音楽ストリーミングサービス「KKBOX」、台湾で上場申請——KDDIが筆頭株主、売上の45%は日本から

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Image credit: KKCompany(科科科技集団)

24日、KKBOX の親会社 KKCompany(科科科技集団)が上場申請を行い、同時に公告を発表した。

1. 事業内容

読みやすくするため、上記の数字は100%以上になるように四捨五入してある。
出典:KKCompany(科科科技集団)の公開目論見書

2022年、KKCompany の売上高は29億ニュー台湾ドル、税引前純利益は2.3億ニュー台湾ドル、EPS(一株当たり利益)は1.71ニュー台湾ドルとなる。主な収入源は音楽ストリーミング、マルチメディア技術、クラウドインテリジェンスの3つの事業部門に分類され、対応する製品ラインは「KKBOX」「KKStream」「Going Cloud」で、それぞれ収入の78%、21%、0.63%を占める。

Image credit: KKCompany(科科科技集団)

ただし、目論見書の「音楽ストリーミング」の部分は KKBOX だけのものではなく、日本の3大通信グループの1つ KDDI(KKCompany の筆頭株主)の音楽ストリーミングの運営も含まれている。2022年、KKBOX の売上は約11億ニュー台湾ドル(約51億円)となり、総収益の37.1%を占め、KKCompany にとって非常に重要な収益源であることに変わりはない。

将来的な視点から見ると、音楽ストリーミング(KKBOX)の成長は新市場の開拓にかかっており、マルチメディア技術(KKStream)とクラウドインテリジェンス(Going Cloud)は法人顧客の支持が必要である。最も注目すべきは、新設されたクラウドインテリジェンス事業部だろう。クラウド業界の性質上、粗利率が高く、売上高を押し上げる意義は大きい。

2. 株主構成

KKCompany の株主は比較的集中しており、安定している。

KKCompany の筆頭株主である KDDI は45%の株式を保有しており、他の株主の多くは「身内」である。KKBOX の創業者 Chris Lin(林冠羣)氏は2.4%の株式を保有しており、4.6%の株式を保有する Manuscript は、KKBOX の創業メンバーの一人で、HTC の CEO Cher Wang(王雪紅)氏の甥の実質的な支配下にある。また、HTC は KKBOX の株式7.5%を保有しており、株式7.3%を保有する Penxuan Lee(李芃萱)氏は Lin 氏の配偶者である。

大口顧客であり大株主でもある KDDI をはじめとする「身内」が株式を長期保有すると仮定すると、IPO 後に株式売却する GIC(シンガポール政府投資公社)を除けば、上位10位までの株主はそれほど多くないのかもしれない。

特筆すべきは、GoldStar Entertainment(金星娯楽)と GoldStar Culture(金星文創)の代表取締役 Wei-zhong Wang(王偉忠)氏だ。KKBOX が現在もエンターテインメント業界に深く関わっていることを考えれば、ベテラン TV プロデューサーの Wang 氏の名前があることは驚くべきことではなく、KKCompany の取締役リストに光を加えることになっている。

3. 安定した日本からの売上

KKCompany は日本、香港、シンガポール、マレーシアを含むアジア太平洋地域で事業を展開しているが、安定した主要市場はやはり台湾、日本、香港であり、台湾が全体の45%を占め、日本市場はほぼ安定して収益の45%を貢献し、香港は約10%を占めている。

4. 売上が一部チャネルに集中

KKCompany の IPO 引受証券会社 President Securities(統一総合証券)は評価レポートの中で、市場競争、売上集中、人材確保・定着という3つの大きなリスクを指摘している。

市場競争と人材問題は、すべての企業が直面しなければならない問題であり、特に KKCompany 傘下の3大事業では、多くの巨大多国籍企業を含む多くの競合他社が市場に存在する。

特に売上集中の部分に注目すると、2022年、KKCompany の主な売上チャネルは3つあり、KDDI(38.64%)、プラットフォームユーザ(37.1%)、Chunghwa Telecom(中華電信、15.35%)だ。上位3つの売上チャネルが全体の90%以上を占める。

最初の大口顧客 KDDI が大株主

KDDI は KKCompany への最大の出資者であり、主要顧客でもある。KDDI は日本の音楽ストリーミングブランド「UTAPASS」を設立し、KKCompany が実際の運営、ストリーミング技術、音楽著作権、アフターサービスを担当している。また、KKCompany は、KDDI グループの音声・映像ストリーミング技術の技術開発・保守サービスも提供している。

KDDI からは毎年10億ニュー台湾ドル(約46億円)以上の売上を獲得している。直近3年間の KDDI からの年毎の売上は、13.9億ニュー台湾ドル(約64億円、2020年)、11.7億ニュー台湾ドル(約54億円2021年)、11.4億ニュー台湾ドル(約53億円、2022年)であり、絶対額では減少しているが、2023年第1〜2四半期の KDDI からの売上は6億ニュー台湾ドル(約28億円)で、通年で見れば2023年は例年状態に戻る見込みだ。

プラットフォームユーザ=KKBOX 加入者

プラットフォームユーザは KKBOX 加入者で、売上高に占める割合は、38.43%(2020年)、37.69%(2021年)、37.1%(2022年)だった。あまり大きな変動はないが、売上高としては、13億ニュー台湾ドル(約60億円、2020年)、11.8億ニュー台湾ドル(約55億円、2021年)、10.9億ニュー台湾ドル(約51億円、2022年)となった。売上高の減少は、加入者数の減少に起因する。

Chunghwa Telecom(中華電信)の動きに、Taiwan Mobile(台灣大哥大)も続くか

Chunghwa Telecom は、KKCompany の4,000万米ドルのプレ IPO ラウンドに参加し、株式の1.7%を保有した。Chunghwa Telecom はモバイル、ブロードバンド、MOD(Music On-Demand)の料金プランに KKBOX サービスを優待料金で追加し、売上に応じて KKCompany とレベニューシェアしている。直近3年間の年毎の売上を見てみると、5.1億ニュー台湾ドル(約4億円、2020年)、4.8億ニュー台湾ドル(約22億円、2021年)、4.5億ニュー台湾ドル(約21億円、2022年)だった。

もう一つの通信事業者 Taiwan Mobile(台灣大哥大)もプレ IPO ラウンドに参加し、2.8%の株式を保有している。Taiwan Mobile はオーディオストリーミングサービス子会社だった「MyMusic (台灣酷樂時代)」を KKBOX に売却しており、Chunghwa Mobile のモデルにならって、KKCompany の収益を押し上げると期待されている。

売上集中のリスクについて、President Securities が発表したレポートは次のように述べている。

市場に参入し多くの視聴者にリーチするためには、有名通信事業者と戦略的に提携することで「補完的かつ相互強化的な関係」を構築できる。大手通信事業者に売上を集中させることは、業界の特性と市場拡大を戦略的に考慮した結果と言える。

公開目論見書からは、事業主体分割完了後の KKCompany の業績は安定していることがわかる。おそらくセクシーなものではないが、それでも一時代を築いた花形であることがわかる。

2005年の設立以来、KKBOX は最も有名なスタートアップコングロマリットへと18年の歳月を経て成長してきた。台湾での株式公開することは、間違いなく台湾の純粋なソフトウェア実践者にとって間違いなく良い選択である。当初はパソコンにダウンロードしていた KKBOX が、いつか市場で株式を購入できるようになるとは誰が予想しただろうか。

【via Meet Global by Business Next(数位時代) 】 @meet_startup

【原文】

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