2023年のバーチャルハロウィーン、初参加のJ:COMがクラスターと組んで成功した理由

左から:クラスター エンタープライズ事業部 プランナー 加藤大哉氏、クラスター エンタープライズ事業部 ディレクター 岡崎克也氏、J:COM 経営企画部 マネージャー 鈴木直也氏、J:COM 技術戦略部 アシスタントマネージャー 川畑浩大氏、J:COM ビジネス開発第一部 小橋奈那氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

2020年から毎年ハロウィーンの時期に、KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会が開催している「バーチャルハロウィーン」。渋谷駅周辺を中心とした「路上飲酒に伴う通行の妨げ」「ポイ捨てによるごみの散乱」「騒音」などへの対処として、リアルの街以外での楽しみ方として、延べ130万人以上が参加するようになりました。

ケーブルテレビ大手のJ:COMでは、2023年のバーチャルハロウィーンに初めて参加しました。この際、どのようなコンテンツを展開するか、企画、開発、運営までをメタバースプラットフォーム「cluster」を運営するクラスターが全面的にサポートしました。J:COMのバーチャルハロウィーン参画の裏側を、J:COMとクラスターの担当者の皆さんにお伺いしました。

「バーチャルハロウィーン」は2020年から開催していますが、今回(2023年)、イベントパートナーとして初めて参画された理由を教えてください。

J:COM川畑:2022年から、私たちJ:COMでは新しい試みを始めました。社内の様々な部署から10名ほどが集まり、「新技術活用タスクフォース」というチームを結成したんです。このチームのミッションは、最先端の技術や分野を探究し、J:COMのビジネスや新事業のアイデアを模索することです。それを経営層に提案するわけです。

昨年度は、いわゆるバズワード化していた「Web3」や「メタバース」など、私たちにとっては未知の領域に挑戦しました。メンバー全員が一から勉強し、スタートアップを含む数十社と意見交換を行い、さらにメタバース団体「Metaverse Japan」に加入しユースケース等の情報収集を行いました。そして、社内での活用や小規模な商用利用のアイデアを考案しました。

残念ながら昨年度の取り組みは形にはなりませんでしたが、その過程でクラスターさんやKDDIさんとのつながりを作ることができました。そして今年度、タスクフォースは「イノベーション推進タスクフォース」として再出発。夏からは引き続きメタバースやNFTもターゲットに活動を再開したのですが、直後の8月にKDDIさんからバーチャルハロウィーンの企画のオファーをいただき、「やってみよう」と思ったんです。

参画の理由は2つあります。一つは、メタバースやNFTについて1年間挑戦、探究し、タスクフォースとして絶対に実現したいという強い思いがあったこと。もう一つは、社会課題の解決をはじめとしたイベントのコンセプトが、J:COMのブランドメッセージやサステナビリティへの取り組み、そして私たちの情熱や思いと一致していたからです。それで「参加しよう」と決めました。

企画検討を進める中でどんな課題がありましたか。そして、どのように解決されましたか。

J:COM川畑:まず、メタバースの世界で何をすればいいのか、純粋にわからなかったんです。コンセプトもそうですし、オブジェクト、ギミック、アバター、そして画像や動画などの素材に関しても、どう取り組むべきか全く見当がつきませんでした。

この課題は、クラスタ―さんと密に連携をとり、伴走していただくことで解決しました。アクションアイテムや必要な素材、スケジュールなど、クラスタ―さんから手取り足取り教えていただき、また都度都度フォローもいただけたので何とか前に進むことができました。また、もう一つの解決策として、社内のメタバースユーザーを緊急で招集し、ざっくばらんにアイデアをもらったことも重要でした。

一方で、いろいろなアイデアが湧き上がったものの、時間が足りなかったり、タスクの内容がよく分からなかったりという課題が出てきました。そこで、ユーザーに楽しんでもらうことを中心に考え、クラスターさんに予算や製作期間を含めて検討してもらいました。

クラスター加藤:今回のハロウィーンイベントにおいて特に重要視したのは、バーチャル渋谷とバーチャル大阪という二つの会場で、J:COM様らしさを活かした存在感のある空間作りをすることでした。多くの人々が訪れる中、彼らにどのような印象を持ってもらえるか、これが私たちの企画での中核をなしていました。

