AI・モビリティ・環境テックが躍進、累積調達額100億円超えも複数——国内スタートアップ資金調達振り返り(8月5~11日)

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<15日午後3時更新> タイトル中「100億円超えの大型調達も複数」を「累積調達額100億円超えも複数」に訂正。文中赤字部を挿入、訂正線部を削除。

8月5日から11日の1週間を振り返ってみよう。この週は、特に環境技術や AI 関連企業への投資が目立ち、シリーズ A から C まで、さまざまなステージの企業が資金を超達した。総額累積調達額100億円を超える大型調達も複数見られた。

トレンド分析

この週は、環境テックスタートアップへの投資が顕著だった。CO₂排出量管理のアスエネや衛星データを活用した農業支援のサグリなどが大型の資金調達に成功した。また、AI を活用したサービスを提供する企業も投資家から注目を集め、会話 AI エージェント開発のエキュメノポリスや AI 技術を活用した与信評価サービスを提供するエメラダなどが資金を獲得した。

さらに、モビリティ関連企業への投資も活発であり、オンライン駐車場サービスのニーリーや EV 充電ステーションを展開するプラゴなどが資金調達を実施している。これらの傾向は、環境問題への取り組みやデジタル化の推進、モビリティ革命といった社会的なトレンドを反映していると言える。

また、調達額の面では、100億円を超える大型調達が複数見られた。アスエネの累積調達額101億円、ニーリーの累積調達額102億円など、成長期にある企業が大型の資金調達に成功している。これは、投資家がこれらの企業の成長性と市場ポテンシャルを高く評価していることを示している。

環境テックスタートアップの躍進

Image credit: Asuene

CO₂排出量管理のアスエネは、シリーズ C ラウンドの2nd クローズで約8億円を調達し、累積調達額は101億円に達した。この資金調達には、脱炭素化支援機構(JICN)や日本生命保険、JERA などが参加しており、ESG 投資への関心の高まりを反映している。アスエネは調達した資金を活用し、サステナブルファイナンスとの連携強化や脱炭素領域での新たな取り組みを進める方針だ。

衛星データを活用した農業支援プラットフォームを提供するサグリも、シリーズ A ラウンドで約10億円を調達した。サグリの技術は、農業生産基盤の確立や脱炭素化を推進し、持続可能な農業生産への転換を実現することが期待されている。同社は調達した資金を活用し、脱炭素事業などの新たなプロダクト開発や組織体制の強化を図る予定だ。

さらに、EV 充電ステーションを展開するプラゴもプレシリーズ A ラウンドで資金調達を実施し、累積調達額は20億円を超えた。プラゴはこの資金を活用し、充電ステーションの開発や充電体験の向上に向けた取り組みを加速させる方針だ。

これらの企業への投資は、環境問題への取り組みがビジネスとしても注目されていることを示している。投資家は、これらの企業が提供する技術やサービスが今後の社会に不可欠であると認識しており、その成長性に期待を寄せていると言える。環境技術関連企業の躍進は、社会全体の持続可能性向上にも貢献することが期待される。

AI ・テクノロジー企業への投資拡大

Image credit: Ecumenopolis

AI ・テクノロジー企業への投資も拡大している。会話 AI エージェント開発を手がけるエキュメノポリスは、プレシリーズ A ラウンドの1st クローズで資金調達を実施した。同社が開発する言語学習支援サービス「LANGX」は、教育機関や企業において英会話学習の補助教材として広く利用されている。今回の資金調達により、LANGX 事業の成長加速や研究開発体制の強化を図る方針だ。

金融機関向けのソリューションを提供するエメラダも、ジャフコグループから資金調達し、シードラウンド以降の累積調達額は約19億円に達した。エメラダは、AI 技術を活用した与信評価サービスや、BaaS(Banking as a Service)を促進するクラウドサービスなど、多岐にわたる金融サービスを展開している。今後は、金融機関との提携をさらに深掘りし、新たな金融体験を創造するために資金を活用する計画だ。

さらに、荷主向けサプライチェーン DX ツール「ニューイット」を開発・提供する knewit も、プレシリーズ A ラウンドで資金調達を実施した。knewit は調達した資金を活用し、サプライチェーンの効率化に寄与する AI の開発を進める方針だ。

これらの企業への投資は、AI やデジタル技術が様々な産業に浸透し、業務効率化や新たな価値創造に貢献していることを示している。投資家は、これらの企業が提供する技術やサービスが今後の産業のデジタル化において重要な役割を果たすと考えており、その成長性に期待を寄せていると言えるだろう。

モビリティ関連企業の資金調達

Image credit: Nealle

モビリティ関連企業の資金調達も注目を集めている。オンライン駐車場サービス「Park Direct」を運営するニーリーは、シリーズ B ラウンドで45.7億円を調達し、累積調達額は102億円に達した。ニーリーは調達した資金を人材採用、プロダクト開発、マーケティングの強化に投資し、さらなる成長を目指す。また、EV 関連の新規事業開発にも注力する方針だ。

EV 充電ステーションを展開するプラゴも、プレシリーズ A ラウンドで資金調達を実施し、累積調達額は20億円を超えた。プラゴは、商業施設などユーザの生活動線上に充電ステーションを設置する「場所の充実」、充電体験をシームレスにするアプリ「My プラゴ」による「体験の充実」、身近なサービスを通じた充電利用を可能にする「接点の充実」に取り組んでいる。

これらの企業への投資は、モビリティ産業が大きな転換期を迎えていることを示している。EV の普及や自動運転技術の発展、シェアリングエコノミーの台頭などにより、モビリティのあり方が大きく変化している中、モビリティ関連企業の躍進は、日本の交通インフラの高度化や環境負荷の低減にも貢献することが期待される。

コンテンツ・エンターテインメント分野の動向

Image credit: COMICSMART

マンガアプリ「GANMA!」を運営するコミックスマートは、シリーズ A ラウンドで28億円を調達した。コミックスマートは、インターネット発の優れたマンガ作品づくりやヒット IP の創出を目指し、マンガ家の育成・支援およびマンガ配信サービスの充実に取り組んでいる。

配信者支援サービス「ライドリ」を運営する Blankr も、シードラウンドで1.5億円を調達した。ライドリは、推しとなるクリエイターが自分の大好きなことに没頭できるよう支援し、クリエイターとファンが共感できる仲間を作り、新しい挑戦ができる機会を提供するサービスだ。

さらに、サウナ付きトレーラーハウス「Earthboat」を展開するアースボートは、直近のラウンドで2.5億円を調達した。アースボートは、自然の中で快適に過ごすことを目的としたトレーラーハウス型の宿泊施設を提供しており、新しい形のアウトドアレジャーを提案している。

これらの企業への投資は、デジタル技術の発展により、コンテンツ・エンターテインメント産業が大きく変化していることを示している。マンガやアニメなどのデジタルコンテンツ配信、クリエイターエコノミーの拡大、新しい形態の宿泊施設など、従来のエンターテインメントの枠を超えた新しいサービスが生まれている。

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