〝感謝〟のトークン化から再生林業への応用まで、「Solana」日本コミュニティのインキュベータから生まれた10プロジェクト

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Image credit: Masaru Ikeda

Superteam は、Solana Foundation から 各国の代表者が助成金を受けて、自国の Solana エコシステムの成長を促進するためのコミュニティだ。Superteam Japan は、起業家育成プログラム「dotHAX Incubation」を展開している。これは、9月2日から10月8日まで開催される Solana のグローバルハッカソン「Radar Hackathon」に向け、1カ月間の支援を提供するものだ。

dotHAX Incubation では、「参加者が Solana エコシステムと早期に接点を持ち、投資機会や人脈を構築すること」と「参加チームが資金調達や人材獲得、ネットワーキングの機会を得ること」を目的としている。参加した10チームは、プログラム最終日の23日に都内で開催されたデモデイでプロジェクトを披露しメンターからアドバイスを得た。

以下、披露されたプロジェクトの内容を見てみよう。各プロジェクトは、Gaming Track、Consumer Apps、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)、Crypto Infrastructure の4つのトラックに分けてピッチした。BRIDGE では紹介したサービスに可能な限りサービス提供サイトのリンクを貼るようにしているが、本稿においては開発中のものが多いため、その限りではない。

【Gaming Track】Hash Monsters by Team Mint(Kyuzan)

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Hash Monsters は、ブロックチェーンの公開性と公平性に基づいたメタゲームを目指すプロジェクトである。トランザクションハッシュを活用してモンスターを生成し、ユーザはこれらのモンスターを収集・育成・対戦させることができる。既存の NFT ゲームの課題である事前配布の低いランダム性や、ゲームプレイ前の手間を解決することを目指している。チームは、チェーン上のすべての活動を利用できるゲームという独自のコンセプトを掲げ、Solana の低いガス代と高速処理を活かしたゲームデザインを提案した。

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さらに、Hash Monsters は従来の NFT ゲームとは異なり、ゲーム内でのアクティビティが多いほどプレイヤーに有利になるような Proof of Work 的なシステムを導入している。これにより、単なる投機的な要素だけでなく、実際のゲームプレイが重要となる設計となっている。また、IP との連携を視野に入れており、将来的には他の NFT プロジェクトとの相互運用性も検討している。

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【Consumer Apps】トークンベースクラウドファンディング by Boooost

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Boooost は、アイデアだけでトークンベースのクラウドファンディングを可能にするプラットフォームである。従来のクラウドファンディングの課題である起案者の負担や、バッカーの不安を解決することを目指している。ウォレット接続のみで簡単に参加でき、ボンディングカーブメカニズムを採用することで、購入者が増えるとトークン価値が上昇する仕組みを実装している。また、KOL(Key Opinion Leader)を通じたマーケティングサポートも特徴の一つである。

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Boooost の興味深い点は、資金調達が成功した場合、過剰に集まった資金が DEX に流動性として追加され、その時点でトークンがリリースされる点だ。プロジェクトの成功に応じて、投資家にも利益が還元される仕組みとなっている。さらに、デジタルコンテンツマーケットプレイスを備えており、ユーザはトークンを使って商品やデジタルコンテンツを購入することができる。この統合されたエコシステムにより、プロジェクトの資金調達から商品化、そして収益化までの一連のプロセスをシームレスに実現している。

【Consumer Apps】AI Coding DApps with Web3 by Crypto Learning Club

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Crypto Learning Club は、AI を活用したソフトウェア開発プラットフォームを提案した。ソフトウェア開発市場の急成長に伴う課題、特に人件費の高騰や開発期間の長期化、メンテナンスの困難さに着目している。AI を中心とした算数を導入することで、アプリケーション仕様からデプロイまでを一気に行える仕組みを目指している。また、Solana のマイクロペイメント機能を活用し、1ファイル1米ドルという価格破壊的なモデルを提案した。

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このプラットフォームの特徴は、生成 AI と事前に用意されたテンプレートを組み合わせることで、高品質なコードを生成できる点にある。通常の AI だけでは難しいデータベースアクセスやデータ加工、フロントエンドへの返信などの複雑な処理も適切に実装できるようになっている。さらに、このプラットフォームは単なるコード生成ツールではなく、ソフトウェア開発の全プロセスをカバーしており、データベース設計から API 開発、ユニットテスト作成、コードレビュー、デプロイまでを一貫して支援する。

【DePIN】Thanklet by dotHAX

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Thanklet は「感謝」をトークン化し、循環させ、スコア化するプロジェクトである。特に、ホスピタリティ産業などで重要視される「おもてなし」の可視化と評価を目指している。ユースケースとして保育園での活用例を挙げ、保護者と保育士間での感謝のやりとりをトークン化することで、双方の努力を可視化し評価する仕組みを提案した。プライバシー保護のためにゼロ知識証明技術を活用し、多層的な展開を通じて大規模なスケーラビリティを目指している。

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Thanklet の興味深い点は、これまで可視化や測定が困難だった「ホスピタリティ」という無形の価値を、ブロックチェーン技術を用いて定量化し、評価可能にする点にある。サービス業や教育現場など、人と人とのインタラクションが重要な分野での公平な評価システムの構築が期待できる。また、Thanklet は単なる評価システムにとどまらず、トークン化された「感謝」を実際の経済価値と連携させることで、より良いサービスや対応を行った個人や組織に対して具体的な報酬を提供することも視野に入れている。

【Gaming Track】KOIKOI by Ayame(Murasaki)

