本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」に掲載された記事からの転載
MUGENLABO Magazine編集部では定期的に開催している「スタートアップ×大手企業」のマッチングイベント「MUGENLABO Café」にやってきてくれたスタートアップをピックアップしてご紹介しています。今回は新たなコミュニケーションツールとして成長中の「プレーリーカード」提供、スタジオプレーリーさんです。
同社は9月27日、新たな資金調達の発表を実施しました。第三者割当増資と金融機関からの融資によるもので、調達した金額や割合、払込日などの詳細は非公開です。増資を引き受けたのはESG特化型ファンドを運営するインクルージョン・ジャパンとMIXIの2社。
同社共同代表の坂木茜音さんにお聞きしたところ、2020年創業からサービスを立ち上げた2023年2月までの間は主に自己資金で事業を進め、今回のシードラウンドで初めて外部資金を獲得したそうです。今回の資金で体制強化を進め、株主となったMIXIとは事業の面でも連携するということでした。
「出会いの文化」をどうアップデートする?
プレーリーカードは一枚もののNFCカードをスマホにかざすだけで、自身のプロフィールページが相手のスマホのウェブサイトに表示される、シンプルなプロフサービスです。自己紹介コンテンツにソーシャルメディアのアカウント、さらに自分のプロジェクトを表示できるページを簡単に作成することができるようになっています。
実際に使ってみて特に気が利いていると感じられるのが、プロジェクトコンテンツの表示です。例えば自身の持っているYouTubeチャンネルを表示させたい場合、URLをひとついれるだけでタイトルから説明文、アイキャッチとなるOGPまで自動的に入れ込んで表示させてくれます。
坂木さんのお話によると、初期にファンになってくれたのはスタートアップやクリエイターなど20代から30代の利用ユーザーの方々。YouTubeやTikTokなどを中心に利用の輪が広がり、サービス開始から約半年の現在、NFCカードの利用回数は10万回を超えたそうです。意外なところでは50代などもう少し高い年齢層でも利用されていて、アイスブレイクなどの雑談のきっかけに使われているというお話も。
「(年齢層が高い方の利用については)ちょっと読み取ってよっていう手軽さと、カードみてよというコミュニケーション体験がウケたみたいです。年代が上の方のほうが雑談への共感や、特に最近戻ってきているオフラインの仕事への親和性があるようですね」(坂木さん)。
ところで素朴な疑問として、長年「名刺」という文化に触れてきたビジネスパーソンであればあるほど「これは名刺の代わりになるのかな?」という、もやもやしたものが生まれてきたのではないでしょうか?名刺を「捨てて」プレーリーカードだけで事足りるのかな?と。
しかし、坂木さんとのお話であることに気がつきました。これは「名刺の代わり」ではなく、全く新しいコミュニケーション「プロセス」の方に魅力があるのだ、ということです。ヒントはソーシャルメディアにあります。
インスタのQR、メンドくない?
坂木さんによると、利用が進んでいる方々にZ世代や学生さんなど、そもそも「名刺を持っていない」「名刺という文化にあまり触れていない」層があるそうです。彼ら・彼女たちはプロフィールの交換にインスタなどのソーシャルを使います。アカウントを伝えて検索したり、ショップアカウントであれば、用意されているQRコードを読み込む、などです。
そこで坂木さんはある美容師さんの利用方法を教えてくれました。
「美容師さんが持ってるケースがあって、カットのお客さんにその場でプレーリーカードを読み取ってもらって『インスタを開いてください』とするそうなんです。インスタには色々なスタイルを掲載していて、それをみながらどんな髪型いいですか?と会話を進める」(坂木さん)。
名刺が便利なのは紙だからです。誰でも持てるし、渡されたほうも受け取れないことはありません。しかし情報量は限られていますし、この美容師さんのような使い方もQRコードを提示したりすればできるかもしれませんが、あまりスマートではありません。このちょっとした「面倒くささ」を解決しているのがプレーリーカードなのです。
新しい世代の人たちはわざわざ名刺を印刷しなくとも、自分の情報はインスタに載っているし、この美容師さんのようなコミュニケーション・ルーティーンを作ることも可能です。ある営業マンの方はプレーリーカードに日程調整ツールを入れておき、その場で商談の日程を獲得しているというお話もありました。
そうなのです。私たちはすでにURLひとつでより幅広いコミュニケーションを可能にしてくれるツールを数多く持っているのです。ただひとつ、そこにアクセスさせる「鍵」が面倒だったのです。プレーリーカードを楽しく、便利に使っている方々はおそらくそのことに気づき始めているのではないでしょうか。
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