世界的なコンサルティング大手 Accenture は、エンタープライズ AI のスタートアップ企業である Cohere と提携し、同社の言語モデルと検索機能を世界中の企業に提供することを発表した。5日に発表されたこの提携は、業界を問わず生産性と効率を大幅に向上させることができる、企業向けにカスタマイズされた生成 AI ソリューションを提供することを目的としている。
Cohere 独自の大規模言語モデル(LLM)「Command」と、先進的なエンタープライズ検索技術「Embed」「Rerank」は、この提携を通じて提供される AI ソリューションの原動力となる。両社は、Accenture の業界に関する深い専門知識とクラウドインフラを活用することで、データのプライバシーとセキュリティを最優先しながら、企業が AI を大規模な業務に統合できるよう支援する計画だ。
Extremely excited to announce our partnership with @Accenture to bring Command, Embed, and Rerank to the over 9000 enterprise clients that rely on Accenture's expertise in implementing AI. Thank you Lan and team for the partnership!https://t.co/sw3scYif25
— Aidan Gomez (@aidangomez) March 5, 2024
企業向け AI ソリューションの早期成功と需要の高まり
Cohere の技術の主な強みの一つは、言語モデルが様々なデータソースからリアルタイムの情報にアクセスし、取り込むことを可能にする RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)機能にある。
この機能は、AI が生成するコンテンツの正確性と適時性を高めると同時に、AI システムが一見もっともらしく見えるが事実とは異なる出力を生成する一般的な問題である幻覚に関する懸念を軽減するのに役立つ。
このパートナーシップはすでに有望な成果をあげており、Cohere のコマンドモデルは、Accenture の財務・会計チームのナレッジエージェントに採用されている。
Cohere の共同設立者兼 CEO Aidan Gomez 氏は、このパートナーシップは Accenture の AI ソリューションに依存している9,000社超の顧客企業に直ちに影響を与えるとツイートで述べている。Cohere の AI システムは、財務データを正確に要約し、差異を検出し、意思決定と業務効率を改善するためにカスタマイズされたアラートを送信することができる。
企業が生成 AI の実験段階を超えるにつれ、スケーラブルでエンタープライズグレードのソリューションに対する需要が急速に高まっている。Accenture の AI への30億米ドルの投資とその広範な顧客ネットワークは、Cohere の革新的なテクノロジーと相まって、この拡大する市場で大きなシェアを獲得するためのパートナーシップを位置づけている。
ビジネス変革のための AI の活用
企業向け AI 市場では、テック大手と革新的なスタートアップが、最先端の生成 AI ソリューションを世界中の企業に提供するためにしのぎを削り、熾烈な戦いが繰り広げられている。
Accenture と Cohere の最近の提携は、コンサルティング会社の業界専門知識と AI スタートアップの高度な言語モデルと検索技術を組み合わせたもので、この激しい競争の少なくとも一部を示している。
しかし、この競争は Accenture と Cohere だけではない。Microsoft 、Google 、IBM はこの分野に積極的に投資し、独自の強みを活かして企業向けの AI ソリューションを開発している。Microsoft の OpenAI との提携や Google の Vertex AI プラットフォームは、大きく前進しているほんの一例に過ぎない。AI スタートアップの盛んなエコシステムは競争をさらに激化させ、それぞれが企業の AI 導入の課題に取り組む革新的なアプローチを提供している。
生成 AI をビジネスに導入する競争が過熱
競争が過熱する中、仕事の未来に与える影響は甚大だ。生成 AI は、事業運営、意思決定、価値創造に革命をもたらす可能性を秘めている。しかし、イノベーションのペースが速いため、労働力の再教育とスキルアップに積極的に取り組む必要がある。企業は、従業員がインテリジェントシステムとともに働き、独自のヒューマンスキルを活用できるようにするためのトレーニングプログラムに投資しなければならない。
世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2023」によると、今後5年間で世界の全雇用の4分の1近く(23%)が変化するという。現在の職務にとどまることを選択した労働者の場合、今後5年間で変化するコアスキルの割合は40%で、全従業員の50%が再スキルアップを必要とする。同様に、世界銀行は、今後15~20年以内に世界の仕事の14%が自動化され、さらに32%の仕事が根本的に変化すると予測している。
AI スタートアップとコンサルティング会社のコラボレーションが増えるにつれ、勝者は AI 導入の軌道を形成し、AI 時代の仕事の本質を再定義することになるだろう。成功には、信頼、安全、そして従業員と顧客双方の幸福を優先する、思慮深く責任あるアプローチが必要となる。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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