日本発のパブリックブロックチェーン上でメタバースを開発/COSMIZE ファウンダー 宋知勲(そう あきら)氏 #ms4su

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本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups Founders Hub」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

我々の関心は技術の変化にのみ向かいがちですが、実のところ、技術の変化だけではイノベーションは起きません。社会の変化を伴う必要があるからです。今回のシリーズでは、ビジネスや社会サービスを、新たなテクノロジーを取り入れることで革新させようとするスタートアップの事例を取り上げます。

今回紹介するCOSMIZEは、パブリックブロックチェーン「Astar Network」で開発が行われている、web3メタバースプロジェクトです。COSMIZEの特徴は、空間内に部屋を持ち、所有しているNFTを飾ったり、好きなアバターを作成したり、友達と交流したり、ブロックチェーン技術を活用したメタバース体験をグローバルに展開しているところといえるでしょう。

PolkadotエコシステムでナンバーワンのDappを目指す

COSMIZEの「Room NFT」があれば、メタバース上に誰でも自分の部屋を持つことができる。
Image credit: Cosmize

COSMIZEは、VR領域のスタートアップファウンダーとして約8年間事業を行うことでも知られる宋知勲(そう あきら)さんが2022年に始めたメタバースプロジェクトです。現在、約50人をチームに擁し、web3メタバースの開発を進めています。

宋さんがweb3メタバースを構想し、採用するチェーンの選定を考え始めていた頃、Astar Network 創業者の渡辺創太さんと出会い、彼の持つビジョンに共感し、COSMIZE をAstar Network 上で展開することを決定したのだそうです。

Astar Networkは、ブロックチェーン同士の相互運用性に特化したプロジェクト「Polkadot」で、世界で3番目に接続されたパラチェーンとして注目を浴びており、Polkadotエコシステムの中でも一目を置かれた存在となっています。最近では、ソニーネットワークコミュニケーションズのインキュベーションプログラムの運営など、日本の大企業との提携を発表しています。

そんな躍進を続けるAstar Networkの中で、COSMIZE は特にユーザ同士のコミュニケーションの場や、難解なイメージのあるweb3のクッションとしての役割を持っていると考えられます。一般的なDeFi(分散型金融)やインフラのプロトコルと異なり、COSMIZEではウォレットも必要なく、webブラウザから手軽に無料で体験できるからです。

COSMIZEは、(暗号資産の)ウォレットを繋ぐことで、自分自身のアバターを作成し、世界中の人々と交流することができるメタバースです。

web3に参入したいが何から行えばいいかわからないという企業には、出発点としてコンセプトをモチーフとした空間を作成しイベントを共同開催したり、NFT関連に興味がある企業には、NFTの発行や管理などweb3を体験するためのオンボーディングプラットフォームのような役割も果たしたりしています。(宋さん)

メタバースは、自ら開発を行うには時間も費用が大きくかかります。しかし、COSMIZEのメタバースを使えば、PoC(実証実験)の企画からサービス開始までおよそ1〜2ヶ月程度で済む上、イベントの開催、NFTの発行、NFT所有者のみの限定イベントなど、機能が豊富に用意されています。

「トヨタ web3 グローバルハッカソン」の様子(Astar Network 渡辺創太氏のTwitterから)
Image credit: Cosmize

こうしたCOSMIZEが持つ優位性を最大限に生かした集大成の一つが、今年2月に博報堂キースリーが主催、トヨタ自動車が協賛して開催されたweb3グローバルハッカソンです。このハッカソンでは、日本だけでなく海外のweb3エンジニアも参加しやすい環境を提供する意図から、COSMIZEのメタバース空間が会場に選ばれました。

仮想通貨やNFTを中心としたweb3領域と、エンタメ的要素が強いメタバースでは、そこに使われる技術も、関わっているプレーヤーやユーザのクラスタも異なります。Astar Networkにとっては、COSMIZEとの協業で、web3に縁遠い領域の企業や個人を取り込み、エンタメ的要素によって、web3に参入するユーザの心理的ハードルを下げる効果も期待できるわけです。

メタバースはweb3と実需を深く結びつける領域

COSMIZEがMicrosoft for Startupsに採択されたのは最近のことで、現在はマイクロソフトからクラウド環境の無償提供などの支援を受けています。より多くの企業に、それこそ、インターネット黎明期を経て、ほぼ全ての企業が自社の webサイトを持つようになったように、、いずれは全ての企業が自社のバーチャルスペースを持てるような世界を実現したいと宋さんは語ります。

そんなCOSMIZEのために、マイクロソフトがなぜMicrosoft for Startupsに採択したのか。どのように支援していこうと考えているのか。Microsoft for Startups カスタマープログラムマネージャー Yuhong Chen(陳宇鴻)さんに聞いてみました。

メタバース領域は、web3と実需と深く結びつける領域となります。特に日本企業にとっては国境を越えて、新たな顧客獲得のチャンスを狙い、店舗を介さず消費者の購買行動を喚起できる点で、ビジネスに欠かせないマーケティングチャネルの一つになることが期待されます。

メタバースは、一番のキャッシュポイントになりうる場所だと思います。経済的価値を生み出すのが一番大きいのがメタバースだということはもう見えてきているんです。ぜひ、多くの企業に、この機会を捉えて世界に出て行くことを考えてほしいと思っています。(陳さん)

Microsoft for Startups カスタマープログラムマネージャー Yuhong Chen(陳宇鴻)さん

マイクロソフトは今後、エンタープライズユーザの営業担当者なども巻き込む形で、COSMIZEのメタバースソリューションを企業に提案するのを支援していく模様です。企業がもう一つのプレゼンスをバーチャル空間に持つ流れは過去にもありましたが、単なる宣伝に終わらず実需に結びつくと言う点で、メリットを享受できる企業の幅も広がりそうです。

僕たちは、BtoCだけでなくBtoB領域の企業にも連携しますし、特に最近では、クリエイターさんたちと一緒にやっていきたいと考えています。そういう人たちにweb3をより身近に感じてもらい、彼らと一緒になって面白いコンテンツを作っていく。そして彼らの周りにいる人たちにもCOSMIZEを使ってもらうきっかけになってもらえたらいいな、と思っています。将来的には、誰もがクリエイターとして、COSMIZE上で自分らしいコンテンツを作れる世界を作っていければと考えています。(宋さん)

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