具体的には、ハロウィーンの装飾を含む多様な表現手法を取り入れ、J:COM様が提供する事業をどうメタバースでの体験として昇華できるかを考慮しました。ただ単にケーブルテレビやインターネット配信の事業を宣伝するだけではなく、訪問者にとって印象深い体験を提供することが求められていました。そのため、エンターテインメント性やゲームのギミックなど、参加者が楽しめる要素を取り入れることが重要でした。

また今回、J:COM様のサービス訴求キャラクター「ざっくぅ」を用いて特徴的な会場作りに取り組みました。会場内に目を引くフォトスポットを設置し、訪れた人々が記念写真を撮ってハロウィーンの思い出を残すことができるような体験を提供することに焦点を当てました。。

「ざっくぅ」をバーチャルハロウィーンで登場させる上で課題があったと伺っています。どのように解決されましたか。

クラスター加藤:まず、「ざっくぅ」というキャラクターは本来、複数体で存在するもので、モチモチとしているという特徴があります。しかし、メタバースの環境では、このキャラクターが持つ特性を表現するのが少し難しかったんです。特に、ふわふわした感じを出すことや、容量の制限があるため、モデルを複数配置し、モーションを付けるのが困難でした。

そういった課題がありながらも、ハロウィーンという10月末のスケジュールに合わせる必要があったため、制限の中で最大限の提案をすることに集中しました。このような状況の中で、私たちは可能な限りの最善を尽くしたと思っています。

クラスター岡崎:私たちはハロウィーンのイベントでJ:COM様のコンテンツをいかに体験してもらい、また視聴してもらうかを重視していました。重要なのは、他のコンテンツに埋もれないようにすることです。クラスターのディレクターとして、ただ目立つことだけを追求するのではなく、ユーザーにとって良い体験に直結することを考える必要があると思っています。

つまり、ユーザーがどのような体験を望んでいるのか、何に興味を持つのかを理解し、それを基にJ:COM様が提供したい内容とバランスを取りながら設計を進めました。私たちの目的は、ユーザーの期待とJ:COM様の目標が一致するような体験を提供することです。

「ざっくぅ」をバーチャルハロウィーンで登場させてみて、ユーザーの反応はどうでしたか。

クラスター加藤:「ざっくぅ」をより身近に感じられる体験を提供しました。ユーザーがアバターとして「ざっくう」になり、自分自身が空間を回遊して遊ぶ体験を楽しむことができました。また、ハロウィーンの思い出として、撮影した写真を共有するという体験も、実際にアバターとして実現できたのは大きな成功だったと思っています。

「ざっくぅ」が”もののけ”の設定を持っていることも、ハロウィーンイベントにコンテンツがぴったり合っていました。今まで2Dでは動いている「ざっくぅ」を見ることができましたが、さらにそれよりもリッチな体験が出来ることを目指しました。3Dでは自分が能動的に動き回り、好きなように操作したり、迷路ゲームに参加したり、高いところに登ったりするなど、コミュニケーションしながら楽しめるような体験を提供しました。

J:COM小橋:社内外からポジティブな反響がありました。今回は「ざっくぅ」が渋谷をジャックするというコンセプトで進めたのですが、その結果、私たちの予期せぬことが起こりました。「ざくらー」と呼ばれる「ざっくぅ」ファンの方々が自発的にSNSで集まり、コミュニティを形成してくれたのです。「8時にみんなで集まって土下座ポーズをしよう!」というような楽しみ方をしてくれていました。私たちにとって予想外の、とても嬉しい展開でした。

元々、私たちはプロモーション要素を多く取り入れる予定でしたが、クラスターさんの意見を参考に社内でも議論を重ね、最終的にはお客様に楽しんでもらうことを最優先にし、「ざっくぅ」だらけのワールドにしました。これが非常に良い方向に働いたと思っています。

J:COMとしてメタバースの取り組みが初めてだったため、様々な部署に協力してもらいました。経理部門などにとってもNFTやメタバースを取り扱うのは初めてだったのでは、「新しい経験で勉強になりました」という声もありました。また、反省点でもあるのですが、社内ポータルを通じてイベントの告知をしたものの社員全員に情報が届かず、「せっかくのイベントなのだからもっと早く教えて欲しかった」という社員の声もありました。私たちの期待以上に、社内外でポジティブに捉えていただけたと感じています。

