リアルイベントのVR/ARからピボット、中小企業向け〝メタバースのためのShopify〟を目指すシンガポールXctuality

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Xctuality 創業者の2人。左から、Warren Woon 氏、Adrian Oliveiro 氏。
Image credit: Xctuality

2〜3年前、Adrian Oliveiro 氏と Warren Woon 氏は、ライフスタイルとエンターテインメントの分野で、リアルイベントに技術サービスを提供していた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2人は、リアルイベントで VR/AR 技術を提供するか、仮想体験プラットフォームの構築に完全にピボットするかのどちらかで、自分たちの製品の将来性を確保したいと考えた。

我々は後者の選択肢を選び、2019年末に向けて最初のロードマップを起草した。パンデミックがリアルイベント業界に影響を及ぼし始めたとき、我々はすぐにロードマップを早送りした。(Woon 氏)

これが、明日の体験プラットフォームを今日実現することを目指すスタートアップ Xctuality の始まりだった。

シンガポールを拠点とする Xctuality は、現地のアート、文化、ホスピタリティ・コミュニティとのコラボレーションにより360°の没入型ソリューションを提供する。言い換えれば、このスタートアップは、観客を直感的に魅了することで、拡張された劇場体験に没入させることを目指している。

我々は、ブランド、クリエイター、消費者の架け橋となり、より魅力的なバーチャル体験を提供するバーチャル体験技術プラットフォームだ。ブランドやクリエイターがメタバースへと加速できるよう、他の Virtual / Augmented / Extended Reality(VR/AR/XR)の機能や重要なインタラクティブ要素を含むエコシステムをさらに開発している。(Woon 氏)

新たなソーシャルネットワークの誕生

同社は主に「Xctuality Interactive(革新的な360°没入型インタラクティブ環境)」と「Xctualyfe(ブランド、クリエイター、クライアントの架け橋となるソーシャルネットワーク)」を提供している。

Xctuality Interactive は、エンド・ツー・エンドのストリーミング・サービスとしてスタートし、B2B のクライアントが、ストリームへのユニークなリンクを通じてチケットを販売し、視聴者が基本的な e コマース機能を通じて商品やサービスを購入できるようにすることで、収益化を可能にする。(Woon 氏)

Xctuality はその後、インタラクティブな360°デジタルシアター体験であるフューチャーステージの PoC を発表し、製品を強化した。

現在、SaaS ツールキットを発表する最終段階にあり、特定のテンプレートやユーザが作成したコンテンツを使用して、クライアントが独自にインタラクティブな360°体験を作成できるようにする。

一方、Xctualyfe は、メタバースへの入り口であり、ソーシャルネットワーキングの次の進化である。ここでは、B2B と B2C の2つに焦点を当てる。B2B モデルは、メタバースへのブランドやクリエイターの参入を加速させるためのサービスとして、メタバースを創造することに重点を置く。これは本質的に、「メタバースのための Shopify」だ。

B2C の面では、さまざまなバーチャルワールドを構築し、体験パートナーとともに開発する。消費者は、パルクール(アスレチックアクティビティ)から始まるゲーミフィケーションの旅に誘われ、ブランド、クリエイター、ビジネスを有機的に発見することになる。ゲームを補完する形で、ショーやパフォーマンス、バーチャル体験、eコマースなどが開催される。私たちは、ゲームコンテンツをさらに充実させるために、地域の著名なゲーム開発会社と提携している。(Woon 氏)

Xctuality Interactive
Image credit: Xctuality

Xctuality の CEO でもある Woon 氏によると、Xctuality Interactive はすでにライフスタイル、エンターテインメント、舞台芸術の分野で複数のクライアントを獲得している。その中には、シンガポールの政府観光局、国家芸術評議会、人民協会、Raffles Hotel、国家遺産委員会(NHB)、Far East Hospitality、Roche Diagnostic、1Play Sports、Asian Geographic、Unique Event and Exhibition、Double Confirm Productions などがある。

