ライドシェアのUberやLyft、ルームシェアのAirbnbに労働力(リソース)シェアのTaskrabbitなど、2008年頃から発生した「共有」サービス勃興の波は、約7年の時を経て日本にもようやくやってきた感がある。
場所や人的リソース、モノの共有がそれだ。国内ではスマートフォン・シフトの波をうまく掴んで一気に成長したスタートアップも散見される。本稿では自薦他薦で一般から集めた情報から下記の定義に合うものを選び、掲載させてもらった。(前編/後編)
シェアリング経済とは
Wikipedia(英語版)によれば、シェアリングエコノミーは「共同消費」のスタイルとして「Product-service systems(個人所有のモノのシェア)」、「Redistribution markets(再利用・交換)」、「Collaborative lifestyles(時間や場所など共通のニーズを活用したシェア)」の三つにまとめられている。ただしこれは解釈範囲が非常に広く、クラウドファンディングやレンタル事業、各種マッチングまで幅広く抱合してしまうことになる。
ちなみにインターネット・トレンドのバイブル、Mary Meeker女史の「Internet Trend 2015」が発表されていたのでちらりと確認したのだが実はシェリング・エコノミー「Sharing Economy」の文字はほんの一行しか(ちなみに2014年版にはひとつも)なかった。もちろん無視されてるのではなく、UberやAirbnbなどは「On-demand」というキーワードで切り取られているからだ。
つまり、インターネットビジネスにおけるシェアリング経済の「カテゴリ定義」というのはまだ曖昧、もしくは共有という概念そのものがインターネットビジネスの本質であり、ことさら定義するのが難しい分野になるのかもしれない。
そこで今回はあまりややこしく考えず、よりシンプルに昨年Listiaが公開したこのインフォグラフィックを元に「モノのシェア」「場所のシェア」「労働略(リソース)のシェア」「移動のシェア」で分類することにし、掲載は情報を頂いたものおよび編集部で選定した未公開企業のサービスとした。では、それぞれのカテゴリで主要サービスを見てみたい。
モノのシェア
メルカリ
今回のまとめで最も成功している例として挙げていいサービスだろう。創業2年ながら月間の流通総額が既に50億円以上に到達しているという噂もあるほど急成長しており、2015年5月18日時点のダウンロード数は1500万件。2013年2月の創業以来、調達した資金は41億円以上になっている。
スマートフォン・シフトのタイミングを逃さず開発能力の高い経営陣が競合他社より質の高いアプリを開発し、豊富な資金を効率的にマーケティングに使った結果、ヤフオク!(年間流通額は約8100億円規模/同社2014年度決算資料より)とは違ったユーザー層の獲得に成功したことが要因と考えられる。
フリル
国内で「フリマアプリ」の名称を作り、市場を最初に開拓したのがフリルだ。メルカリ同様、スマートフォン・シフトのタイミングを逃さず、女性に特化することでこちらもやはりヤフオク!とは違ったユーザー層の獲得に成功しているとみられる。
2012年7月に公開されたFrilは300万ダウンロード(5月28日時点で同社サイトより)。物流総額は2014年7月時点で月間5億円規模という情報が残っており、2014年9月には同社初となる、クックパッドやコロプラなどからの総額10億円の外部資金調達も実施している。
チケットストリート
チケットの二次流通を取り扱うオンラインサービスで、昨年8月には同カテゴリの米大手、StubHubを傘下に持つeBayなどから3億円の資金調達を実施している。
チケットキャンプ
チケットストリート同様、チケットの二次流通を扱うサービス。今年3月にミクシィが115億円という高い評価で同社を買収したことは記憶に新しい。メルカリやフリル同様、スマートフォン・シフトをうまく掴んだ事例で、2013年4月のサービス開始(創業は前月)当初からスマートフォンのアクセスが多く、現在も8割を占める。2014年12月時点で同サービスの流通総額は約8億円と前年比600%の成長を示していた。
HIDEOUT CLUB
お酒を共同購入して指定のお店にキープ、出資した分だけ飲めるというもので、一本数万円から数十万円するような希少酒をシェアすることで楽しめるというアイデア。投稿情報からのピックアップなので成長率などは全くわからないが、このアイデアが本当にワークするのであれば、その他のカテゴリもいけるということになる。気になったのでこちらに掲載した。
キャリーオン
子供服のフリマサービスで2013年5月創業。フリマアプリ/サービスは多数あるが「リサイクル」を明言しているものは多くない。フリマアプリにはユーザーの利用動機として「お小遣い稼ぎ」の他にこういった利用シーンを特化したリユース/リサイクルのものも考えられるという点で、ひとつカテゴリの分岐を感じさせてくれる。
ユーザー層が固まればひとつのコミュニティとして成立し、ややもすると利益幅が薄くなりがちなマーケットプレースモデルで別の収益源を考えられるからだ。
場所のシェア
スペースマーケット
お寺や球場といったユニークなスペースをネットで1時間単位から貸し借りできるマーケットプレイスで、2014年1月創業。同年10月にはサイバーエージェントベンチャーズとみずほキャピタルから総額約1億円の資金調達を実施している。
akippa
スペースシェアの急成長株として東のスペースマーケットを挙げるなら、西は大阪を拠点とするこのakippaだろう。求人メディアなどを手がけていた運営元のakkipa(前社名はギャラクシーエージェンシー、設立は2008年2月)が同サービスを立ち上げたのが2014年4月。これまでにジャフコやディー・エヌ・エー、個人投資家などから約3億円の資金調達を実施しており、2014年12月開催のIVSでは見事優勝を獲得している。
軒先ビジネス
国内でこの分野の草分け的な存在。創業は2008年4月(法人設立は2009年4月)で、空き駐車場マッチングの「軒先パーキング」、サイクルシェアの「軒先シェアサイクル」などを運営している。
SHOPCOUNTER
商品の展示や販売、プロモーションなどに使いたいスペースを、オンラインを通じて探すことができ、問い合わせから予約、決済までが可能なオンラインマーケットプレイス。海外には、サンフランシスコ発の「Storefront」、UK発の「Appear Here」などがある。運営するカウンターワークスの創業は2014年10月。
Roomstay
オンラインマーケットプレース事業を手がけるみんなのマーケットが運営する日本版Airbnb。2012年4月と抜群の早さでサービスインしているのだが、現在は同社コーポレートサイトからもリンクが貼られておらず、あまり積極的な運営をしている雰囲気は感じられない。(サービスイン当時に私がCNET Japanに書いた記事はこちら)
Roomstayの関連記事/企業情報(みんなのマーケット)はこちら
とまりーな
こちらも投稿情報からのピックアップ。日本の田舎に特化したAirbnb(?)で、国内地方の民宿情報が登録されている。単に泊まるというよりはホームステイのような印象で、例えばこちらの正光園のレビューを読むと、夕食はその家族と一緒に食卓を囲んでいる様子が伺える。場所のシェアというよりは、日本人が忘れ去りそうな風景、思い出のシェアリングのように思える。
個人的にはやはりこちら正光園にある但し書き「4.テレビはないですが、ラジオはございます」に熱いものを感じた。
後半の記事ではリソースのシェアリングサービスと海外事例のまとめ、今回、カテゴリからは少し離れたが、レンタルやマッチングなどの周辺サービスについてお伝えしたい。
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