a16zが世界のジェネレーティブAIトップ50社を分析、導き出された6つの考察

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Image credit: Andreessen Horowitz

<ピックアップ> How Are Consumers Using Generative AI?

「ChatGPT」はローンチから9ヶ月で、コンシューマ向けアプリとしては最速で月間アクティブユーザ1億人を達成し、ジェネレーティブ AI の新時代を切り開いた。Web3 を楽観視してきた Andreessen Horowitz(a16z)は、仮想通貨やブロックチェーンに長らく投資してきただけでなく、近年は AI 分野への投資も強化している。

a16z はトラフィック分析ツール「Similarweb」のデータを使い、今年6月現在、世界のジェネレーティブ AI 製品トップ50を月間ページビューでランキングし、その成長動向とトラフィック流入源を調査することで、ChatGPT 以外のジェネレーティブ AI 製品と消費者がどのように接しているのか、どの分野が最も可能性があるのか、といった情報を分析した。

1. 多くの主要製品はスタートアップから

ChatGPT と同様に、50社に含まれる主要なジェネレーティブ AI 製品のほとんどは1年前には存在しなかった。リストにランクインした50社のうち、テック大手の製品、あるいは買収した企業は、Google が開発したチャットボット「Bard」や、Microsoft が買収したビデオエディタ「Clipchamp」など、わずか5社に過ぎない。

これらの企業のうち、48%はすべて自己資金に頼っており、外部からの資金調達を受けていないことから、スタートアップでも大規模な AI 製品を迅速に立ち上げることは可能であり、大規模な資金は必ずしも準備する必要がないことがわかる。ただし、5,000万米ドル以上の資金を調達した企業も15%存在する。

このリストの企業は、「独自モデルをトレーニングする企業」「既存モデルをファインチューニングする企業」「GPT wrappers のように既存モデルに UI を構築する企業」の3つに大別される。興味深いことに、それぞれの平均調達額は、ファインチューニングする企業が2,000万米ドル、wrapper 企業が900万米ドルなのに対し、独自モデルを持つ企業は平均9,800万米ドルだった。

2. ChatGPT の優位性

今年6月の時点で、ChatGPT は月間トラフィックトップ50の60%を占め、世界で24番目に人気のあるウェブサイトとなっており、月間訪問者数16億人、ユーザ2億人に達する。他の製品は ChatGPT ほど成長していないが、チャットボットと代替サービスの仲間である CharacterAI は、ChatGPT の約21%の規模を持つ2番目の製品であり、モバイル分野で最も強力なアーリーアダプタだ。

Sensor Tower によると、CharacterAI のデイリーアクティブユーザ(DAU)は ChatGPT に匹敵し、その継続率はかなり高い。他の主要なソーシャルネットワークアプリと比較すると、ChatGPT のトラフィックランキングは Reddit、Linkedin、Twitch とほぼ同じだが、それでも Whatsapp、Youtube、Facebook などには大きく及ばない。

3. 画像生成の人気

ここ数ヶ月で、CharacterAI、Midjourney、ElevenLabs が多用され始めた。トラフィックデータによると、画像生成が最も人気のあるジェネレーティブ AI アプリで、月間トラフィックの41%を占め、次いでライティングツールが26%、動画生成が8%と続いている。

特筆すべきアプリのもう1つのカテゴリーはモデルセンターで、リストには2つのサイトしかないが、どちらもトップ10に入っており、大きなトラフィックを牽引している。AI アート作成のための共有プラットフォーム「Civitai」と、機械学習アプリの開発に特化した「Hugging Face」だ。ただし、これらは、Web サイトからモデルをダウンロードしてローカルで実行するため、Web サイトのトラフィックだけを見ると、実際の利用を過小評価している可能性がある。

4. 市場機会の拡大

画期的な成功を収めたアプリケーションが1つもない分野が数多くある。各分野の上位2社間のトラフィックの差を見てみると、その差はほとんどの分野で2倍未満、すなわち、1位の企業は2位の企業のトラフィックの2倍未満なのだ。ランクインした企業の過去6ヶ月の平均月間成長率が50%であることを考えれば、この差は縮められない差ではない。