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KOIKOI は、現金以外にポイントやトークンも使用できるスポーツベッティングサービスである。法的規制のある国でも気軽に楽しめる点や、低手数料で個人が投資家になれる機能を特徴としている。ユーザ生成型のベッティングプラットフォームとして、誰でも自分のブックを作成し、友人を招待できる仕組みを提供している。また、プールごとにオッズが透明に決定される公平性や、2.5%という低いプラットフォームマージンも特徴として挙げている。

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KOIKOI で興味深いのは、従来の中央集権型ベッティングプラットフォームの問題点を解決している点にある。例えば、ハウスによるオッズの操作を防ぐため、ベッティングプールを作成し、参加者によってオッズが透明に決定される仕組みを採用している。さらに、アフィリエイト機能を導入し、ベッティングセッションのホストに1%のフィーを還元することで、ストリーマーやインフルエンサーがコミュニティを巻き込むインセンティブを創出している。

【Gaming Track】自律型 IP エコシステム by Scanner

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Scanner は、IP ホルダーが独自のゲーム DApps を作成し、IP(知的所有権)活用を最大化するエコシステムを提案した。小規模な IP クリエイターがメディアミックス戦略を展開する際の障壁に着目し、Web3の知識やゲーム開発のナレッジがなくても簡単にゲームを作成・リリースできるプラットフォームを目指している。チームはバーコードスキャンゲームの知見を活かし、段階的にプラットフォームを拡大する計画を示した。

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このプロジェクトの独自性は、従来のゲーム開発や IP 活用の課題を包括的に解決しようとしている点にある。また、プラットフォーム上で複数の IP が連携できる仕組みを構想しており、IP 間のコラボレーションや新たなファン層開拓のハードルを下げることが期待できる。また、ブロックチェーン技術を活用することで、IP の権利管理や収益分配の透明性も確保しようとしている点も注目に値する。

【Consumer Apps】クリエイター向け低手数料販売促進支援プラットフォーム by shdwShop

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shdwShop は、主にセミプロのクリエイター向けに、「Shadow Drive」や「Blinks」などの Web3の特徴を活かした低手数料で簡単に宣伝できるプラットフォームを開発している。既存のプラットフォームの高い手数料やプライバシー保護の問題、著作権保護の課題に着目し、これらを Web3技術で解決することを目指している。特に、セミプロクリエイターをターゲットとし、SNS での固定ファンを持つクリエイターがすぐに移行できるような仕組みを提案した。shdwShop で興味深いのは、Solana のテクノロジーを活用して、従来のプラットフォームよりも大幅に低いコストでコンテンツを提供できる点にある。

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例えば、Shadow Drive を使用することで、年間1GBあたり5セントという非常に低コストでコンテンツを保存できる。また、決済コストも1円以下に抑えられるため、クリエイターの収益率を大幅に向上させることができる。さらに、Blinks を活用することで、SNS などでの宣伝も容易になり、クリエイターは自身のファンベースを活用しつつ、新たな顧客層の開拓も行えるようになっている。プライバシー保護の面では、ウォレットアドレスと Twitter アカウント以外の個人情報を必要としない設計となっており、クリエイターとファンの双方のプライバシーを守りつつ、効果的な交流を可能にしている。

【DePIN】再生林業における Solana を活用したリアルワールドエコシステム by SOuL

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SOuL は、Solana を活用した再生林業のリアルワールドエコシステムを提案した。具体的な詳細は発表内容からは明確ではないが、森林火災や洪水などの問題に対処し、データ収集や分析にブロックチェーン技術を活用する構想を持っているようだ。AI と組み合わせることで、より効率的な森林管理や災害対策を目指しているようだ。SOuL で興味深いのは、従来の林業や環境保護活動にブロックチェーン技術を導入することで、透明性と効率性を高めようとしている点にある。

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例えば、森林の状態や気候データをリアルタイムで記録し、それをブロックチェーン上に保存することで、データの改ざんを防ぎつつ、誰もが検証可能な形で情報を共有できるようになる。また、トークン経済を導入することで、森林保護や再生活動に参加する個人や組織にインセンティブを提供し、持続可能な環境保護活動のエコシステムを構築しようとしている。さらに、AIを活用することで、収集されたデータから森林火災のリスク予測や最適な植林計画の策定など、より高度な森林管理を可能にすることを目指す。

【Gaming Track】Windfall by Windfall

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Windfall は、Solana のステーキング報酬を活用した新しいカジノゲームプラットフォームである。ユーザがデポジットした Solana は自動的にDeFiで運用され、その運用益がゲームの結果に応じてプレイヤーに再分配されるため、ユーザは元本を失うリスクなく、ゲーム体験を通じて潜在的な報酬を得ることができる。

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ゲームの基本的な流れは、獲得したポイントでランキングを競い、シーズンごとにプライズを獲得するというものだ。「ノーリスク・ハイリターン」というコンセプトが特徴で、既存の収益型ゲームとは異なるポジションを目指している。将来的には、ステーキングのリワードベースシステムを基盤として、アプリケーションと DeFi をつなぐ架け橋的な存在になることを目指している。

【Crypto Infrastructure】バリデーターのトランザクション処理帯域に関する自動入札プロトコル by solpipe

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solpipe は、バリデーターのトランザクション処理帯域に関する自動入札プロトコルを開発するプロジェクトを開発している。従来の手動による取引の非効率性を解決するため、自動化ツールを提供し、セットアップ時間を30分程度に短縮する。また、24時間単位など、より長期的な時間枠での取引が可能となる。

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システムは、バリデーター(売り手)、入札者(買い手)、solpipe が提供するリレーとプロキシ、自動売買ボットから構成される。価格設定は動的オークションによって決定される。ロードマップは3フェーズあり、バリデーター市場からスタートし、最終的にはサーバーレンディング市場の立ち上げを目指している。現在は DevNet でのユニットテストを完了し、一部のバリデーターとの対話も始めている段階だ。

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