リアル空間起点のVRで、小売業・接客業の可能性を無限に拡張/ABAL 代表 尾小山良哉氏・エンジニア 鈴木祥太氏 #ms4su

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本稿は日本マイクロソフトが運営するスタートアップインキュベーションプログラム「Microsoft for Startups Founders Hub」による寄稿転載。同プログラムでは参加を希望するスタートアップを随時募集している

我々の関心は技術の変化にのみ向かいがちですが、実のところ、技術の変化だけではイノベーションは起きません。社会の変化を伴う必要があるからです。今回のシリーズでは、ビジネスや社会サービスを、新たなテクノロジーを取り入れることで革新させようとするスタートアップの事例を取り上げます。

ABALは、XR技術を用いて顧客に最適な仮想空間とコンテンツを提供するバーチャル空間デベロッパーです。登記上の創業は2016年ですが、社会情勢の変化や事業方向性の変化から、2年ほど前に資本構成や事業内容を再編しており、事実上は創業まもないスタートアップにステージは近い。2021年には事業連携を念頭に、イベント制作のTSP太陽から出資を受けました。

XRイベントプラットフォーム「Scape(スケープ)」
Image credit: ABAL

ABALが強みとロケーションベースXRは、既存のメタバースやVRと一線を画していて、実在するリアルの空間にバーチャルの空間を重ね合わせることにより、新たな価値を創造しようというものです。リアルと同期が可能な、イベントのためのバーチャル空間をクライアントに貸し出す、デジタル時代の商業不動産ビジネスのような側面も持っています。

リアルの空間、特に店舗などでは、空間面積の制約から陳列できるものに限界があります。しかし、ABALの特許技術に基づいたソリューションを使ってバーチャル空間にリンクさせれば、ユーザがヘッドマウントディスプレイを被って体験できるバーチャル上の店舗は格段に広がり、提供できる体験や商品のバリエーションも増えます。チケッティングやモバイルオーダーにも対応可能です。

ビジネスの拡張に合わせ、C#と相性のいいAzureを選択

ABAL 代表取締役 尾小山良哉氏

ABALでは、このバーチャル空間でのeコマースでの決済、IDの連携を含めた基盤、デバイスを跨いだクロスデバイス環境でのシームレスなアクセス提供などにマイクロソフトのAzureを使っています。堅牢なクラウド環境に支えられたABALのソリューションは、これまでに日本最大規模の10万人を超えるユーザに利用された実績があるそうです。

弊社はXRのシステムを構築しているため、Unityなどのゲームエンジンを活用することが多いんです。ビジネスの拡張に伴い、それらとサーバーを組み合わせたサービスを構築する上でC#を中心とした開発環境と相性がいいAzureを選択しました。

その上で、Azureには多岐にわたるサービスがあり、またそのアップデートも早い。それらをうまく使いこなしてベストな環境を構築するために、自社のリソースだけではカバーできないプロフェッショナルのサポートが必要だと考え、Microsoft for Startups への参加に応募しました。(ABAL 代表取締役 尾小山良哉氏)

ABAL ソフトウェアエンジニア 鈴木祥太氏

(マイクロソフトからのサポートは)Azure を使っている上で困った時に、サポートリクエストとして質問し、それに回答してもらっています。今まさにサービスをいろいろ開発している最中で、それらに適したサービスを提案いただき、社内で構築・開発を進めています。(ソフトウェアエンジニア 鈴木祥太氏)

ABALを担当する、Microsoft for Startups カスタマープログラムマネージャーの桜木力丸さんによれば、こうした技術面でのサポートは本来有償で提供されているものですが、Microsoft for Startups に採択されることで無償で提供できるものがあるそうです。また、一問一答だけでなく、より広範な知見を求められる局面でも支援を仰ぐことができるようです。

(技術面での無償サポートは)なるべく早く技術的な課題を解決するために、多くのスタートアップに活用していただいています。Microsoft for Startups のチームの中にもエンジニアがいるので、アーキテクチャーの刷新など包括的な知見が求められる際には連携しますし、必要に応じて、Azureを熟知したエンジニアに同席してもらい、ご提案することもあります。(桜木氏)

〝業界を革新する業界〟への支援で、世の中を変えていく

VRやXRを生業とするスタートアップは少なくありません。マイクロソフトは「HoloLens」というVRソリューションも出しているので、共に協業可能なVRスタートアップ候補も少なくないでしょう。その中から敢えてABALをMicrosoft for Startupsが採択されたのには、ABALがターゲットとしている業界に理由があります。

Microsoft for Startups カスタマープログラムマネージャー の桜木力丸さん

ただ、Azureだけあっても世の中は変わりません。Azureを実際に使って、ソリューションを開発していただけるパートナーがいるからこそ、初めてそこでイノベーションが起きる可能性があると思うんです。ABALは小売業・接客業などの業界に対して先進的な取り組みを行っているスタートアップで、そうした企業との協業は弊社にとっても必要不可欠です。

ABALさんは、Microsoft for Startupsに応募いただく前からAzureを使っていただいていましたし、技術的にも最新の取り組みをされていたので、我々のリソースを提供させていただくことで、今後、いろいろなコラボレーションが見込めるのではないかと考え、お声がけさせいただきました。(桜木氏)

世間では、ジェネレーティブAIの一つである「ChatGPT」がブームですが、マイクロソフトはかねてから、ChatGPTを開発するOpen AIに大規模な投資やコンピューティングリソースを提供してきたことが明らかになっています。サーチエンジン「Bing」との連携のほか、「Office」製品にもOpenAIが開発したGPT-4が搭載され「Copilot」としてリリースされる見込みです。

左から:ABAL 代表取締役 尾小山良哉氏、ソフトウェアエンジニア 鈴木祥太氏

桜木さんが話したAzureの話と同じく、ジェネレーティブAIは便利な技術ですが、それ単体で生み出せる価値は限定的です。マイクロソフトもOpenAIも、さまざまな業界に社会実装の活路を見出そうとしていて、ABALはロケーションVRのスタートアップながら、小売業・接客業を多く顧客に持つことから、ここでも新たなコラボレーションが生まれる可能性があります。

尾小山さんはそうした期待を次のように語ってくれました。

我々のサービスはXRにおける表現や環境構築が主体となっています。その環境を活用したマーケティングや、AIなどによる接客に非常に興味がある。それらは今後さらにクラウドサービスが提供する方向にあると思うので、それらのサービスと我々のサービスを組み合わせた新しいサービスを生み出していきたいと思っています。

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