国内シェアリング経済を牽引するウェブサービス20選+α(後半)

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#Sharing by Dilexa> (studying), on Flickr

前半からの続き。後半は残りのリソース(労働力や知識、サービス)および移動のシェアリングサービスをまとめた。まずはそれらをご紹介する前に、思考の整理として海外事例についてまとめておきたい。

海外のシェアリング・エコノミー

海外事例についてもListiaの分類にならってモノ、場所、リソース、移動の4項目で主要サービスをまとめてみた。なお、文中に出てくる数値は特に断りやリンクのない限り、米Matter Markのデータを参照しているので、あくまで参考程度として考えて欲しい。

ではまず、リソースやサービスのシェアリングからみてみよう。

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2008年にスタートしたサンフランシスコ拠点のP2PタスクマーケットプレイスがTaskRabbitだ。 掃除やお使いなどの細かいタスクを他の誰かに頼むことができ、現在アメリカは19の都市で利用可能。2015年5月時点の資金調達額は3770万ドル。従業員数は269人、推定の月間ユニークユーザー数は80万人となっている。

TaskRabbit同様のモデルで2012年からカナダを拠点にしているのがAsk for Task。こちらは現在20万人のサービスブロバイダーがプラットフォーム上に存在し、資金調達額は50万ドル。さらにロンドン拠点で同様のサービスを提供しているのがSooqiniで2011年創業。ユーザー数は2万人で1億ユーロ分のタスクがプラットフォーム上で実施されている。こちらも調達資金は50万ドル。

Skillshare

前述3サービスがオールラウンダーであるなら、ZaarlySkillShareはもう少し特化したリソースシェアと言えるかもしれない。

個人授業マッチングのオンラインサービスSkillShareはニューヨークで2010年に創業し、様々なカテゴリの1000以上の授業を選択して受けることができる。 プラットフォーム上の生徒の数は100万人以上でこれまでの資金調達額も1080万ドル、推定ユニークユーザー数は140万人。

ローカルのホームクリーナー、庭師、何でも屋さんを予約できるZaarlyは2011年創業で拠点はサンフランシスコ。現在はカンザス市とサンフランシスコ市内にてオペレーションしており、資金調達額はこれまでに1080万ドル、月間推定ユニークユーザー数は12万人となっていた。

移動のシェアリング

Uberの調達ストーリー
Uberの調達ストーリー / VentureBeat記事より

このカテゴリで世界的に最も成功したスタートアップと言えば、やはりUberだろう。2009年創業ながら現在の評価額は500億ドルとも言われ、調達した資金も59億ドルとずば抜けている。

ただ、彼らはシェアリングというよりも契約ドライバーを呼べるということから「On-demand」にカテゴライズされることが多い。(相乗りサービスのUber Poolもあるし、車両はドライバー所有のもののなのでシェアリングの分類も間違ってはいない)現在日本を含む58カ国でサービスをオペレーション中で、従業員数は5673人、推定の月間ユニークユーザー数は600万人となっていた。

A_ride_whenever_you_need_one_-_Lyft

そしてこのUberのライバルとされているのがLyftだ。こちらは創業以来ライドシェアリングを謳っており、2012年にサンフランシスコで創業して以来、10億ドルの資金調達を実施している。その他にもライドシェアリングについてはSideCar(2012年創業、3500万ドル調達)や、カーシェアリングのGetaround(車の貸し借りマーケットプレース、2009年創業、4300万ドル調達)があるが、やはりどれもUberほどの勢いは感じられない。

モノのシェアリング

Poshmark_is_a_fun_and_simple_way_to_buy_and_sell_fashion

前編でもお伝えした通り、日本ではメルカリやフリルがスマートフォン・シフトの波に乗って大きく躍進している。その米国での立ち位置にいるのがこのPoshmarkだ。

オンライン・モバイルで女性向けの服を販売・購買することができるサービスで創業は2011年。2014年にプラットフォーム上で売られた合計金額は1億ドル以上とされている。調達した資金も4100万ドルに到達しており、従業員数は120名、推定の月間ユニークユーザー数は140万人となっている。

Poshmarkよりも幅広いアイテムを扱うのがListiaで、2009年創業。不要品を販売するとListia独自の通貨を得られ、サービス上にリスティングされている商品を購入することができるオークションサービスとなっている。サンフランシスコ拠点でこれまでに1100万ドルを調達している。

場所のシェアリング

Vacation_Rentals__Homes__Apartments___Rooms_for_Rent_-_Airbnb

Uberと並んで世界的に躍進したサービスがAirbnbだ。190カ国以上で展開するバケーションレンタルサービスで、ローカルのホストは自分の家やアパートなどを貸し出すことができ、トラベラーはその場所をプラットフォームから探して、宿泊予約をすることができる。評価額は200億ドルと言われており、これまでに調達した資金は7億9480万ドル。従業員数は2558人で月間の推定ユニークユーザー数は1050万人となっていた。

Airbnbの名前に隠れて日本では馴染みの薄いHomeAwayも同じくバケーションレンタルサービスだ。こちらはAirbnbよりも早く、2005年創業で既に株式公開を済ませている。2014年の総売上は4億4700万ドルでこれまでに調達した資金は4億7000万ドルとなっている。キャビンから家、農場に城まで様々な場所を貸し出せ、リスティングされている情報量は100万件以上。

Dog_Boarding_Just_Got_Awesome____DogVacay

特化型のスペースシェアリングも成長しており、例えばペット犬のためのAirbnb「DogVacay」には、犬を預かってくれるホストが2万人以上登録されており、2012年創業ながら既に4700万ドルの資金調達に成功していたり、ミーティングスペース予約の「ShareDesk」(2012年創業)が70カ国440都市でサービス展開するなど、テーマ毎の細分化が進んでいる様子が見られるようになっている。

