KDDI、フライウィールを連結子会社化——はじまりはMUGENLABO、データエンジニアリングで共に事業を生み出す関係に

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左から:KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長 藤井彰人氏、フライウィール 代表取締役 CEO 横山直人氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

データ活用プラットフォーム「Conata」を開発・提供するフライウィールは今年3月、KDDIおよびKDDI Digital Divergence Holdingsとの資本業務提携を締結しました。これは、データ活用による企業のDX推進や安全な企業間データ連携の推進を意図したもので、フライウィールはKDDIの連結子会社となりました。

この提携を受けて、3社はそれぞれ、フライウィールのConataと、KDDIの保有するauビッグデータ、KDDI Digital Divergenceグループのクラウド・アジャイル開発などのデジタル技術を連携し、企業のビジネス活動をシミュレーションし、デジタルツインとして再現、その結果をリアルなビジネス活動に反映することを目指しています。

提携の背景について、KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長の藤井彰人さんと、フライウィール代表取締役CEOの横山直人さんに話を伺いました。

共創のきっかけは ∞LABO、そして、あの「緑黄色社会のプロジェクト」

KDDIが2021年に始めた、ユーザが自由に料金メニューを組むことができるスマホプラン「povo2.0」。これは、通信キャリアであるKDDIが、通信料金だけに頼らない収益チャネルを目指そうという果敢な挑戦でした。KDDIが抱えるスマートフォンユーザーに対し、今までに無かった付加価値サービスを作り出せないか。白羽の矢が立ったのが、∞LABOに参加していたフライウィールです。

このプロジェクトでは、KDDIとソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)がタッグを組み、KDDIとSMEが互いの固有データを横断分析することで、povoのターゲット層に響くアーティストを導出する、という試みを展開しました。これまで、「この商品を売るターゲット層はこういう人たちだから、こういうアーティストを起用しよう」としていた広告戦略の中に、完全なデータドリブンのアプローチを持ち込んだわけです。

ここでアーティスト導出のために、KDDIとSMEの固有データの横断分析に使われたのが、フライウィールの技術です。複数のさまざまなデータの横断分析を経て、SME所属アーティストである「緑黄色社会」のファンとpovoのユーザ層に親和性があるという仮説が導き出されました。そこで、povoの一つの特典であるデータ通信量がもらえる「ギガ活」を緑黄色社会のファンに配布、ファンクラブとpovoの認知向上と加入者増を双方が狙うという施策を展開しました。

プロジェクトの中である機能を提供するプレーヤーだったフライウィールが、どうして、資本提携、そして、KDDIにグループ入りするまでに至ったのでしょうか。

藤井:KDDIをはじめとする通信キャリアは、もともとネットワークを通じて企業の拠点や人をつなぐことを使命としてきましたが、スマートフォンの普及とともに人とサービスをつなぐ役割へと拡大してきました。そして今後のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けては、企業と人、サービスだけでなく、さらにネットワークを通じてデータとデータを有機的につなげていく存在へと進化しようとしています。

端的に言えば、この新たな価値提供で共創できるパートナーを探し求めていた中で目にとまったのがフライウィールです。フライウィールと組むことで、通信を核としながら、複数の業界を横断した企業間データ連携をサポートできると考えました。

横山:KDDIグループとの資本提携は、もちろんフライウィールにとっても大きなメリットがあります。企業間データ連携によって、個々の企業単位で不足しているデータを補い合うことが可能となるのです。

KDDIが保有している個人を特定しないスマートフォンユーザーの人流情報や位置情報、決済情報などのauビッグデータを、個人情報保護を大前提としつつConata上で利用することができ、より高精度な需要予測モデルに基づいたシミュレーションが可能となります。

データ活用、企業間データ連携のイメージ

形骸化しがちなDX、実りがあるものにするには

今回のKDDI、KDDI Digital Divergence Holdings、フライウィールの事業提携ですが、データ活用を専門にしているフライウィールの力を借りて、大企業であるKDDIグループがDXしようとしている、と見ることもできます。大企業とスタートアップの共創で大企業のDXを進める試みは、これまでにも、そして、これからも多数あるでしょう。

