Alibaba(阿里巴巴)の「新小売構想」は、中国と世界の小売の未来をどう変えているのか?

by TechNode TechNode on 2018.2.24

【編者注】本稿は起業家でプロスピーカー、vlogger でもある Ashley Galina Dudarenok 氏による寄稿である。同氏はソーシャルメディアエージェンシーの Alarice やリソースプラットフォームの ChoZan を含むいくつかのスタートアップの設立者である。また、YouTube のチャンネル Ashley Talks で中国の市場、消費者、ソーシャルメディアについての世界最大のvlogを運営している。彼女の最新のベストセラーである『Unlocking the World’s Largest E-Market: A Guide to Selling on Chinese Social Media』はAmazonで購入できる。

Image credit: ChoZan

2016年の Alibaba Computing Conference(阿里巴巴雲栖大会)において、Jack Ma(馬雲)氏のスピーチはテクノロジーによって変わりつつある5つの分野に焦点を当てたものだった。新たな金融、新たな製造、新たなテクノロジー、新たなエネルギー、そして中心に据えられたのは新たな小売、つまりニューリテールだった。

Alibaba(阿里巴巴)はデータとテクノロジーを使って小売を変えたいと考えており、それは全体の82%に上るオフラインの小売も含めてだ。

ニューリテールとは、オンラインとオフラインの世界をシームレスにつなげることを可能にし、それによってコマース(商取引)を再定義しようという Alibaba の戦略である。オンラインのユーザをオフラインの顧客にしようというものではないし、その逆を狙ったものでもない。顧客を中心としてオンラインとオフラインのチャネルを統一された方法で組み合わせた小売のエコシステムを構築しようというものである。ときには新たな、予想外の方法においても。

同社は光棍節(11月11日独身の日)のショッピングフェスティバルを Amazon Prime Day の18倍、ブラックフライデーとサイバーマンデーを合わせたものの2.5倍の規模にまで拡大して実施したが、この時期を機会としてビジョンを掲げた。

光棍節に示された例とその他の中国でのテストケースの例から、将来の小売は以下のようになると考えられる。

1.Smart Pop-up Stores(天猫智慧快閃店)

ニューリテールの店はブランドや製品に固有のカスタマーエクスペリエンスをキュレーションすることができる。

こういった店の主な特徴としては…

  • 店に入るときにオンライン決済システムとの接続が確立される。Alibaba のケースでは、スマートストアに入るには Alipay(支付宝)がスキャンされなければならない。
  • 値札は電子的なもので、特定の要因によってリアルタイムで値段が変化する。
  • 顧客の追跡に顔認証技術が使用される。笑顔を浮かべた商品やオンラインで検索したことがある商品に割引きが提示される。
  • 購入した商品をあとで配達してもらうことができる。履歴から購入者の住所はシステムが把握しているので配達に関する詳細は必要ない。中国国内の主な都市における配達に要する時間は15分から3時間と、既に非常に速い。
  • 顧客はモバイルデバイス上の Taobao(淘宝) や Tmall(天猫)アプリを通じて、位置情報を基にしたお勧めの店や割引き情報を受け取ることができ、トラフィックをオフライン店舗へと誘導できる。
  • 顧客は RFID(無線 ID タグ)や AR(拡張現実)の技術を使い、アパレル商品や化粧品をバーチャルに「試着」してみることができる。
  • 顧客は AR 技術を使い画像をスキャンして、製品リストページへ行きクーポンを受け取ることができる。
  • 顧客は QR コードをスキャンすることで自動販売機から買い物ができ、数クリックで自宅に商品を配達してもらうこともできる。
  • 購買行動データや顔認証情報、モバイルゲーミフィケーションなどを蓄える「Cloud Shelf」のようなイノベーティブな技術もある。

2.Tmall Neighbourhood Convenience Stores / LST Corner Stores(天猫小店/零售通)

Alibaba のLST(零售通/「統合された小売」)イニシアチブは、Alibaba が所有する店舗だけではなく数百万に及ぶ近所のコンビニや個人商店がビジネスをデジタル化するために活用されるという点で Amazon が実店舗を推し進める取り組みとは異なっている。

例えば、LST システムは実店舗を持つ小売店のオーナーが周囲の顧客のデモグラフィックや購買行動を調べる手助けをし、そしてその店で最も需要が高い商品を推測して推奨することができる。このテクノロジーはマーチャンダイジング、在庫管理やロジティクスにも使うことができ、業務の運営を強化することが可能。

昨年8月、杭州の浙江大学のそばにある地域の食料品店 Weijun Grocery(維軍超市)は LST システムに参加し、その後、「Tmall Corner Store(天猫小店)」フランチャイズの試験対象第1号として選ばれた。8月に行われたオーナーへのインタビューによると、前四半期に比べ売り上げは45%アップと急上昇し、客足は26%伸びたという。

3.エンターテインメントとしての小売

現代の中国のeコマース消費者は主にモバイルに精通した若い層であり、そのためショッピングとはバーチャルなショッピングカートにただ受動的に商品を入れていくことではない。それは既に社会的な活動となっていて、コンテンツの消費であり、究極的には娯楽の一形態である。

