M&Aクラウド、独立エージェントが仲介する「M&Aクラウドエージェント」を開始——全国で事業承継の加速目指す

SHARE:
M&A クラウドエージェントで活躍する M&A アドバイザーの皆さん(一部)
Image credit: M&A Cloud

オンライン M&A マッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」を運営する M&A クラウドは2日、独立エージェントが M&A を仲介できる仕組みとして、「M&A クラウドエージェント」をローンチした。売り手、買い手に M&A クラウドが エージェント(M&A アドバイザー)を紹介することで、潜在案件の掘り起こしや取引の成約増加に繋げる。エージェントにとっては、自分の時間で効率よく業務ができ、コア業務以外のバックオフィス機能などを M&A クラウドに委ねられるなどのメリットがある。

M&A クラウドは、事業承継の課題やスタートアップのイグジットを、M&A によって解決することを念頭に置いている。特に日本では、事業承継については喫緊の課題であり、経済産業省の資料によれば、2025年までに70歳を超える中小企業経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定とされる。M&A によって事業を新たなオーナーに引き継ぐ事業承継への期待は大きいが、仲介するエージェントは全国で2,000人程度と少なく、また、業態の特性上、エージェント一人当たりの成約数も年に1〜2件程度と少ない。

M&A クラウドの創業者で代表取締役の及川厚博氏によれば、M&A のエージェントの中には、大手 M&A 会社から独立して事業を始める人は多いが、「専業でうまくいっている人はほとんどいない」という。一件成約すれば、それなりの手数料収入が見込める業態であるものの、エージェント個人では、身近に売り手は居ても、再現性をもって買い手を見つけることが特に難しい。M&A クラウドは、売り手と買い手のデータベースの存在を強みとして、エージェントに対し、特に、買い手候補を積極的に紹介する体制を展開する考えだ。

Image credit: M&A Cloud

M&A のエージェントになるには特別な公的資格が必要なわけではないが、嗅覚であるとか、業務経験が役に立つ業界ではあるため、門外漢の人が始めることは少ない。M&A クラウドでは、大手 M&A 会社で優秀な成績を収めていたトップエージェントが独立した際に、M&A クラウドエージェントに登録してもらうことを考えているという。仲介手数料のうち、エージェント本人に還元されるインセンティブを業界大手と比べ高く設定しており、このことが、同社が多くの優良エージェント候補を集められることに寄与するとみられる。

M&A クラウドエージェントは、M&A クラウドにとっても都合がよい。スタートアップ相手の M&A 案件であれば、都市部に拠点があるか、場合によってはオンラインでも事業買収などに向けた話を進めることできるだろう。しかし、事業承継となると、対象となる事業者(売り手)は全国津々浦々に存在し、現場を見る必要が増す。全国に M&A クラウドが支店や連絡事務所を配置することは現実的でなく、むしろ、各地に独立エージェントがいてくれた方が効率的なわけだ。

さて、この仲介ビジネスを独立エージェントが運営するというスタートアップ的な手法、不動産仲介の TERASS などでも見かけた。スケールさせるにはエージェントをどこまで増やせるか、つまりは、買い手とエージェントの間の属人化しやすいやり取りを、どこまでシステムに落とすかにかかっている。ブックオフやハードオフで、どの店舗でどの店員でも買取対応が可能なのは、その背景に詳細な中古流通の価格データベースが存在しているからだ。この発想を参考にしたい。

スタートアップは、典型的には赤字を掘った後に指数関数的成長を目指すホッケースティック成長モデルなので、フェーズによっては事業の価格算定が難しい。その点、事業承継の場合は、長きにわたって経営が続いていることの産物として、過去数年〜数十年分の P/L(損益計算書)が存在することから、価格算定も定量的に実施できる可能性が高い。M&A クラウドでは、こうした仕組みやエージェントが効率的に仕事できる環境を提供するなどして、事業のスケールを図りたいとしている。

<関連記事>

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する