料理をカスタマイズ注文できるアプリ「FOODCODE」、東京の次…カレーの次の展開を聞いてきた

FOODCODE CEO 西山亮介氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

リクルートでスタディサプリを立ち上げた西山亮介さんと、ロンドンで2010年に創業したエドテックスタートアップQuipper(2015年、リクルートが買収)の創業者である渡辺雅之さんがタッグを組み、2018年に共同創業したFOODCODE

FOODCODE は、ユーザーがアプリを使って、オーダーする料理を自分好みにカスタマイズできます。中でも最も有名なブランドが、都内などに複数店舗展開するキャッシュレス決済カレーの「TOKYO MIX CURRY」で、2022年12月には提供30万食を突破しています。

数ある産業の中でも食は最もデジタル化が遅れている分野の一つと言われます。以前は共にエドテック(教育×テック)で教育のデジタル化にチャレンジした二人が、なぜ改めてイノベーションが起きづらいとされる業界に身を投じる決断をしたのか、CEOの西山さんに話を伺いました。

FOODCODE を起業されたきっかけは何ですか

西山:会社を作ったのは2018年11月で、1店舗目の「TOKYO MIX CURRY」を根津で始めたのが2019年6月です。起業前はリクルートでスタディサプリというサービスをやっていて、社内の新規事業コンテストに応募してグランプリをもらい、そこから教育事業の立ち上げをしていました。30代は教育×テクノロジーに心血を注いでいましたが、40歳を目の前にしたときに、スタディサプリを成長させるのか、改めてもう一度、外に出て自分でスタートアップをやってみるか悩んでいました。テーマは自分が好きな食の領域でやりたかったんです。当時、中国でLuckin Coffee(瑞幸咖啡)が出てきたり、アメリカでサラダのSweetgreenが出てきて、どんどん大きくなっていたので、食×テクノロジーで新しいサービスやってみたいなと思ったのがきっかけです。まずは副業で始めてみました。

ただ、スタディサプリの事業もおもしろかったので本当に悩みました。Jリーグのチェアマンだった村井さん(村井満氏)のお話を聞く機会があり、「迷ったらワクワクする方を選びなさい」と話をされました。ワクワクするのは自分で起業する方だったので、起業を選びました。

Image credit: FOODCODE

スタディサプリを続けることに比べ、再び独立して起業するリスクへの怖さはなかったですか

西山:リスクに対する怖さは正直なかったです。正解を選ぶのではなく、選んだ道を正解にすべきと思っています。スタディサプリでも、思い通りにいったこともいかなかったこともありました。むしろ、うまくいかなかったことの方が多いです。そうした中で自分たちの選んだ道が正しいと信じ、トライ&エラーを繰り返し続ける。世の中に価値を提供するのはそういうことだと思っています。

自分たちが作っているカレーは美味しいし、アプリもすごく良いと思っていました。テクノロジーで世の中が良くなっていく、誰も飲食でデジタルトランスフォーメーション(DX)を出来ていない中で次のデファクトを作っていける。多分僕らがやらなくても誰かがやるでしょうから、テクノロジーが浸食していく止められない流れに乗っかっていこうと思いました。

FOODCODE を創業されたのが37歳の時ですね。再び起業する際に、年齢は気にされましたか

西山:スーモの立ち上げや教育事業の立ち上げなど、すごくエキサイティングなビジネスに関わっていたので、そこに対してもっと早くからやっておけばよかったなという感覚はありません。20代や30代前半と比べ、正直徹夜で寝ずにやるのは体力的に無理です。40代までのビジネスパーソンとしての経験を通じて、繋がったいろんな方々に助けていただいています。

特に、カレーはBtoCのサービスなので、年齢があまり関係ないように思います。BtoBのサービスの方が、年齢・経験・仲間・ネットワークとかがすごく大切で、より価値を発揮してくるように思います。僕らはカレーをBtoC向けにやっていましたが、コロナ禍にはテイクアウトだけだと成立しなくなって、周辺の会社にカレーをお届けするサービスを始めました。

この会社へのお届けサービスは、友達が在籍や経営している企業にいろいろお願いして、皆さんが助けてくれて立ち上がりました。もし、25歳の時にFOODCODEを起業していたら、(今ほどはネットワークがなかったので)こんなに早くオフィスお届けサービスが立ち上がらなかったと思います。