また、分野毎のサービスの細分化が顕著だ。特定の用途やワークフロー向けに設計された製品が、より汎用的なツールとともに進化しており、それらも成功企業になれる兆しを見せている。例えば、画像生成の分野では、Midjourney が圧倒的な強さを見せる一方、ゲームに特化した Leonardo などの企業も目覚ましいトラフィックの伸びを見せている。

5. 有料ユーザが増加

過去5年間、多くのコンシューマ向けアプリは価格競争に巻き込まれたり、ユーザを獲得するために補助金を受けたりしており、企業にとっては獲得コストが上昇し、企業価値が懸念すべき指標となっている。しかし、ジェネレーティブ AI はゲームのルールを変え、このリストに掲載された企業のほとんどは有料マーケティングを行っていない。彼らは大量のトラフィックを、X、Reddit、Discord、e メールなどのチャネルや、口コミや紹介により獲得している。

a16z がベンチマークする150の非 AI サブスク消費者向け製品は、有料マーケティングから70%のトラフィックを得ているのに対し、SimilarWeb によると、今回のリストの最下位25%のジェネレーティブ AI 製品は、有料のマーケティングソースからのトラフィックの2%しか得ていない。

さらに、ユーザはジェネレーティブ AI にお金を払うことさえ厭わない。リストに掲載された企業の90%はすでに利益を上げており、そのほとんどがサブスクモデルだ。月払ユーザの場合、製品1つあたりの平均収益は月21米ドル、年間252米ドルである。

対照的に、ジェネレーティブ AI 製品が登場する前から人気のあった瞑想アプリ「Calm」や「Headspace」、多言語学習アプリ「Duolingo」などの消費者向け製品をサブスク契約の場合、一般的な年間料金は70米ドル未満で、月払契約の場合、毎月の平均利用額はわずか10米ドルだった。これは、ジェネレーティブ AI が消費者の支払意欲を高めたことを示している。

6. モバイル市場の可能性

これまでジェネレーティブ AI 製品は、モバイルアプリよりも Web ブラウザが優先されてきた。ChatGPT でさえ、モバイルアプリのローンチに6カ月を要した。おそらく、ほとんどの AI 製品開発チームは小規模なので、最初から Web とモバイルの両方に注力するのは難しいからだろう。今回のリストのうち、モバイルアプリが用意されているのは15社のみで、Web サイトと比べて、モバイルアプリからのトラフィックは月間総トラフィックの10%に過ぎない。

注目すべき例外もある。画像生成カテゴリでは、写真編集ツール「Lensa」や画像加工ツール「Wombo」などの製品は、サードパーティ API アプリの開発ハードルが比較的低いため、製品の売上が急上昇し急降下するなど、浮き沈みが激しい。

他の3つの注目すべきアプリは、プロフェッショナルデザインスタジオ「PhotoRoom」(モバイルからのトラフィックが88%)、AI 人格と会話できる「CharacterAI」(モバイルトラフィックが約半分)、テキスト読み上げの「Speechify」(モバイルからのトラフィックが20%)だ。これらのアプリのウェブサイトに比べ、モバイルアプリを利用するユーザの割合は非常に高い。

今日のユーザーが携帯電話で1日に費やす時間は、パソコンで費やす時間よりも平均36分も長いことを考えると、技術が成熟するにつれて、より多くのモバイルファーストのジェネレーティブ AI アプリケーションが登場することが予想される。

ChatGPT の成功は、ジェネレーティブ AI の氷山の一角に過ぎない。画像生成や特定のニーズに合わせて設計された製品などのアプリも増加傾向にあり、ユーザが AI 製品にお金を払う意欲を持つことで、企業には収益機会が広がっている。初期の勝者はすでに現れているかもしれないが、新たなイノベーターが今後開拓すべき分野や機会はまだたくさんある。ジェネレーティブ AI の可能性は無限だ。

via Andreessen Horowitz

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