アジア越境ファッションEC「60%」がヤマトHDと資本提携、その事業加速と学びの共有

図中左から:ヤマト運輸 イノベーション推進部 マネージャー 森憲司氏、シックスティーパーセント 代表取締役CEO 真部大河氏、ヤマト運輸 イノベーション推進部 アシスタントマネージャー 森山悠華氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

今年2月、アジアブランドの越境ファッションEC「60%」を運営するシックスティーパーセントがシリーズAラウンドで資金調達をしました。数々のVCが参画したこのラウンドで、CVCとして名前を連ねたのがヤマトホールディングスの「KURONEKO Innovation Fund」(運営者:グローバル・ブレイン)です。

2018年7月に創業したシックスティーパーセントは、アジアのストリートブランドを扱うマーケットプレイス型のオンラインセレクトストア「60%」を運営しています。創業から5年で取り扱うブランドの数は1,500以上、日本初上陸のニッチなインディーズものが多く、ユーザの9割は10代〜20代のZ世代が占めるというユニークな環境を作り上げています。
これまで60%から商品を販売するのは日本の消費者がほとんどでしたが、商品を販売することについても、積極的なアジア展開を始めることを明らかにしています。ヤマトホールディングスとシックスティーパーセントは、資本関係を通じて何を始めようとしているのか、両社のキーパーソンにお話を伺いました。

出会ったきっかけを教えてください。

真部:私が2021年4月のプレシリーズAラウンドの調達前に動いていた中、「KURONEKO Innovation Fund」を運用されている、グローバル・ブレインさんからご紹介いただきました。KURONEKO Innovation FundはGPがグローバル・ブレイン、LPがヤマトホールディングスで運営しております。我々の越境ECという事業ドメインでは、初期から物流は非常にコアな部分だと思っていました。そのため初期フェーズから物流の優位性をつくっていきたいという構想をグローバル・ブレインさんにお話ししたところ、ヤマトホールディングスさんが新しい物流やフルフィルメントでイノベーションを起こしていく会社を探していると聞いて、紹介していただきました。

森:アジアでのEC市場は拡大している一方、シックスティーパーセントさんを紹介いただいた頃は、コロナ禍による入国規制でインバウンドの流入が激減していました。このような中、グローバルに事業を行うことができる越境ECという分野に我々も非常に注目していました。そして、真部さんをはじめとするシックスティーパーセントのアパレル業界での知見、感性、ビジネス力に魅力を感じ、様々な意見交換を経て、今日に至ります。実際、物流事業はヤマトグループの主要ビジネスです。シックスティーパーセントさんに最適な物流の構築に向けて 、様々なご支援ができるのではないかと考えました。

シックスティーパーセントが運営する越境EC「60%」

事業連携だけで大企業とスタートアップがシナジーを追求することもできると思いますが、今回資本関係も持つことになったのはなぜですか?

真部:スタートアップがヤマトホールディングスさんのような大企業と一歩踏み込んだ取り組みを行うのは一般的にハードルが高いとされてますが、ファンドからの出資を通じて、ヤマトホールディングスさんの知見やアセットを活用できる可能性があることは非常に魅力的だと思いました。物流は、関税、通関、税法などの専門知識が必要で非常にキャッチアップが大変です。また、我々の場合は越境ECなので日本以外の国においても留意しなければいけない事柄が多いのです。

こういった専門的な知識や過去の事例などを一般的なルートで得ようとすると、かなりの労力と時間とコストがかかりますが、ヤマトホールディングスさんと密に連携することによって、これらの専門的な知識を迂回せず得ることができます。僕らにとって、非常にメリットが大きいと考えました。海外の越境ECプラットフォームでも、グローバルの物流事業者を株主に迎え、共同で物流オペレーションの構築を組んでいる会社もいます。資本関係を持つくらいのウェットな関係値があることで、ヤマトホールディングス側も惜しみなくこれまでの事例や専門的なナレッジを共有しやすいのではないかと考えました。

森:ヤマトホールディングスとしても、事業連携で短期的な取り組みにとどまることなく、中長期的にご一緒することで、両社で新たな価値を創出させていきたいという思いで、出資を決定しました。CVCファンドで検討した際に、シックスティーパーセントは成長可能性の確度が高いという評価も、出資という選択肢を選ばせていただいた理由の一つです。

越境EC「60%」のステータス。1,400以上のブランドを扱う
資料提供:シックスティーパーセント

両社の連携について、シックスティーパーセントとしては、どのような展望をお持ちですか?

真部:AmazonやZOZOTOWNといったEC業界のトップ企業も物流に最も多くの投資をしているということは周知の事実だと思います。ユーザーが注文してから商品を受け取るまでの体験はその後のリテンションやLTVにもつながりますし、スケールメリットを効かせることで利益率も高くなります。こうして生まれた利益を再び投資に回すことで複利的に優位性が増して行くというサイクルを生み出しています。これはファッションに限らず、EC全般で言えることです。

我々の中では越境での物流にどのようにスケールメリットを作っていくのかを考えているので、ヤマトホールディングスさんと二人三脚で、倉庫のオペレーションから始まりラストマイルまで、満足度の高い配送体験を追求していきたいと思っています。また、出店しているアジアの各ブランドに対しても、グローバルへの安定した配送手段を提供することで、アジアのブランドと世界中のお客さまとの接点を作る上でのハードルを下げていきたいと思っています。

ヤマトホールディングスとしては、どのような展望をお持ちですか?

森:物流だけでなく、様々なサポートをしていく中で、シックスティーパーセントさんがターゲットにしているZ世代のEC市場の変化や、グローバル視点など 、多くの学びや知見を得ることができています。今後も、Win-Winの関係で進めていきたいと思っています。

森山:物流業界は、まだまだDXの余地があります。革新的な技術やビジネスを保有するパートナーへ、ヤマトホールディングスが持つ経営資源を提供し、共に成長していきたいと思っています。中長期的にその役割を担うのがCVCだと考えています。今後もCVCを通じて、様々なパートナーと一緒に成長していきたいと思います。

興味深いお話をありがとうございました。

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