TOKYO MIX CURRY の一番のこだわりを教えてください

西山:どれだけアプリが使いやすくて、どれだけ商品を受け取る体験がよかったとしても、食べ物なので食べ物自体が美味しくないと成立しません。カレー自体がすごく美味しいというのが一番大事だと思ってます。

こだわりは、ジャンクなのにヘルシーというのが重要かなと思っています。カレーはパンチのある食べ物です。しかしながら、うちのカレーは小麦粉を使っていないし、野菜も結構食べることができます。ご飯の量を減らして代わりにコールスローにして糖質を抑えることもできます。美味しくてヘルシーで、毎日でも食べ続けられる味という部分が僕らのカレーの特徴だと思います。

繰り返し使っていただけるユーザーの方が多く、その方々にアンケートを取ると、「味が好きだから繰り返し使い続けています」という声が多いのですが、それと同じぐらい多い声として「自分好みにカスタマイズできる」「待ち時間がない」というところに価値を感じてもらっています。カレーの味、プラスαユーザーの便益という掛け算が TOKYO MIX CURRY らしさだと思います。

Image credit: FOODCODE

BtoBとBtoC、それぞれ販売拡大のための戦略を教えてください

西山:BtoBは最初、僕たちの知り合いのところから立ち上がりましたが、その後は周辺の会社に案内して広がっています。テイクアウトにしても、会社へのお届けサービスにしても、繰り返し使っていただくことがサービスとして重要だと思っていて、週一回食べていただけるユーザーをどれだけ積み上げていけるかだと思います。

それを実現するために、厨房チームはメインメニューに加えて、週替わりの限定カレーを作ったり、より美味しくするために今日々精進したりしていますし、店舗運営チームはまた来ていただくために試行錯誤しています。それをエンジニアチームがプラットフォームで支えて、毎週でも毎日でも良い体験を届けるために精進しています。

一般的な飲食店はイートインがメインなので、座席数×回転数で店の売り上げのキャパが決まります。たくさん売り上げるためには単価を上げるか、席数を増やすか、回転数を上げるかになりますが、デリバリーとか店外で消費されるニーズを高めていくことによって、すごく小さな店でも、より多くの人にカレーをお届けして食べていただけます。

東京・丸の内のKITTEにイートインができる店舗をオープンしたと聞いています。狙いを教えてください

西山:丸の内でキッチンカーをやっていたことがあって、コロナ禍ではありましたがお客様からウケている感覚があり、いつか丸の内という日本のビジネスの中心街で店を出していきたいなという想いがありました。

純粋にお客様からは「料理を(そのまま食べられるよう)皿で提供されたら嬉しいのに」という声が多くて、お弁当スタイルではなくて出来立てを提供してみたかったんです。これをテクノロジーと組み合わせて、今までと違う飲食体験が提供できるか試したくて始めてみました。

Image credit: FOODCODE

TOKYO MIX CURRY の今後の展望をお聞かせください

西山:現在は東京のオフィス街を中心にサービスを展開していますが、今後は東京のオフィス街のビジネスパーソンにとって「ランチといえば TOKYO MIX CURRY だよね」という当たり前を作っていきたいです。東京のオフィスエリア、山手線とその周辺を中心に店舗数を拡大して、より多くの方に TOKYO MIX CURRY をご利用いただける環境を作ります。

その先は、東京だけでなく政令指定都市規模の都市のビジネスパーソンに TOKYO MIX CURRY を展開していく可能性もありますし、東京と同じような垂直の都市構造を持っている海外の都市へも展開してきたいと考えています。

東京は世界から見てもご飯が美味しい都市というイメージがあるので、ランチに関する課題があればどこの国に行っても戦えるんじゃないかなと妄想しています。国民食としてのイメージが強いラーメンと寿司に続く国民食はカレーだと思っていて、海外ですごく人気になるムーブメントが近い将来来ると思っています。

そのほか、ユーザーアプリからお店を運営する裏側のシステムプラットフォームは基本的にはカレー以外も展開できるように作ってあるので、プラットフォームを(直営以外の他のレストランに)開放することも将来的にはあるのかなと思っています。

ありがとうございました。

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