今年下半期、注目すべき15のテクノロジーとは——McKinsey Technology Trends Outlook 2023から

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Image credit: McKinsey

「McKinsey Technology Trends Outlook 2023」は毎年、McKinsey Technology Council が発表しており、7月に発表された今回はその3回目。科学者、起業家、研究者、ビジネスリーダーで構成される100人以上のグループによって構築されている。このレポートでは、15の主要なテクノロジーを定量的指標で評価し、企業が迅速に変化するテクノロジー動向を理解し、イノベーションに影響を与える重要な要素を特定し、早い段階で開発戦略を計画することで、チャンスをつかむことを期待している。

2022年、公開株・未公開株は共に急落し、テック業界は寒風が吹き荒れ、レイオフの波が訪れるなど、大きな変動がありた。スマートフォンによるデジタル革命の後、企業は新たな出口を見つけるために奮闘している。そして、2023年前半に登場したジェネレーティブ AI は、新たな技術パラダイムへの移行を牽引した。ジェネレーティブ AI は、さまざまな産業で新しいビジネスモデル、生産性向上、社会的進歩をもたらす可能性があるが、これもまた、持続可能な成長や世界的課題への対処に向けた技術進歩の一環だ。

2023年のレポートでは、「イノベーション」(特許数、研究論文数)において、「AI アプリケーション」が最も高く、次いで「先進コネクティビティ」、「バイオエンジニアリング」と続き、他の技術を大きく引き離している。なかでも「AI アプリケーション」は、2018~2022年のイノベーション指数で1位となった。

2023年の「注目度」(検索数、メディア露出度)ランキングは、「電化・再生可能エネルギー」が最も注目され、次いで「モバイルテクノロジー」、「Web3」となり、昨年と同じ順位となった。各国が二酸化炭素排出量ゼロを目指す中、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵、スマートグリッドが検索ワード、メディア露出ともに人気となっている。

2022年の Web3 は、メディアの報道が「熱い」ムードから「失望・惜しむ」ムードへと変化した。年初はメタバースの話題が Web3 の盛り上がりを牽引し、後半は Luna や SteadyShift の影響を受け、世界を震撼させた仮想通貨取引所 FTX の破綻で、Web3 に関するネガティブなニュースがメディアを賑わせ、仮想通貨業界は大混乱に陥ったためだ。

2023年に報告された「投資魅力指標(プライベートエクイティおよび公開市場における投資額)」の実績では、投資額が1,000億米ドルを超える技術分野が4つあった。「電化と再生可能エネルギー(2,880億米ドル)」「モバイルテクノロジー(1,940億米ドル)」「アドバンスドコネクティビティ(1,180億米ドル)」「AI アプリケーション(1,040億米ドル)」だ。

昨年は投資額が1,000億米ドルを超える技術分野は7つあったが、今年はそれより3つ減少したことになる。その主な理由は、2021年は金融緩和政策により資金が流出したためである。2021年、世界の株式市場とベンチャーキャピタル市場は最高値を更新した。2022年は、インフレ、利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻で株式市場が暴落し、リスクの高い投資から資本が引き揚げられた。

AI アプリケーション、アドバンスドコネクティビティ、クラウドやエッジコンピューティングへの投資は2022年には減少したが、これはこれらのテクノロジーが成熟しつつあることも一因である。一方で、「ゼロトラストとデジタルアイデンティティ」は、2022年の15テクノロジーの中で最も急速に成長している分野であり、その成長率は約50%に達している。

しかし、一部の技術分野では破壊的なブレークスルーがあり、さまざまな産業で広く利用され収益性が高まると、投資魅力も高まるだろう。例えば今年登場したジェネレーティブ AI などへの投資が期待されている。2023年上半期だけでも、ジェネレーティブ AI スタートアップは14社現れ、大型投資案件は11件に上った。

「McKinsey Technology Trends Outlook 2023」は、このページから無料でダウンロードできる。

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