について議論する予定になっている。

「特に年々変化しているものを見るのは、いつも興味深いものです。DevOpsはクラウドで構築する機能やチーム間でコラボレーションする機能などを使う人々にとって、より重要なものになってきています」(Whitten氏)。

小規模な開発者は、ゲームをより早く出荷するために、ひとつのプラットフォームに集中することがある。一方、大規模なスタジオでは、投資を有効に活用するためにマルチプラットフォーム化を進めている。Whitten氏によると、Unityは「ポスト・パンデミック」の最初の1年間から抜け出した開発者と調査データについて話し合うことで、より多くの考察を得ることもできるという。

Whitten氏は、創造性のないアイデアを捨てる前に、AIがサポートしてくれることになるため、ユーザー生成のコンテンツとジェネレーティブAIのコンボは、今後大きなトレンドになると予想する。最後に同氏は「多くのクリエイターがここに参加することで世界はより良くなるでしょう」と語った。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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