「エシカル消費」で拡大なるか?欧州ライブコマースの新トレンド/GB Tech Trend

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1,800万ドルの調達を発表した「Tilt」
Image Credit: Tilt

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

今週の注目テックトレンド

GB Tech Trendでは世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

過熱する市場に、新星が登場

かねてから注目される欧米ライブコマース市場。中国ではTikTokを筆頭にライブ動画配信を通じたショッピング市場が急成長しており、このトレンドを欧米圏へ持ち込もうと、AmazonやWallmartなどの大手からスタートアップに至るまで、さまざまな企業がライブコマース市場へ参入してきました。

今回紹介する「Tilt」はイギリスを拠点に、古着を扱うライブコマースアプリとして1,800万ドルの資金調達を発表しました。まだ中国ほどの爆発的な成長を見せていない、欧米ライブコマース市場においてTiltが目をつけたのがZ世代が持つ古着カルチャーです。

「エシカル」の波が追い風に

ヨーロッパではZ世代を中心に古着を積極的に取り入れるエシカル消費のマインドが強くあります。ファストファッションを支持し、洋服を大量生産をしていた世代に対するカウンターカルチャーとしてのエシカルな姿勢が受け入れられているのです。それを象徴するように、古着マーケットプレイス「Depop」は3,500万ユーザーを獲得するほどに成長しています。

Depopではセンスの良い古着を集め、自分ならではの世界観を表現するキュレーターが多く登録しています。月に1万ドルを売り上げるユーザーも登場しており、起業家精神溢れる古着クリエイターコミュニティによって、Depopは世界的なアプリとなりました。

Tiltが市場機会と捉えるのは、まさにDepopと同じユーザー層です。エシカルブームを追い風に台頭する古着キュレーターの活躍の場を「ライブ配信」へと拡張させています。配信中に景品を出品する機能を実装して視聴時間を伸ばす施策など、ライブ配信ならではのグロースハックを繰り返しながら、「ライブ配信版Depop」のポジション確立を目指しているのがTiltです。

a16zも期待するライブコマースの未来

Tiltが成長するための鍵は、著名VCのAndreessen Horowitz(a16z)が提唱する、ライブコマース市場の未来を切り拓くコンセプトにあります。a16zは、魅力的な取引の場である「コマース」、誰にも引けを取らないユニークな「コンテンツ」、楽しみながら視聴する「エンターテイメント」、の3つを踏まえているサービスのジャンルを「ショップテインメント/Shoptainment」と提唱。出品者の人となりを聞けたり、実物に近い商品体験が購買率を高めると述べています。

このコンセプトをTiltに置き換えると、エシカルブームや古着にテーマを絞った「コマース」、古着をキュレートして独特のコレクション観を発信するユーザーが持つ「コンテンツ」、そしてDepopにはない直接ユーザーと対話してコミュニケーションを深められる「エンターテイメント」の3つを満たしています。

アメリカでは、a16zが出資した「Whatnot」や、中国のコマースアプリ体験を米国へ持ち込んだ「TalkShopLive」などのスタートアップが登場しています。いずれもショップテインメントの文脈に沿っていますが、Tiltとの違いは「古着」のような特定の分野に絞らずにライブコマースを楽しめるプラットフォーム型のアプローチを採用している点にあります。幅広い市場、そしてユーザー層をいち早く獲得できる優位性を持っていると言えるでしょう。

古着市場では「Poshmark」や「Threads」などのスタートアップの成功事例もあることから、Tiltの狙うエシカル/古着マーケットにはまだまだ期待ができそうです。イギリスから爆発的に広まり、Z世代に受け入れられた「Depop」のようなテーマ特化型のアプローチのTiltが、欧米のライブコマース市場待望の成功事例となるか、注目が集まります。

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