リクルートが展開する「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第1期参加チームが半年の成果を披露

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2015.9.1

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リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が渋谷で展開する「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は、昨年11月に開設されたITクリエイター向けの会員制コミュニティ・スペースだ。筆者自身は TECH LAB PAAK でいくつかのイベントで登壇させてもらったことがあり、コミュニティ・スペースとしてのみ認識していたのだが、実のところ、同施設はリクルートのイノベーション創発機関「メディアテクノロジーラボ(MTL)」が主体となりR&D本部により運営されていて、入居するスタートアップ・チームを育成するインキュベータとしての機能も持っている。

入居チームは、開発するサービスの成熟度などに応じて「プロジェクト会員」「コミュニティ会員」に大別されるが、8月30日、それぞれの10チームが TECH LAB PAAK 入居からの半年間の成果を披露するデモデイが開催された。入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • TechCrunch Japan 編集長 西村賢氏
  • Truffle Capital ベンチャーパートナー Mark Bivens 氏(過去の寄稿
  • 日本マイクロソフト エバンジェリスト 砂金信一郎氏
  • C CHANNEL 代表取締役 森川亮氏
  • リクルートストラテジックパートナーズ マネージング・パートナー 岡本彰彦氏
  • リクルートホールディングスR&D本部 Media Technology Lab. 室長 麻生要一氏

【TECH LAB PAAK 賞】cognitive science × computer science project 上野道彦氏

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上野氏が開発するのは、代替現実(Substitutional Reality)という領域だ。目の前の風景が仮に今のものではない場合、人間の心理状態はどのような影響を受けるかという研究。予めある地点の映像を360度カメラで録画しておき、ヘッドマウント・ディスプレイでは、視界の方向にあわせて録画した映像を再生することで、被験者は過去の映像を、あたかも現在の様子のように見渡すことができる。

例えば、ライブ・パフォーマンスを録画しておき、追って被験者にあたかもライブ会場にいるような臨場感を味あわせることができるだろう。仮想現実が現在の状態の延長であるのに対し、時間差を超えて現在のような感覚をユーザに体験させられる点で、応用の可能性も広がる。

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【Media Technology Lab. 賞】DeployGate デプロイゲート

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DeployGate は、モバイルアプリの開発をする上で、開発チームなどテストユーザに対し、アプリを簡単に配布できるプラットフォームを提供。2012年9月にミクシィ社内のプロジェクトとしてローンチし、2015年3月にはスピンオフした。4月には AppBroadCast と共同でスマホゲーム向けのテストマーケティング特化サービス「サキプレ」を、また5月には DeployGate エンタープライズ版をリリースし、黒字化を果たした。

アメリカでのサービス利用拡大も念頭に置いており、モバイルアプリのパフォーマンス計測プラットフォームを提供するスタートアップ Crittercism などと共同でミートアップを開催している。

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【C Channel 賞】Chef’s Hippocampus 喜多唯氏

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さまざまなレシピサイトから料理の食材要素を取得し、食材の持つ構成要素をマッピング。特性の相反する食材を組み合わせることで、これまでになかったレシピを考案し、新しい料理を創発する。具体的には、海老・オレンジ・チーズ・カシューナッツの組み合わせ、エシャロット・ポルチーニ・チョコレートの組み合わせは成功、反対に、オリーブ・人参・マヨネーズの事例は失敗など。

Chef’s Hippocampus を開発した東京大学の喜多氏は、2012年には未踏プログラマに選ばれ、この際には、食事中の味の変化をプログラム可能にする「プログラマブルフードの開発」を披露するなど、食と IT の技術連携にまつわるしくみを開発し続けている。

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【TechCrunch Japan 賞】ファーストレスポンダーシステム「AED FR」 Coaido 玄正慎氏

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心停止が発生した患者にとって、救命のための最も有効な手段は AED(自動体外式除細動器)であるが、多くの場合、周りにいる人ができるのは救急車を呼ぶまでで、AED を使った心臓蘇生が行われないため救命率が低いものとなってしまう。Coaido は厚生労働省、地方自治体、AED メーカーなどが持つ AED 配置場所の情報をデータベース化。消防署にかかってきた119番への通話内容をもとに、オペレータが心臓蘇生が必要とは判断すると、救急車の急行要請とともに、救護者の発信場所から患者の近くにいる消防署員や消防団員のスマートフォンにプッシュ通知する「AED FR」を開発した。連絡を受けた、消防署員や消防団員は、スマートフォン 上の地図に表示された最寄りの AED をピックアップし、最短ルートで患者の救護に向かうことができる。

当初はコンシューマ向けのサービ スとしてスタートしたが、京都大学での実証実験の後、消防機関向けのサービスとしてピボット。経済産業省のソーシャルビジネスモデル実証事業の認定を受け た。Coaido、愛知県尾張旭市、京都大学で三者協定を結び、今秋からは愛知県尾張旭市でシステムの実証実験が始まる予定だ。

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【Microsoft Japan 賞】VISTouch 安本匡佑氏

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VISTouch は iPod に導電体ケースを取り付け iPad 上に置くことで、iPad 上に3次元映像の断面を見ることができるテクノロジーだ。Google Map 上に垂直に立てることで、進行方向の風景を Street View で見ることができたり、平面の上に三次元の風景を再現したり、CTスキャンで輪切りされた人間の身体を三次元表示したり、用途はさまざま。

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【Truffle Capital 賞】Chef’s Hippocampus 喜多唯氏

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前出のため、説明は省略。

【オーディエンス賞】ファーストレスポンダーシステム「AED FR」  Coaido 玄正慎氏

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前出のため、説明は省略。

【オーディエンス賞】HAND IN HAND ウエアラブルデバイス研究所 久田智之氏

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我々はインターネットやスマートフォンの恩恵に預かることが多いが、このようなメディアの利便性から取り残されているのは障害者の人々だ。視覚障害者は音声で情報を聞くことができるし、聴覚障害者は情報を目で見て把握することができるが、視覚と聴覚の両方を失った盲ろう者向けのインターフェイスは、これまで開発されてこなかった。

久田氏は昨年の MashupAward で視覚障害者のためのウエアラブルデバイス「ミミミル」で入賞。この経験をバネに、盲ろう者向けのコミュニケーション・デバイス「HAND IN HAND」を考案。このデバイスを身につけた状態で盲ろう者が指点字の動きをすることで、センサーで読み取った指の動きを文字に変換して健常者に伝えたり、健常者がスマホで入力した文字を指点字に変換して盲ろう者に伝えたりすることができる。

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【オーディエンス賞】filme コトコト 門松信吾氏

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filme は、ママが子供の「成長シネマ」を制作できるサービス。ママが撮影した30秒動画が20日分貯まると、コトコトが開発した独自の動画編集エンジンにより、一本の動画を自動制作。完成した「成長シネマ」は DVD に焼くことができる。

ユーザからのフィードバックでは、顧客満足度は5点満点中4点と高い成績。また、動画を制作した後に DVD に焼き出す顧客は52%と、マネタイズも順調に進んでいる模様。他社との差別化要素として、今後も子供の動画を制作するプラットフォームに特化し、9月中旬にはサービスを新たにリニューアルする予定だ。

(「成長シネマ」は、コトコトの登録商標。)


なお、TECH LAB PAAK では第2期の入居が開始されており、8月30日からは第3期の会員募集が開始された。法人・個人、プロダクトの有無にかかわらず申し込めるとのことなので、興味のある人はお早めに。

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