リクルート「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第2期参加チームが半年の成果を披露

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2015.12.19

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リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が渋谷で展開する「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は、昨年11月に開設されたITクリエイター向けの会員制コミュニティ・スペースだ。同施設はリクルートのR&D本部により運営されていて、入居するスタートアップ・チームを育成するインキュベータとしての機能も持っている。

入居チームは、開発するサービスの成熟度などに応じて「コミュニティ会員」と「プロジェクト会員」に大別されている。コミュニティ会員12チーム、プロジェクト会員7チームが TECH LAB PAAK 入居からの半年間の成果を披露するデモデイが18日、開催された。

入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • 500 Startups Japan 澤山陽平氏
  • デジタルハリウッド大学 学長 杉山知之氏
  • クラウドワークス CTO 大場光一郎氏
  • リクルートストラテジックパートナーズ マネージング・パートナー 岡本彰彦氏
  • リクルートホールディングスR&D本部 Media Technology Lab. 室長 麻生要一氏

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【TECH LAB PAAK 賞】SPOT〜スポーツの常識を変える〜 吉田拓真氏

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SPOT が実現しようとするのは、アスリート向けのスポーツ可視化ソリューションだ。勘や常識に頼りがちなスポーツにおいて、データドリブンな練習アプローチを支援する。

例えば、バスケットボールにおいては、目まぐるしいスピードでゲームが展開していくので、克明にその流れを記録することは難しい。SPOT を使えばタブレットデバイスを使ってゲームを簡単に撮影でき、流れるようなジェスチャーでリアルタイムにデータを記録・入力をできる。ゲーム展開を分析するアシスタント機能も提供され、プレイのハイライト動画のようなものも作成可能だ。

SPOT は、2014年の Imagine Cup 2014 日本大会でグランプリを獲得している。

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【Media Technology Lab. 賞】#SnSnap(エスエヌスナップ)SNSフォトプリントサービス 西垣雄太氏

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今年6月に東京で開催された、PayPal_Braintree のハッカソンツアー BattleHack で2位に入賞した SnShot だったが、サービス名を「#SnSnap(エスエヌスナップ)」に改めての登場。人々がマスメディアではなく SNS を通じて情報を摂取する今日において、SNS を使って、ブランドのオンサイト・マーケティングに利用してもらおうというサービスだ。

ユーザは SNS にイベントなどのハッシュタグをつけて写真をアップロードすることにより、イベント会場などに設置した写真プリントマシンで簡単に印刷することができる。Facebook、Twitter、Instagram に加え、Google Plus や Weibo(微博)に投稿された写真からも取り出すことができる。写真を印刷している間は、ブランドが動画 CM をプリンタ画面に流すこともできる。

これまでに SnSnap を利用した事例は、大手ファッションブランドを通じて89事例以上。タワーレコードでは、One Direction の新作発売イベントのマーケティングに採用された。今後は、大手インスタント写真会社との協業、管理用のダッシュボードの開発に予定。観光業、テーマパーク、ライブ産業などをターゲットにし、SNS や O2O マーケティングのエンゲージメント向上に注力する。

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【500 Startups Japan 賞】PILE Project

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PILE Project は、子供たちにプログラミングの楽しさを体得してもらおうというプロジェクトだ。プログラミングを経験することにより論理的思考が身につき、将来の人生において役立ててほしい、という試み。

Visual Programming の思想を取り入れ、アプリを使って子供が簡単なフローチャートを組むことができ、それに応じて、ロボットが動作するしくみを作り上げている。TECH LAB PAAK で合計5回にわたって小学生向けにプログラミング教室を開催したほか、東京・青山の技術展示施設「TEPIA(テピア」にも PILE Project のシステムが導入され、プログラミング教室が開催されている。

Visual Programming と実際のコーディングには大きな違いがあるので、今後は、Visual Programming から実際のコードに変換できたり、コードの記述が Visual Programming に反映されるようなしくみを作りたいとのこと。また、子供が楽しめる魅力的なカリキュラムの作成に注力し、2016年夏には、ソフトウェア、プログラミング教室で利用したロボットのようなハードウェア、カリキュラムなどのすべてをオープンソース化する計画だ。

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【クラウドワークス賞】 社内情報&実績共有ツール「Kibela」 井原正博氏

