住友不動産、飯田橋に「GROWTH」を開設——文京区と協定、東大IPCらと連携し大学発スタートアップら21社入居へ

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左から:住友不動産常務執行役員 ビル事業本部副本部長の橋爪弘幸氏、文京区長の成澤廣修氏
Image credit: Masaru Ikeda

住友不動産は3日、飯田橋に新施設「GROWTH 文京飯田橋」を開設し、文京区と多様な人材・スタートアップ・ベンチャーキャピタルなどの交流促進に向けた連携協定を締結した。この施設は、現在全国に12拠点ある GROWTH の中でも、産学官連携に注力しディープテック分野のスタートアップの集積拠点として位置づけられている。

実際に、GROWTH 文京飯田橋には、東京大学、早稲田大学、東京理科大学などから21社が入居する予定で、そのうち16社がディープテック——ライフサイエンス、AI、ロボティクスなど先端技術を活用したスタートアップとなる見込みだ。しかし、ディープテック分野のスタートアップ企業が抱える課題は小さくない。

住友不動産ビル事業本部グロースサポート事業部部長の藤島正織氏は次のように述べた。

飯田橋周辺には50を超える大学が点在しており、研究の成果をビジネスにつなげるには最適な環境が整っている。しかし、ディープテックスタートアップは研究と実用ビジネスとの距離、製品の量産化に向けた十分な資金の確保、グローバル展開に向けたネットワークの不足など、多くの壁に直面する。

左から:住友不動産ビル事業本部グロースサポート事業部部長の藤島正織氏、住友不動産常務執行役員 ビル事業本部副本部長の橋爪弘幸氏、文京区長の成澤廣修氏、文京区区民部経済課長の内宮純一氏
Image credit: Masaru Ikeda

住友不動産は、大企業やベンチャーキャピタル、大学などと連携して確立したオープンイノベーションコミュニティ「Growth Connect(グロースコネクト)」を活用し、スタートアップに対して、交流の場を提供、企業同士の出会いとマッチングの機会の創出、住友不動産が保有する不動産やインフラなどの実証の場の提供、販路開拓や資金調達の支援などを行う。

住友不動産常務執行役員 ビル事業本部副本部長の橋爪弘幸氏は次のように述べた。

当社も遅ればせながら、昨年からスタートアップ支援の取り組みを本格化させてきた。この施設を起点に、入居企業の優れた製品やサービスが広く社会に浸透し、雇用創出、欲を言えば、賃料収入の柱ともなっていくことを目指したい。ただし、これらを実現するには一企業の力だけでは限界がある。

Image credit: Masaru Ikeda

住友不動産はこの拠点の運営にあたって、東京大学協創プラットフォーム(東大 IPC)、早稲田大学、東京理科大学インベストメント・マネジメント(TUSIMCo)らと協力する。特に東大 IPC に関しては、昨年10月に東大前に開設した拠点に続き、2つ目となる大学関連スタートアップコミュニティ拠点「1stRound BASE」を GROWTH 文京飯田橋内に設置する。

祝賀イベントの後半には、近隣に本社を構え、ディープテックスタートアップの創出や育成に造詣の深いリバネス代表取締役の丸幸弘氏をモデレータに招き、パネルディスカッションが行われた。エイターリンク代表取締役 CEO 岩佐凌氏、Global Vascular 代表取締役 CEO 尾藤健太氏、東京理科大学インベストメント・マネジメント(TUSIM)代表取締役社⻑の片寄裕市氏が登壇した。

登壇者からは、技術をビジネスに結びつける人材の確保が大きな難題とされた。技術を理解し、かつ事業化までをリードできる人材は少なく、大学での育成が求められている。また、ディープテックの場合、製品化までに長期間を要するため、ベンチャーキャピタルの通常の投資期間(一般的に10年が多い)と折り合いがつけにくいという指摘もあった。

左から:リバネス代表取締役の丸幸弘氏、エイターリンク代表取締役 CEO 岩佐凌氏、Global Vascular 代表取締役 CEO 尾藤健太氏、東京理科大学インベストメント・マネジメント(TUSIM)代表取締役社⻑の片寄裕市氏
Image credit: Masaru Ikeda

さらに、大学発ベンチャーへの支援体制の強化が不可欠とされた。TUSIM の片寄氏は、インキュベーション施設の整備や、ベンチャーキャピタルによる事業化支援など、エコシステムの構築に取り組んでいることを強調した。ディープテックは海外展開が必須になることから、スタートアップと現地企業などとの連携を支援する現地コミュニティの必要性なども指摘された。

前述したように、GROWTH 文京飯田橋は、スタートアップの実証の場としての機能も提供される。パネルディスカッションに登壇した岩佐氏のエイターリンクは、この施設でワイヤレス給電技術を使った空調最適化ソリューションを導入するほか、特殊冷凍技術のデイブレイクは食品の実証実験店舗、Spacewasp は植物ゴミを使った什器を設置しユーザに利用してもらう。

住友不動産は今年4月、京都・四条河原町に GROWTH を開設している

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