国内リソース・サービスのシェア

では、本題である国内のシェアリングサービス、リソースと移動の残り項目を見ていこう。ただし、国内は移動については規制等で新規参入のハードルが高いためか、ほぼ皆無の状態だった。

ストリートアカデミー

スキル共有のコミュニティサイト「ストリートアカデミー」

SkillShareタイプの個人授業マーケットプレースがストリートアカデミーだ。2012年に8月に創業、2013年6月にはサイバーエージェント・ベンチャーズやGenuine Startups、個人投資家などから総額4000万円の資金調達を実施している。5月28日時点での公開講座の数は2500件以上、累計の受講者数は1万9000人(同社サイトより)となっている。

ココナラ

ココナラ_-_あなたの得意でハッピーが広がるワンコインマーケット

個人の得意とする知識や能力をシェアするマーケットプレースがココナラになる。500円から依頼ができる「ワンコインスキルシェア」で、2015年4月時点で出品されているサービス数は3万件、月間取引数は約17600件。月商ベースで65万円以上を売り上げるユーザーも出てきている。2012年1月創業で、運営元のウェルセルフはこれまでに1億8000万円の資金調達を実施している。

タイムチケット

TimeTicket_タイムチケット_

個人の能力を時間単位で提供するマーケットプレースがタイムチケット。運営のレレレは元々、コーヒーミーティングというマッチングサービスを提供していた。2014年7月に同サービスを公開して以降、5月28日時点で登録ユーザー数は約2万2000人、販売した時間の合計は15万8370分、チケット売上の合計は約620万円と公表されている。

エニタイムズ

Any_Times・エニタイムズ_-_ご近所サポートで便利な暮らし

エニタイムズは掃除、家具の組み立て、ペットの世話などを代行してくれる「サポーター」と呼ばれる個人や事業者とマッチングしてくれるサービス。2013年5月創業で、今年5月にはグリー、ディー・エヌ・エーなどから2億3000万円の資金調達を実施している。今年3月末にリリースしたiOSとAndroidアプリは13万ダウンロードに到達。

ビザスク

トップ___ビザスク

エニタイムズよりもよりビジネスに特化したマッチングを提供しているのがビザスクだ。業界の経験者に対して30分からのスポットコンサルを依頼することができ、2015年4月末時点で登録アドバイザーの数を5000人に伸ばしている。

DogHuggy

DogHuggy|DogHuggyは、愛犬家を結びつけるサービスです。

5月20日にサービスインしたばかりの日本版「DogVacay」がDog Huggyになる。旅行や外出時などペットの世話ができない飼い主と、近所の飼育経験が豊富なドッグシッターさんをマッチングしてくれるサービスで、4000円から5000円の価格帯を予定している。創業は2015年2月のスタートアップ。

Saturdays

Saturdays

レッスンスタジオの共有は米ClassPassが有名だが、同様のアイデアを日本で展開するのがこのSaturdaysだ。2015年5月にリニューアルスタートし、月額9,800円を支払うことで提携しているあちこちのフィットネスに通うことができるようになる。このアイデアは展開がしやすいのか、同時期にグリーの子会社が「Lespas」(2015年1月設立、4月サービスイン)、PR事業を展開するラ・クレタが「ClassFit」(2015年2月開始)を提供している。

移動のシェア

長距離ライドシェア(相乗り)_-_notteco(のってこ!)

最後は移動に関するシェアリングサービスだ。この分野はいわゆる乗り合いの規制(事業者側が乗客を指定して乗り合わせる行為。乗客同士が示し合わせた場合はこれに当たらない)があるためか、あまりサービスとして活発な動きは少ない。

そんな中、長距離のライドシェアを提供しているのが「notteco」になる。運営するCostyleの創業は2014年4月で、サイトを見てみたが登録されている件数は数十件と多くはない。また、カーシェアの先駆けとしてブラケット(STORES.jp運営会社)が2008年に開始したCaFoReは現在、北九州のWAKEに運営が譲渡されている。

+α、その他のサービスについて

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さて、前編後編に分けてお送りしたシェアリング・エコノミー系サービスのラインアップはいかがだっただろうか。今回、頂いた情報からここに掲載しなかったもので多かったのがリソースを自社で抱え込むタイプの事業だ。

シェアリングのビジネスでは「誰が」シェアしているかで方向性が変わってくる。もし事業者がリソース(モノや労働力)を抱え込んで提供しているのであれば、それは業務代行やレンタル事業と捉えるべきだろう。

ここで取り上げたシェアリング・エコノミーのプラットフォーマーたちはいかにしてユーザー同士を効率良くマッチングさせ、大量のトラフィックを稼げるかについて、サービスのモデル設計やテクノロジーの選択、デバイス活用などの試行錯誤を重ねている。

一つのマッチングに対してサービス提供者側がいちいちリソースを割いてしまえば、ただでさえ利幅の薄い手数料モデルで事業は成立しづらくなる。

一方で完全なプラットフォーマーとして「掲示板用意したから勝手にマッチングしてくれ」では品質が担保できない領域もある。家事手伝いや業務代行のようなケースはひとつ間違えると詐欺や盗難などの事故も考えられるので、こういった利幅が薄い中でどこまで事業者が手をかける(=コストをかける)のかも注目すべきポイントになってくる。

ということで、本稿の最後に上記理由でカテゴリには入れなかったが、頂いた情報の中から気になるサービスを下記にリストしておく。興味ある方はサイトをチェックしてみて欲しい。

(共同執筆:土屋卓也)

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