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以前、クックパッドで技術部長を務めていた井原氏は、日本のスタートアップ・シーンでは有名な人物だが、彼が現在傾倒しているのは、社内情報の共有により、強い組織を作れるようにするプラットフォームだ。

社内で誰がどのプロジェクトに参加していたか、どのメンバーがどの分野に強かったかなど、業務を通じて得られた知見や経験は社内に残らないことがしばしば。LinkedIn を使えば同じようなことが可能だが、社内に情報を残すという視点でのプラットフォームは世の中に存在しないのが現状だ。そのような問題の解決を目指す社内情報&実績共有ツールが、井原氏が開発を進める「Kibela」である。

現在、アルファ版を数社を対象に提供中で、GitHub の write 権限をサービスを利用するユーザの一部に渡して開発を進めるという、面白い開発手法をとっている。まるで、皿洗いをしてくれるなら上代はいただきません、という食堂のような、コミッタをやってくれるならサービスは無料で使えます的アプローチ。現在、アルファ版公開先の5〜6名のエンジニアに GitHub の write 権限を渡し、ユーザの立場から「ここをこのようにした方が使い易い」という意見を自らコーディングしてもらい、半オープンソース的に開発を進めている。

【デジタルハリウッド賞】Team IcARus 長谷川陸央氏

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今回のバッチに参加した最年少のコンビ(17歳とのこと)が開発したのは、ライブカメラのドローン版だ。自らドローンを開発し、その前部には単眼カメラが装着されている。ドローンにはスティック PC が載せられ〝空飛ぶサーバ〟として機能する。ユーザがインターネットを通じてこの〝空飛ぶサーバ〟にアクセスすると、3D のコックピット風景と合成されて、あたかも飛行機を操縦しているような風景がインタラクティブかつライブで楽しめるというものだ。

メンバーは、日本各地にある閑散期のスキー場などに、このドローンを設置するアイデアを持っているようで、まさに世界中のライブカメラを見て回る感覚で、各地の空で遠隔操縦を楽しめることになる。おそらく、通信に関しては SORACOM のようなしくみが使えるし、人口密集地域でなければ改正航空法の適用も免れるので、彼らのアイデアは現実的なエンターテイメントビジネスになるかもしれない。

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【オーディエンス賞】Digital Hospital Art 吉岡純希氏

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プロジェクション・マッパーの集まり vvvv Japan Community のエバンジェリストであり、訪問看護を行う看護師でもある吉岡氏は、病気や障害により自由に移動ができない人々、身体可動制限がある人々にも自由な表現ができる環境を提供したいと考え、医療現場や介護施設でアート作品の展示やイベントを開催をしている。車椅子の人に Wii のセンサーを使ってダンスに参加してもらったり、入院患者に Leap Motion を使ってパフォーマンスに参加してもらったりするなどだ。

今後は、吉岡氏個人による活動が多かった Digital Hospital Art をより組織的な動きにし、医療現場にアートを身近なものにしたり、臨床医療の現場により実用的なソリューションをフィードバックしたりできるよう注力したいとのことだ。

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【オーディエンス賞】アマテラス 松田光秀氏

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3DCG コンテンツが JQuery だけで簡単に作成できるライブラリ「jThree」の開発者として知られる松田氏は、この半年間の活動内容を披露した。

6月に三菱東京UFJ銀行が開催した「Fintech Challenge 2015」には、銀行の支店の待ち時間を顧客に楽しんでもらうため、3D&VR を活用したコンテンツとして「どこでもタイムマシン」をエントリ、審査委員特別賞を獲得し、銀行店頭に設置されることが決まった。8月には、オリンピックロゴ風の画像作成ジェネレータ「TOKYO 2020 Generator」がネット界で評判を呼び、その後もいくつかのプロダクトを発表し、複数のハッカソンで入賞している。

松田氏らが今年アメリカに設立したスタートアップ AMATELUS では従来の jThree をリメイクしたソリューションを企業向けにライセンス提供する予定で、すでに複数社から資金調達を実施。さらに、彼が作成した jThree の開発作業を他のメンバーらが継承し、機能追加された ver. 3 が2016年春にベータ公開される見込みとのことだ。


なお、TECH LAB PAAK では第3期の入居が開始されており、第4期の会員募集はまもなく開始されるようだ。法人・個人、プロダクトの有無にかかわらず申し込めるとのことなので、詳細はTECH LAB PAAK のウェブサイトをチェックしてほしい。

Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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