クラスター 加藤大哉氏 、岡崎克也氏

今回の取り組みは大成功だったと思います。成功したポイントはどこにあったでしょうか。

J:COM小橋:まず第一に、クラスターの皆さんの協力にあったと思っています。先ほど川畑もお話ししましたが、私たちにとってこれは初めての試みで、不明な点が多かったんです。そのため、時には無理なお願いをしてしまったり、求められていた素材を提供できなかったりと、反省すべき点がたくさんありました。

しかし、クラスターの皆さんが最後まで協力してくださったおかげで、最終的には成功へと導くことができたと感じています。社内に目を向けると、初めての取り組みで手探り状態ではありましたが、みんなが非常に協力的でした。少し精神論的になるかもしれませんが、この成果は本当にみんなの協力の賜物だと思っています。

クラスター岡﨑:ディレクターとして、今回のプロジェクトでは特にユーザーがどういう体験をするかを重視していました。私たちは、直感的な体験ができるような設計を目指しました。

たとえば、バーチャル渋谷のハロウィンイベントでは、巨大な「ざっくぅ」が登場して注目を集めます。会場に入るとすぐに目に飛び込んでくるこの「ざっくぅ」に近づくと、実はそれを登ることができるんです。登っていくと、「ざっくぅワールド」の入口が現れ、そこに入ると自動的にハロウィンの仮装をした「ざっくぅ」のアバターに変わります。そこでは多数の「ざっくぅ」が出現し、一連の体験がスムーズに進行します。

このような分かりやすく直感的な動線は、新しいコミュニティ形成など、ユーザーにとって新鮮で楽しい体験を提供する上で重要でした。

今後の展望について、お聞かせください。

クラスター加藤:まず、今回のハロウィンイベントを機に、J:COM様との初めての取り組みができたことについて、大変嬉しく思っています。今後の協力の可能性についても考えています。クラスターの特徴として、我々が作成するデジタルアセットはクライアントの所有物となります。今回の例で言えば、「ざっくぅ」のアバターやスタンプラリーも、基本的にはJ:COM様が所有しています。

次回以降のバーチャルハロウィーンや、異なる空間への転用も可能です。例えば、「ざっくぅ」と遊ぶワールドの再設計や、異なる用途への活用など、二次転用の展望を考えています。

クラスターのアセットを使用することで、コストの面でも有利です。ユーザーコミュニティの形成に貢献し、「ざっくぅ」ファンが集まるイベントを通じて親睦を深めることもできます。今回のJ:COM様のプロモーションを通じて、メタバースを活用した新しいチャンネルとして、J:COM様の特徴や魅力をより深く理解してもらうことができると考えています。これからもご一緒できると嬉しいです。

J:COM鈴木:今回のハロウィーンイベントは私たちにとっての出発点に過ぎません。単発のイベントに留まらず、常設のワールドの構築など、もっと幅広い取り組みを考えています。特にメタバースに慣れ親しんでいない年齢層や初心者が「ざっくぅ」をきっかけに参加したことは大きな収穫でした。このような空間を作ったことで、普段メタバースになじみのない方々を引き込むことができると考えています。

既に作成されているデジタルアセットの二次転用も検討しています。エンタメ領域に限らず、地域や地方自治体との連携も視野に入れています。彼らが抱える課題やニーズを理解し、J:COMとクラスター様が共にこの空間を活用して何か新しいことができればと考えています。

最後に、J:COMさんが考える、スタートアップと共創する意義について教えてください。

J:COMの皆さん

J:COM鈴木:私はタスクフォース(イノベーション推進タスクフォース)に関わると同時に経営企画部門にも所属しており、新しいスタートアップとの協業について考える立場にあります。J:COMは過去に自社で何かを作り、やり遂げることが多かったですが、それが必ずしも迅速に対応できるとは限らないと感じています。特に今の時代の速い変化に追いつくには、自分たちだけでゼロから作るアプローチではスピードが足りないという課題があります。

スタートアップとの協業は、私たち自身が思いつかないようなアイデアや解決策を得る機会として非常に期待しています。外部の新しい意見や視点は重要だと考えています。

一方で、J:COMは約560万の加入世帯を持っており、既存の顧客基盤を活用することもできます。例えば、”ざっくぅ”のファンのような顧客層をターゲットにしたサービスを提供することもできます。このような実験的なプラットフォームをスタートアップに提供し、新しい体験価値をJ:COMのユーザーに提供することで、新しい価値が生まれる可能性があると考えています。スタートアップとの協業には大きな意義があると思っています。

ありがとうございました。

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