B2C→B2Bピボットが吉、スイスのNezasaが470万米ドル調達——OTAや代理店がカスタマイズ旅行受付可能に

TripBuilder では、アクティビティの全体計画を含め、ルートやアトラクションを詳細なコンテンツと写真で推奨する。
Image credit: Nezasa

旅行代理店は、複数人で旅行するグループの食事、アトラクション、交通手段、宿泊施設の予約など大量の手配をこなすことができるが、FIT(Free Individual Traveler)のような自由度はない。一方で、FIT は自由度が高いものの、自分で旅程を計画し、交通手段や宿泊施設を予約しなければならない。

両者を共存させ、旅行代理店を利用した団体旅行を自由旅行のように豊かで柔軟なものにすることは可能なのだろうか。

スイスの SaaS スタートアップ Nezasa の製品「TripBuilder」は、主要航空会社や宿泊施設プロバイダの情報を統合し、幅広い旅程の選択肢や価格と空室状況を即座に提供することで、旅行代理店がカスタマイズした旅程を編成する手間を簡素化する。2023年8月、Nezasa は470万米ドルの投資を受けた。

Nezasa は API を使って、さまざまな旅行者向けウェブサイトに接続し、TripBuilder でサービス内容を閲覧できるようにしている。

API 経由で OTA と接続、旅行代理店がカスタマイズされたグループツアーを作成可能に

Manuel Hilty 氏

Nezasa の CEO Manuel Hilty 氏は、旅行を計画する際、旅行代理店は交通手段、宿泊施設、観光スポットまでの距離、レストランなどの情報を考える必要があり、そのプロセスには多くの Web サイトを閲覧し、最良の価格を得るためにサプライヤーと調整する必要があり、それには数日かかることもあると考察する。

Nezasa の コア機能「TripBuilder」は、旅行代理店やツアーオペレーターがプラットフォーム上でサービスを販売できるようにするだけでなく、旅行代理店が旅行計画を立てる時間とコストを節約できるようにする SaaS を提供している。

Nezasa は API を利用して主要な OTA と接続し、航空会社、宿泊施設、レンタカー会社などが提供するサービス内容や価格を TripBuilder 上に掲載している。旅行代理店は航空券や観光地のチケットを予約する際に、TripBuilder を経由するだけで必要なサービスと適切な価格を一度に見つけることができ、予約や支払のため複数の Web サイトを閲覧する必要がなくなる。

注文が完了すると、予約内容がすべて記載された確認書が1通届くだけなので、複数事業者からのメールに目を通す必要がない。さらに、TripBuilder は消費者から最終的な支払い金額を自動的に収集するため、旅行代理店は利益とコストを確認することができる。

API 経由でさまざまなサービスにリンクしているため、ユーザは TripBuilder 上でこれらのサービスを閲覧しオーダーできる。

このように、TripBuilder は旅行代理店が、学生の卒業旅行や企業のチームビルディングなど、少人数グループのカスタマイズされたニーズに合わせて、アトラクション、宿泊施設、アクティビティを割引価格で予約する支援ができる。

予約後に旅程を変更する必要が生じた場合でも、TripBuilder で旅程を変更するだけで、その後の旅行計画に影響を与えることなく、予約、既存の宿泊施設の推薦、料金計算をプラットフォームがサポートする。

B2C から B2B へビジネスモデルを転換

Hilty 氏ら2人の共同創業者によって2012年に設立された Nezasa は、当初 B2C ベースのオンライン旅行代理店としてスタートし、自社の TripBuilder を利用して旅程を計画し、より多様でカスタマイズされたソリューションを消費者に提供していた。現在注力しているB2B SaaS のビジネスモデルとは違うものだった

しかし、起業から3年後、Hilty 氏は、他のオンライン旅行会社が提供するサービスとの差別化を図るためには、消費者への旅行ソリューションの販売に注力するのではなく、旅行計画を立てるためのプログラムやソフトウェアを使用するチームのスキルをもっと活用すべきだと気づき、大胆な転換を決断し、2020年末に600万米ドルの出資を取り付けることに成功した。

この変革の成功は、決断の勇気によるものだけでなく、運、スムーズな資金調達プロセス、これまでの B2C で遭遇したペインや経験のおかげでもある(Hilty 氏)

Nezasa は2021年、越境旅行や大規模旅行を専門とする TUI Group と契約を結び、TUI Group のイベントチケットプラットフォーム「Musement」と連携することで、イベントチケットの優待価格獲得という優位性を強化した。このサービスを Trip Builder を通じて提供することで、旅行代理店は複数日ツアーパッケージの選択肢を増やすことができる。

AI 企業 TripYeahを 買収、今年470万米ドルを調達

企業との提携の面では、Nezasa は TUI  Groupと提携しただけでなく、旅行代理店や航空会社向けに AI によるルート最適化を提供する TripYeah を2022年に買収した。Nezasa はまた、ラテンアメリカでの事業拡大のためチリに事業拠点を設立し、Nezasa が開発したルート旅程最適化ツール「TripOptimizer」を TripBuilder に統合した。

TripOptimizer は、TripBuilder のフライト検索システムをより効率的にするもので、旅程を数秒で簡素化し、プランナーが設定した目的地、予算、停車駅に基づいて旅程を最適化することで、複数の検索による価格比較を不要にする。一度に複数の国を旅行したい場合は、複数のフライトストップ(寄港地)を計画し、TripBuilder のカスタマイズ機能を強化して最適な旅程を設定することができる。

Nezasa は現在3つのプランを提供している。1つは無料プランで、AI を使って旅行代理店に最適な旅程を検索・予約してもらうもの。2つ目は月額500米ドルからのプランで、旅行代理店はプランニングから予約、旅行の管理まで独自の旅程をカスタマイズできる。3つ目は、月額5,000米ドルからで、旅行会社に専用のプロビジョニングオプションとより高度なカスタマイズサービスを提供する。

Nezasa は今年、スイスのベンチャーキャピタル Alpana Ventures、Credit Suisse、UBS などから470万米ドルの資金を調達した。Nezasa の世界市場でのプレゼンスは今後、さらに高まるだろう。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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