Web3参入を後押し、Dapp開発のハードルを下げるインフラ「Bunzz」(2)【ACVポッドキャスト】

本稿はアクセンチュア・ベンチャーズが配信するポッドキャストからの転載。音声内容をテキストにまとめて掲載いたします

アクセンチュア・ベンチャーズではこれまでにWeb3・クリプトをテーマにしたポッドキャストを配信してきました。本稿ではそこで語られたエッセンスをまとめ、Web3・クリプトスタートアップの魅力に迫ります。今回はDapp開発を効率化する開発インフラ「Bunzz」を提供する圷健太さんをご紹介いたします。

Web3ストーリー

ポッドキャスト全編はこちらから

分散型アプリ Dapp(decentralized app)は、Web3を象徴する技術の一つです。Web3以前のテクノロジーをWeb2と呼ぶならば、Web2のアプリは多くの場合、データが集約されたサーバにアクセスし、そこから得られた情報をPCやモバイルでユーザに見せるというものです。一方のDappは、ブロックチェーン上に書き込まれたデータを参照します。

Dappを開発する上で最大の難関は、スマートコントラクトの開発です。特にこれまでWeb2でアプリを作ってきた開発者がWeb3アプリを作ろうとすると、スマートコントラクトの存在があるために難易度が高くなってしまいます。Bunzzはこのスマートコントラクト開発をセキュアで簡単にするインフラ基盤です。開発しているBunzzの圷健太さんに話を伺いました。

Web3参入の技術的障壁を極限まで下げる

Bunzz

企業や個人などがWeb3に参入する場合、大きく2つのことが障壁になると圷さんは言います。ひとつはWeb3カルチャーのナラティブな部分。もうひとつはブロックチェーン、トークンアセット、スマートコントラクトで構成される技術的な部分です。特に技術的な部分では、その難しさからスマートコントラクトが課題としては大きな位置を占めます。

「今、Bunzzでは50種類ぐらいのスマートコントラクトのモジュールを提供しています。利用頻度の高いコントラクトから順次提供していっていますが、今、一番使われているコントラクトでは、NFTマーケットプレイスの開発に必要なコントラクトのモジュールです。このモジュールは2つのスマートコントラクトから構成されています。

ひとつはNFTをミントするためのコントラクト、もう一つがそれを流通させるためのマーケットプレイスとしての機能のコントラクト。これらを組み合わせ、NFTマーケットプレイスのスマートコントラクトレイヤーができあがります。これらを簡単にGUIで操作するだけでブロックチェーン上にデプロイできます」(圷さん)

NFTマーケットプレイスの例で言えば、ベーシックな部分はBunzzを使って簡単に出来上がってしまうので、開発者は差別化要素、つまり、プロダクトのコアバリューの部分に力を集中できるようになります。スマートコントラクトのモジュール化のみならず、開発環境もBunzzが提供していますが、開発者はこれを意識する必要さえありません。

Bunzzのユーザは個人のWeb3開発者が多く、Web3におけるGitHub的な使われ方をされているケースが多いそうです。圷さんによれば、UI/UXにこだわったことで、まるで Amazon で買い物をするかのようにスマートコントラクトを選んでデプロイが可能で、ローンチから約2年で累計1.5万人以上が利用しているそうです。これはDapp開発インフラとしてアジア最大規模になります。

さらに便利になるBunzz、IDEとオートオーディットを実装へ

Bunzz Blogには豊富なチュートリアルコンテンツが公開されている
Bunzz Blogには豊富なチュートリアルコンテンツが公開されている

スマートコントラクトの記述とあわせ、Dappの開発者が気を遣う必要があるのがセキュリティ監査です。アプリに脆弱性があってハックされれば、例えば、そのDappがウォレットならば、ウォレットに入っているアセットが抜かれてしまう可能性があります。したがって、Dappはローンチする前にセキュリティホールが無いことを第三者に監査してもらうことになります。

従来のように、スマートコントラクトをスクラッチで書いた場合は、このセキュリティ監査に数百〜数千万円のコストがかかっていました。これでは、個人がDappを開発しローンチするには大きな参入障壁になってしまいます。Bunzzは検証済のスマートコントラクトをモジュールを提供してくれるので、セキュリティ監査が不要というのも一つの売り要素になっています。

ただ、Bunzzは確かに便利ではあるのですが、モジュール化されたスマートコントラクトが使えるだけでは、既成テンプレートを使うこととのトレードオフで、スマートコントラクトの自由度が下がってしまいます。そこで今後、選んだ既成スマートコントラクトに開発者が自分でコードを追加・編集できるエディタを含むIDE(統合開発環境)がBunzzに実装される予定です。

しかし、開発者が自分でコードを追加・編集してしまうと、そこに新たなセキュリティホールが生まれる可能性は否定できません。せっかくBunzzを使うことでスキップできたセキュリティ監査が必要になってしまう可能性があるわけですが、Bunzzでは第三者に頼まなくてもシステムがセキュリティを監査してくれるオートオーディット機能も実装する計画です。

「このIDEとオートオーディットは我々にとっては必須の機能だなと考えています。(スマートコントラクトを)編集したいユーザさんもいるので、編集が終わった後に、オートオーディットに投げていただくと、監査のシステムが走って、オーディットレポートを受け取れるようにしたいと考えています。

どの程度までのオーディットを行うかがポイントだと思うんですが、大きな脆弱性がないか、簡易なチェックを求めているユーザが多いので、静的監査をサポートしていこうと考えています。具体的には裏側で Mythril や Slither のようなオーディットツールが複数同時に動くイメージです。多角的にオーディットのレポートをゲットできるようにします。

また、例えばDeFi(のDapp)などでは、もう少し強めの監査でちゃんと人に見てもらいたいという需要があるので、そこに関しては、我々のパートナーのオーディットファームと組んで、Bunzzを通して監査の依頼ができるようにします。ボリュームディスカウントが利くので、オーディットファームに直接セキュリティ監査を頼むよりも安くなりますね」(圷さん)

より多くの要望に応えるために

Bunzzのユーザが増えたことで要望も増えてきました。Bunzzには嬉しい声ですが、それらを優先づけし、着実にアップグレードしていくことが求められます。現在Bunzzが対応するウォレットはMetamaskのみですが、ユーザから選択肢を増やして欲しいとの要望は根強く、Bunzzでは複数のウォレットとの接続ができる仕組みの開発準備にも着手しています。

また、BunzzはSolidityで書かれたスマートコントラクト、チェーンとしてはEVM互換チェーンに対応していますが、Solana系やWasm(Web Assembly)にも対応してほしいという声が多く寄せられているそうです。どれを採用し、何を優先させるか。将来を見越した多角的な見極めが必要で、この辺りこそ圷さんの絶妙な舵取りが求められているところです。

Bunzzは、スマートコントラクトのデプロイの部分を押さえにいっているからこそ、Dapp開発者のコミュニティやエコシステムの中で、さまざまなプラットフォームやプレーヤーと連携することが可能です。現在は個人のDapp開発者がユーザの中心ですが、今後、企業での需要拡大にも注力していきたいと圷さんは語ってくれました。

「今は個人の開発者にフォーカスしていますが、日本の企業様、web3への参入に興味があるけれどもどこから始めていいのかわからない、ブロックチェーンとはなんぞや、スマートコントラクトとはなんぞや、というところから学んでいかなければならないというような企業様にも、Bunzzは良い教材になると思います。無料で使えますので触ってみてください」(圷さん)

3回連載の最終回はWeb3特化のインキュベーター「Tané」に登場いただきます。

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