「ウォーレスとグルミット」がAR作品として復活する理由

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Image Credit:The Big Fix Up

ピックアップ:Wallace And Gromit To Get Story-Driven AR Experience

ニュースサマリ:Aardmann Animations、W&G Ltd、Fictioneers Ltdは5月26日、ウォーレスとグルミットの最新作「The Big Fix Up」を2020年秋にAR体験として発表することを明かした。ストーリードリブンな初めてのAR作品となるとしている。

ARは6月1日公開のUnity新たな拡張機能「MARS」で開発され、サウスウェールズ大学からの研究サポート、UK Research&Innovationからの資金提供を受ける共同プロジェクトだ。

話題のポイント:ビッグタイトルがAR作品となって登場します。日本でも萩本欽一氏がウォーレスの吹き替えを担当していることもあって馴染みが深いウォーレスとグルミット。しかし2008年12月の「ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢」以降、10年以上新作は出ていません。

それをあえて今、なぜAR作品として登場させるのでしょうか。

AR作品とした理由はインタラクティブなストーリー作品を生み出せる点が大きいでしょう。

観たことがある方なら分かると思うのですが、元々ウォレスだけが喋り、他のキャラクターは声を出さないのが特徴の同作品です。ウォレスとのコミュニケーションは行動で行われます。つまり、一登場人物として視聴者が参加をしてもウォレスがアクションを認識することができればストーリーとして違和感なく進行することが可能なのです。

上記の理由だけだとVR作品でも良さそうですが、テクスチャとの相性を考慮するとARの方がレバレッジがあるでしょう。油粘土で作られた人形をストップモーションで撮影している同作品は、人形の物語である印象が強い作品です。

人形が実生活に馴染みのある分、視聴者が作品の世界に没入するよりも、テレビで見ていたキャラクターが現実世界にやってきてくれる方が程よい不自然を味わえて新感覚です。要は作品設定のファンタジー性質の差なのですが、「千と千尋の神隠し」と「バグズ・ライフ」の世界には行ってみたいけど、「借りぐらしのアリエッティ」と「トイ・ストーリー」は現実世界で見た方が面白そうという感覚わかっていただけるでしょうか?

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Image Credit:Unity

そして新作を” 今 “登場させる理由は開発環境が安価になったことが大きな点として挙げられます。今回発表された新作は、Unityから拡張機能として6月1日から提供が開始されるAR専用クリエーションスタジオ「MARS」で撮影されることが明らかになっています。

これまでのARアプリは、ポケモンGOも含めて単純に現実世界にコンテンツをオーバーレイさせるものがほとんどでした。もちろんハードウェアの制限もありますが、拡張現実に端末の数だけある現実の物理原則を守らせることで、損益バランスが取れなかったことが主な理由です。実際、ゲーム開発においてもパーティクルや行動制限、距離関係などの空間パラメータをプログラムする工程は相当な時間を要するポイントです。

MARSではコーディングを必要とせず、様々な空間で機能する拡張現実をマルチプレーンに作成できるようになります。Unityは元々SDKを導入してカスタマイズして使うのが一般的です。これまで同様、仮想空間を作るように現実世界にリンクしたデジタル空間を作り上げ、キャラクターを動かすことで自然な動きを演出するMARSは、Unityがすでに所有するアセットストアと組み合わさることで更にコストを抑えながら自由度の高い開発が可能となるでしょう。

作品制作ノウハウを低コストで最新の表現方法に変換できるMARSは、10年ぶりの新作で採算の解像度が低い状態で挑戦するには最良の選択肢となり、制作決定を後押ししたと考えても不思議ではありません。

ウォーレスとグルミット同様に、知名度のあるIPを眠らせているケースは少なくありません。もし今作が成功すれば他IPの活路を見出し、今一度日の目を浴びる例を先導することとなるでしょう。AR好きとしても、幼少期を共に過ごした一ファンとしても今作の成功を心から願って止みません。

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