今回の事業提携を経て、横山さんと藤井さんは、どんな課題感を感じておられるでしょうか。

横山:データ分析して、PoCをして、そこでおしまいになってしまっていると多くの日本企業が悩んでいます。私たちは、データ分析の結果を日々の業務の仕組みに取り込んで、定着まで推進していますが、そこまで行けている会社はほとんど無いですね。

藤井:企業ではDXが一つのテーマになっていますが、経済産業省のレポートなどで定義されているところででは、DXはデータを活用しデジタル技術を使って新たな産業を生み出す、とか、自分たちの産業をデジタル化して新しいビジネスを生み出す、とかいうことなのですが、デジタルツールを入れているだけの会社もありますね。今はまだ、データをどう分析するfか以前に、どう活用するかに踏み込めてないのは課題ですね。

横山:ほとんどの会社は分析を単発で行い、現状、こういう売上状況だっていうのがわかると、そこで止まってしまっています。でも、私たちが日本に必要だと思っているのは、現状をデータで理解し、AIも活用して予測し、毎日の業務のパフォーマンスがより良くなり、売上が上がるとか、コストが下がって次へ拡大するところに繋げることだと思うんですよね。

KDDI Digital Divergence Holdings 代表取締役社長 藤井彰人氏

KDDIグループ入りで実現できること

スタートアップは独立した組織として事業を続けながら上場を目指す道もあるわけですが、今回、フライウィールはKDDIグループ入りという道を選びました。選択肢が広がる部分と狭まる分を天秤にかけた結果、グループ入りした方が、KDDIグループ、フライウィールの双方にメリットが大きい、という判断が背景にあったと推測できます。

単なる取引関係、資本提携だけでなく、フライウィールがグループ入りしたからこそ実現できることは、どのようなことでしょうか。

藤井:そうですね。まずデータはいろんなところにあるのですが、異業種のデータが組み合わさることで新しい価値が生まれます。例えば、小売の売上情報と、通信キャリアのもつ人流情報が重なったときに、どんな新しいビジネスが生まれるか。それが、イノベーションの源泉だと思っています。

ここ20年ぐらいで一番変わったことは、スマートフォンで決済しながら、動きながらいろんなことをするようになった、ということです。この部分で、通信キャリアが、データでコラボレーションするところが、一番新しい動きではないかと思います。安心安全が前提ではありますが、ビッグデータを活用して、イノベーションに繋げられるのではないかと。

スマートフォンで個人と個人が繋がっていく、アプリケーションでサービスと人が繋がっていくとなったときの法人ビジネスの未来は、会社と会社が繋がる、そして、おそらく、会社のデータとデータが繋がる、というところに辿り着くと思っています。

次の時代は、クラウド上に蓄積された、もしくは企業の中にあるデータとデータをうまく有機的にどう繋ぐか。そのときに、通信キャリアのもつデータを個人を特定できない形でうまく活用し、新たな共創ができれば、それが今後の通信キャリアのDXにおける一つの役割だと考え、それをフライウィールと一緒に実現していきたいと思っています。

フライウィール 代表取締役 CEO 横山直人氏

横山:お客さまの視点から言うと、例えば、流通業界のメーカーさんは、自分たちが持っているデータはあるけれど、お客さまとの直接接点が少ないためお客さまがどういう人たちなのか理解しきれていません。通信キャリアは、個人の特定がされない人流データ、位置情報データ決済データ、ポイントデータを持っています。通信キャリアと組めば、それらをビッグデータとして活用できる。

もちろん個人情報を守ることは前提した上で、自分たちのお客さんがどういう人たちなのかを、メーカーさんはとても知りたいわけです。我々の立場としては、通信キャリアと組んで、データを共有して、一緒にビジネスを共創していきたいということなんです。フライウィールは企業間のデータ連携をスピーディーに進められるプラットフォームを有しています。KDDIのビッグデータを提供し、3社がハッピーになるような座組が組めると思い、今回、提携を進めさせていただきました。

なるほど。3社間では、それぞれの強みを生かして、屋外広告の成果報酬型課金のような仕組みも開発中と聞いています。

また、新しいニュースが聞ける日を楽しみにしています。ありがとうございました。

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