私は以前、ある不動産テックの web サイトで働いていたが、しばらくの間、仕事中に考えていたのは主に「プロップテック」、つまり不動産と新技術の融合についてだった。

EliseAI の創業者たちも、過去7年間の大半をそれに費やしてきた。彼らは（生成 AI ブームの前から）静かに AI システムを設計し、賃貸不動産所有者や管理者が自律型チャットボットや音声ボットを使用して、入居者とのコミュニケーションや対応を改善できるようにしてきたのである。

EliseAI の共同創業者兼 CEO Minna Song 氏は、数日前に VentureBeat とのビデオ会議インタビューに応じ、「当社の AI アシスタントは、国内トップ50の賃貸住宅運営者およびオーナーの70％が利用している」と述べた。

これは、アメリカのマルチファミリーアパートユニット（複数世帯物件）の約12分の1に相当する。

EliseAI を信じているのは、大手の不動産オーナーやマネージャーの顧客だけではない。同社は14日、Sapphire Ventures がリードした7,500万米ドルのシリーズ D ラウンドを発表し、10億米ドル以上の評価額を獲得し、ビッグアップルの最新ユニコーンとしての地位を確立した。

2017年に Song 氏と CTO の Tony Stoyanov 氏によって設立された EliseAI は、最近、AI をヘルスケアコミュニケーションにも拡大し、患者からの電話を受け、医師や医療サービス提供者に代わって予約をスケジュールできるボイスボットとしてモデルをトレーニングしている。

技術と成長

EliseAI の成長軌道は驚異的なものだった。昨年のシリーズ C ラウンド以降、同社の年間経常収益（ARR）は2.5倍以上増加した。

当社が行っているのは、アメリカ全土の住宅運営者向けにコミュニケーションと日常業務を自動化する AI アシスタントを販売することです。当社の AI は、全てのコミュニケーションチャネルにわたって、入居者とのコミュニケーションの約90％を自動化しています。（Song 氏）

OpenAI などの主要独自モデルやカスタム AI モデルで構築された EliseAI のプラットフォームは、不動産管理のための包括的なツールスイートを提供している。

• LeasingAI …… 見込み客を24時間年中無休で管理し、90％の作業自動化で賃貸契約の成約率を125％以上向上。
• ResidentAI …… 入居者とのコミュニケーションを処理し、エンゲージメントを40％向上させ、延滞を50％削減。
• EliseCRM …… 見込み客と入居者情報の中央ハブとして機能する無料の高度な CRM システム。

EliseAI を際立たせているのは、電子メール、SMS、ウェブチャット、音声を通じて AI インタラクションを提供するマルチモーダルアプローチであり、特にユニークな機能「VoiceAI」に重点を置いている。

これは単なるクールな技術ではない。EliseAI のアシスタントが提供する効率性と低いオーバーヘッド（つまり、より少ない人間の従業員と、従業員の変更時の離職や機関知識の損失）は、実際に顧客のコスト削減につながる。

平均して、当社の顧客は延滞支払いを50％削減しているため、実際により多くのお金を回収でき、それによって期限通りに住宅ローンを支払うなどのことができるようになります。（Song 氏）

ヘルスケアへの拡大

2023年、EliseAI は住宅分野での成功を活かしてヘルスケア部門に参入した。

同社の製品「HealthAI」は、患者との会話、予約スケジュール、請求書発行などの非臨床タスクを自動化する。

医師には非常に特定の予約構造があり、予約枠を埋められないことで多くのお金を失っています。また、人々は頻繁に予約変更やキャンセルをします。医師にとって最も効率的であるため、誰かのスケジュールが全て埋まっていることを確認したいのです。（Song 氏）

HealthAI は完全に HIPAA（医療保険の携行性と責任に関するアメリカ法律。電子化した医療情報に関するプライバシー保護・セキュリティ確保について定めている。）に準拠しており、不動産向け製品と同じ SOC 2 セキュリティコンプライアンスを誇るが、「電子医療記録システムに接続されている」と Song は述べている。

このシステムは、患者からの問い合わせの95％を処理する印象的な対応率を誇り、待ち時間なしで24時間年中無休で運用されている。

資金の用途と将来の計画

今回調達した新たな資金は、EliseAI のチーム拡大、製品革新の推進、業界パートナーシップの強化に使用される。同社は現在、ニューヨーク市の本社に130人以上を雇用しており、様々な部門で積極的に採用を行っている。

Sapphire Ventures のパートナーで EliseAI の新たな取締役会メンバーとなった Cathy Gao 氏は、このパートナーシップについて次のように熱意を示した。

EliseAI のマルチモーダル AI プラットフォームは、住宅業界の顧客インタラクションを革新し、目的に特化した AI が業界規制に高い精度とコンプライアンスを持って明確で測定可能な結果をどのように提供できるかの基準を設定したと我々は考えています。

次のフェーズ

規模を持って運営されている数少ない垂直特化型 AI 企業の1つとして、EliseAI は住宅およびヘルスケア業界の両方で AI ソリューションへの需要の高まりを活用する上で有利な立場にある。新たなユニコーンの地位と実質的な資金調達により、同社は今後数年間で継続的な成長と革新を遂げる態勢を整えている。

EliseAI の成功は、AI が従来の産業を変革し、効率性とサービス品質を向上させながら重要な運用上の課題に対処する可能性を強調している。同社がリーチと能力を拡大し続ける中で、AI の力を通じて住宅とヘルスケアの運営の未来をどのように形作るかを見守ることは興味深いだろう。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

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