今年、光棍節ショッピングフェスティバルの販売キャンペーンは、この「エンターテインメントとしての小売」というコンセプトを示して見せた。

メジャーな「See Now, Buy Now」オンラインファッションショーは既に2016年と2017年に行われ、MAC、Guerlain、Pandora、TAG Heuer、Rimowa といったブランドが参加した。このショーの間、観客はただ見るだけではない。Taobao や Tmall の画面左側に表示される購入リンクから購入することもできるし、ショーをテレビで見ている人は携帯電話をシェイクして製品ページへ行くこともできる。また、バーチャル試着室にアクセスし、自分の写真や身長体重といった情報をアップロードすると、購入を考えている服を「試着」し、どう見えるかを確認することができる。

商品の割引きのためのオンラインゲームおよび光棍節カウントダウンイベントもまた、エンターテインメントとしての小売というシフトに適合するものである。

4.顧客と広告主、インフルエンサー、KOLを分ける線のゆらぎ

顧客が購入したものをオンラインで投稿しキャンペーンに参加することに対して多くのブランドが報酬を出すアプローチは、中国では既に一定のレベルで行われている。オフラインではさらに洗練され日常に組み込まれた形で行われることになるであろう。

例えば光棍節に参加したあるポップアップストアでは、商品を買うと、店内のスタジオですぐにプロのメイクと照明の下、購入した商品と一緒に写真を撮ってもらうことができた。

いまや顧客はミニインフルエンサーであり、ソーシャルセリングにおけるアクティブパートナーとなっている。

Image credit: ChoZan

Alibaba だけではない

Alibaba のニューリテールだけが中国の小売を未来に推し進めているのではない。例えば、Tencent(騰訊)もニューリテールという戦場で活発に動いている。WeChat(微信)の8億8,900万の月間アクティブユーザと、中国でのモバイルによる消費時間の55%以上が同社の製品によるものであるという点で、Tencent はモバイルユーザのデータベースにおいてアドバンテージがある。また、Alibaba に対抗するために JD(京東)や VIP(唯品会)と戦略的パートナーシップを結び協力している。

2017年11月8日、Tencent は「Smart+」戦略を、クラウドプラットフォームと共に正式に発表した。このクラウドプラットフォームは小売や金融、ロジティクス、マーケティング、通信その他を分散的な方法で包括するスマートエコシステムを構築するものである。

Tencent はまた、最新のビッグデータ、クラウドコンピューティング、AI 技術を駆使し、「Smart+Retail」を推し進めるつもりである。同時に、公式アカウントやミニプログラム、WeChat Pay(微信支付)といった既存の WeChat の機能は既に小売ブランドをサポートしている。例えば、WeChat Pay とビッグデータ解析によって小売ブランドは顧客について理解を深めることができ、メッセージや宣伝を非常に精密にカスタマイズすることができる。ミニプログラムを使うとオンラインおよびオフライン店舗でのショッピングエクスペリエンスとアウトプットサービスをシームレスに融合することもできる。

Tencentのパートナーであり中国国内第2位のeコマースプラットフォームである JD もまた、「Unbounded Retail(無界零售)」という旗を掲げて類似の戦略を推し進めている。ニューリテールのコンセプトと似ているが、アンバウンデッドリテールは以下の4つのコンセプトから成る:

  • アンバウンデッドコンシューマー:顧客は多様なプロバイダやチャネルを通じて、ときには時間や空間も横断して、より多くの購入オプションにアクセスできる。
  • アンバウンデッドシナリオ:オンラインとオフラインのチャネルとシナリオを連結および結合し、イノベーティブな技術と統合する。
  • アンバウンデッドサプライチェーン:製品のデザイン、製作、そして在庫から価格設定やロジティクスまで全体的なプロセスへの統合的なソリューションであり、サプライチェーンの価値を無限に拡大する。
  • アンバウンデッドマーケティング:すべてのメディア、小売ブランド、プラットフォームが協力し、スマートコンテンツを生み出してセールスコンバージョンを促進する。

JD のアンバウンデッドリテールは消費者インサイトやエクスペリエンスを統合する効果的で正確で安全なデータベースも活用している。例えば、JD が発行したクーポンはブランドのオンライン JD ストア、WeChat ストア、そしてオフラインの実店舗でも使うことができる。顧客のメンバーシップやそれに対応する割引きも、オンラインとオフラインで自由に使うことができる。それにより、多様なチャネルの中でシームレスな消費エクスペリエンスを作り出し、ブランドがより効果的にターゲットとする消費者とつながることができるようになっている。

これらすべての影響力やイノベーション、そして刺激は中国の国境を越えてより広い世界へと広がり、世界的な変化にインパクトを与えるだろう。ソーシャルテクノロジーの大手企業らが中国政府と共に、中国を21世紀の真の超大国とするなら、それはとても魅力的なことであるだろう。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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