アプリ経済—好調なアプリ業界の背後にあるもう一つの物語

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【翻訳 by Conyac】 【原文】

アプリに潰されるウェブ

2010年8月、Wired誌の編集長クリス・アンダーソン氏は、ウェブが衰退するという、議論の余地はあるが考え深い記事を共同執筆している。iPhoneや Androidなどのモバイルコンピューティングが台頭したことが根本的な変化をもたらし、ウェブに似ているが新しく、さらにシンプルでシャレたサービス—つまり、アプリが広く普及していくから、というのがその大きな理由なのだそうだ。同氏にしてみれば、広く普及するアプリが最終的にはインターネットをするためにウェブにアクセスするという必要性を削ぐということらしい。様々なモバイル機器にダウンロードされた異なる一連のアプリのおかげで、ウェブにアクセスしなくても一日中インターネットをすることができるのだ。

その良い例はこうだ。朝起きるとすぐにiPhoneやAndroid携帯で数多くのメールをチェックする。出勤途中では、ウォールストリートジャーナルやエコノミストをしばらく読んで、その後、Sina Weibo(新浪微博)やFacebookをチェックするなど、複数のもちろん「アプリ」を行ったり来たりする。読者が納得してくれるまで例を挙げ続けることもできるが、総括するなら、ウェブが提供していたのと同じレベルで、テクノロジーやインターネット、そして現実の社会と触れ合うことのできるアプリに既に私達は囲まれているのだ。

2008年7月にオープンした Apple App Store は、現在では様々なiOS機器向けに425,000種類、iPad専用には100,000種類のアプリを提供しており、この7月時点でのダウンロード数は150億回を超えている。Android Market はGoogleが企画推進した後発市場で、最新の調査によると、この11月に37万種類のアプリでダウンロード数が70億回に達している。Samsungでさえも、世界初のHDTVベースのアプリストア「Samsung Apps」の登録アプリが1000種類を超え、ダウンロード数1000万回を記録したことを10月初旬に発表し、同社のSmartTVのグローバルなエコシステムの構築が順調に進んでいることを示した。iPhone、Android、iPad、SmartTVなど、アプリがどんな機器で利用されようとその人気は急速に上昇しており、これまで見たこともないような形で世界を変えている。

我々が人や世界とつながる手段として、アプリがものすごい勢いで普及し大きな変化がもたらされている中、Apple 社と彼らのiデバイス (iPod Touch、iPhone、iPad)そしてGoogleのAndroidモバイルOSが新たな世界を作り出しており、その中でアプリはモバイルコンピューティングの未来図を描いている。未来図の背後には、アプリのエコシステム、つまり、Android や iOS プラットフォーム、モバイルベンダー、オペレータ、アプリ・デベロッパーが存在する。

モバイルのメーカーととオペレーターは、その大きな未来図に貢献することで大儲けをしている。HTCは、かつてはOEM業者だったが、2008年に最初のAndroid携帯を発売した後2年以上をかけ、Android携帯の市場リーダーへとうまく変貌した。一方、MOTOは2009年にAndroid携帯を発売して以来方向転換をした。オペレーターも、モバイル接続によって生まれたデータプランから大きな収益を得ている。

収益のジレンマ

では、アプリのデベロッパーはどうなのか? 文字通り、彼らはこれらすべてのアプリを制作し完成させるデベロッパーのことだ。従来の考えでは、アプリのデベロッパーには主に2種類の収益ソースがあった。それはアプリを有料にするか、もしくはアプリを無料にして広告をつけるかだ。

後に発表されたあるレポートによれば、中国の市場状態や消費者動向を考えれば、ユーザに利用料を請求するのは非常に難しい。このことは、Android向けフリーミアムビデオプレーヤーのスタートアップ1社の顕著な販売実績によって、その落とし穴が証明されている。その企業の広告を含む無料版のダウンロード数は300万回を超えているのだが、広告のないバージョンにお金を払うユーザーは5%にも満たない。

そういう理由から、大多数のAndroid向けアプリデベロッパーや、さらにはiOS向けデベロッパー数社も、モバイル広告プラットフォームやモバイル広告に頼っているのだ。

マーケット調査会社のiResearchとモバイル広告のオプティマイザーGuohe Ad(果合)による共同の調査報告によれば、現在3つの異なるタイプの中国語のモバイル広告プラットフォームがある。

1つめは、独自のアプリストアを持つオペレーターやモバイルベンダーによるアプリストア内の広告プラットフォームで、 Admob(Google)iAd(Apple)189Workds/Ad(中国電信)などがある。2つめはモバイル広告プラットフォームで、 mobisageVponSmartMAD(億動智道)Adwo(安沃伝媒)domob(多盟)らがこのグループの代表格だ。3つめのグループは、AdwhirlmobClixGuohe Ad(果合)など、モバイル広告のインプレッションを最適化することでアプリの収益を伸ばすことを目的にしたオプティマイザーだ。その他の方法には、あるプラットフォームが収益を最大限に引き上げることに失敗した際に、異なるプラットフォームに自動的に切り替えるものもある。

モバイル広告オプティマイザーが救世主に


1月初旬に設立された Guohe Ad は、アプリデベロッパーから収益のジレンマを取り除くと同時に中国のアプリエコシステムの促進を支援するオプティマイザーの1社だ。

Guohe Adの共同設立者 Neo Zhang(張寧)氏は、社会に出始めの頃は主に金融関係に従事していた。同氏によると、モバイル広告プラットフォームの主な目的は、広告主に対しては最大の利益をもたらすことであるのに対し、オプティマイザーの主な目的は、より多くの利益を上げるために出来るだけ多くのインプレッションを表示することで、アプリのデベロッ パーがアプリに対する最大価値が得られるよう彼らを支援することだ。

より多くの広告を表示すること以外に、Guohe Ad はアプリ収益の可能性を最大限に引き出すために、多くの刷新的なアルゴリズムやよく考えられたメカニズムも導入している。例えば、Zhang氏は、 Guohe Ad はユーザのクリック習性を学習することにより、ユーザの好き嫌いを理解して嗜好にあった広告をより多く表示することができると語っている。

とはいうものの、単一の広告プラットフォームと比べて、オプティマイザーは広告をより多く表示することでさらなる収益をもたらすことができる。だが、それらの広告がユーザの好みに合わなければ、ユーザはそれらの広告をクリックしない。Guohe Adは、ユーザのアプリ利用習性やクリック履歴を理解することで、この問題を解決しようとしている。そうすれば、Guohe Adはユーザーごとにアプリ上でより関連性の高い広告を表示することができるのだ。関連性があればクリック率も高くなり、それが最終的には収益を伸ばすことにつながるのだ。

Guohe Ad以外にも、AdviewAdsmogo(芒果)などのプレーヤーが数社あり、各社はそれぞれ今は冴えないが将来性のあるアプリ経済から一儲けしようとしている。また広告プラットフォーム、オプティマイザー、デベロッパーらによる共同の取り組みは、ここ中国でのアプリエコシステムがさらに助長されることを、十分に予言する大きな兆しとして受け止めることができよう。

【via Technode】 @technodechina

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