Xctualyfe については、いくつかの B2C 販売/B2B 組織やゲームプラットフォームと商業契約や覚書を締結しつつある。

Xctuality は主にプロジェクトベースのコストモデルでマネタイズを開始し、仮想環境内のすべてのトランザクションのパーセンテージをとっている。現在は、SaaS ベースのサブスクリプションモデルに移行しており、すべてのトランザクションのパーセンテージをシェアしている。しかし、大規模なエンタープライズプロジェクトについては、プロジェクトベースの原価計算モデルを引き続き利用する予定だ。

中小企業のメタバース導入を加速

「XctuaLyfe」
Image credit: Xctuality

Woon 氏は、特に能力やリソースのない中小企業のメタバース導入への加速を支援したいと述べた。そのため、同社は限られた数の企業に対して、バーチャルワールドのデザインと構築を1年間無償で提供する予定だ。

その他の企業に対しては、Xctuality は、メタバース内での収益化を支援するために、簡単に採用できる 3D モデリングソリューションを提供する。これは後に、NFT に変換することができる。

Xctualityは、メタバース内でマネタイズできるように、簡単に採用できる3D モデリングソリューションを提供する。ブランドやクリエイター、ビジネスを支援するだけでなく、仮想経済全体を動かすインフラを構築することになるため、そのチャンスは計り知れない。将来的には何兆米ドルもの価値になるだろう。企業がイエローページの掲載から Web サイトを持つようになったように、世界市場全体が Xctuality にとって未開拓の地なのだ。(Woon 氏)

Woon 氏はまた、Xctuality が海外で非常に迅速に規模を拡大するつもりであることにも言及した。シンガポールだけでなく、2022年からはアジア地域にも進出する計画だ。

これまで培ってきたさまざまな戦略的関係から、アメリカとヨーロッパも視野に入っている。(Woon 氏)

険しかった説得の日々

「X Marketplace」
Image credit: Xctuality

CTO の Oliveiro 氏と Woon 氏にとって、起業の道のりは容易ではなかった。リアルイベント業界からピボットしたテックスタートアップとして、2人は金融機関、投資家、見込み顧客/雇用者を説得するのに苦労した。

市場が比較的若かったため、我々の製品とビジネスロードマップは実証されておらず、大半の人々は、バーチャルへのピボットは、パンデミックが緩和され、生活が正常に戻るための一時的な措置だと考えていた。実際、我々は長期的な可能性と、PoC と製品の実行可能性を示す必要があった。

未知のことが多かったので、ほとんどの金融事業者や投資家が我々のプロジェクトに資金を提供したがらなかった。その結果、我々が望む人材を雇用するためのリソースは限られていた。(Woon 氏)

数カ月にわたる話し合いの末、Xctuality は、30万米ドルのシードラウンドをリードした Brain-Too-Free Ventures を含む複数の VC の支援を得ることに成功した。その後、既存株主からの26万米ドルのブリッジラウンドを2020年に完了した。

Xctuality は現在、既存株主と VC やエンジェルからなる新規投資家から100~150万シンガポールドル(1.1〜1.6億円)を調達し、プレシリーズ A ラウンドをクローズしつつある。また、まもなく IDO(Initial DEX Offering、DEX=分散型取引所で暗号資産を発行し資金調達する方法)を行い、数ヶ月以内にシリーズ A ラウンドを行う予定だ。

メタバースや広義の Web3は流行であり、マーケティングギミックだと言う批評家は多いがどう思うか、と聞いてみたところ、Woon 氏は次のように答えた。

Web3という用語は誰のためにもならない。賛成であれ反対であれ、分散化、ブロックチェーン、あるいは機械学習や AI、インタラクティブなゲームプレイ、大規模なソーシャルネットワークといったテクノロジーは、すでに我々の身近にあるというのが現実だ。

我々は、Web3が技術的な展望を引き継ぐというよりも、現在の能力を補完し、いくつかの本質的な問題を解決する異なる方法を可能にすると考えている。

変化に対する抵抗勢力は常に存在するだろうが、我々が実現できることを夢見、チャンスを見出し、勇気を持ってそれを目指す人たちもいるはずだ。ブロックチェーン、仮想通貨、NFT の各分野が過去2~3年でどれほどのスピードで変化してきたかを見てほしい。

【via e27】 @E27co

【原文】

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