梱包請負人「Lumi」ーー570万人市場のサブスクリプションボックスをさばく「Factory As A Service」モデルとは?

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.2.28

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<ピックアップ : Packaging Startup Lumi Completes $9 Million Fundraise To Leverage Its Digital Network Of Factories >

世界中でサブスクリプションビジネスが広がっています。「Netflix」に代表されるデジタル分野のみならず、日用雑貨品から食材配達のような物品を定期配達するサブスクリプションボックスの台頭も見逃せません。

こちらの記事 によると、2017年度のアメリカ市場におけるサブスクリプションボックスサービス数は、2014年度比で8倍に上っています。2017年度のサービス数が明記されていませんでしたが、 別記事 によると、2016年度で2,000サービスがローンチされていると報じられています。

570万人の利用者市場と業者の課題

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Image by  WeedPornDaily

2017年におけるサブスクリプションボックスサービスの利用者数は約570万人 。仮に全利用者が月額設定にしており、1ボックス当たり30ドルだとすると、約1.7億ドル分の市場が毎月発生している計算になります。

ここで問題となるのは梱包作業です(この記事で述べる「梱包」とは顧客へ届けるボックスの手配、デザイン、発送までの一連の作業を指すことにします)。

全てのブランドが、自社ロゴ・カラーの付いたオリジナルのボックスを梱包する必要があります。また、ボックスを開けた中身にメッセージ文を付け加えて、開封時の顧客体験を向上させる工夫を施すサービスもあるため、カスタマイズ志向が強い業者もいます(詳しくはお菓子サブスクリプションボックス 「LoveWithFood」の動画 より)。

サブスクリプションスタートアップが、サービスローンチ当初から自社工場を手配してコストがかかる梱包作業のインハウス化を行うとは考えにくいでしょう。ほとんどの企業が梱包のアウトソーシングを行います。

このような梱包作業のアウトソーシング需要に目を付けたのが「 Lumi 」です。

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「Lumi」はEコマース及びサブスクリプションボックス事業者向けに、梱包作業のアウトソーシングを請け負うサービス。 2009年創業、ロサンゼルス拠点 。2018年2月に約900万ドルの資金調達を発表しました。

これまでサブスクリプションボックス業者は各自で梱包業者を探す必要がありました。

そこで「Lumi」は全米の梱包工場をネットワーク化し、利用者はダッシュボードを使って全米各地の工場を指定するだけで梱包プロセスの発注が可能になりました。

梱包から顧客へ商品が届くまでの配達履歴のトラッキングもできるので、事業者はサービス開発に集中できるメリットがあります。アメリカの主要配達事業者が持つ、各地の発送センターから50マイル以内に提携工場があるため、迅速な発送作業が担保されています。すでに提携工場数は1,000を超え、これまでに携わった梱包プロジェクト数は1.8万に及ぶとのことです。

梱包工場のネットワーク化は王道モデル:「Factory As A Service」

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Image by  Benjamin Linh VU

筆者が「Lumi」の話を聞いた際に真っ先に思い浮かんだビジネスキーワードは「Factory As A Service(ファクトリー・アズ・ア・サービス)」。一見、他社から見ればコストになるサービス内容を自社で提供しているように見えますが、あくまでもソフトウェア開発に注力して、ボトルネックになる部分は既存業者のネットワーク化で解決を図る王道パターンです。

例えば、Yコンビネータ出身で、企業の税務管理プロセスをアウトソーシングできるサービスを提供する「 inDinero 」。同社は、企業の銀行アカウントと連携することで、Webサイト上で簡単にキャッシュフローや貸借対照表の参照ができるサービスを提供しています。細かいデータの監理から確定申告は専属の税理士が手がけるので安心です。

「inDinero」は、全米の税理士を束ねてネットワーク化することで、自社ソフトウェア開発と税理士紹介に徹しています。この事業モデルは「Finance As A Service(ファイナンス・アズ・ア・サービス)」と呼ばれ、低コストで急速スケールが可能なビジネスモデルを確立しました。日本で言えば「Freee」が該当するかもしれません。

アメリカのパッケージ市場は、 2025年には3,150億ドルを超える 巨大な成長市場です。「Lumi」はサブスクリプションボックス市場の成長見据え、業者が抱える課題点を的確に解決する手法を「inDinero」がやった専門家ネットワークの構築モデル参考にしました。彼らはソフトウェアの開発費のみで全米へ急拡大できるモデルを確立したといえるでしょう。

「Lumi」の目の付け所が上手な点は、競合他社と比較するとより明確になるでしょう。例えば、C2Cマーケットの販売者向けに、梱包作業の請負サービスを提供する「 Shyp 」。

利用者は「eBay」や「Mercari」「Amazon」で商品を販売している人の中で、梱包作業が煩わしいと感じている販売者です。「Shyp」の配達員にそのまま配達品を手渡すだけで、箱詰めから発送まで全てをやってくれます。

仕組みはシンプルです。アプリを使って配達したい荷物の写真をアップロードし、送り先の住所等の基本情報を入力すると10〜20分以内に配達者が到着します。配達者は「Shyp」が独自に構築したクラウドソーシング型の配達者ネットワークの中から最寄りの人が選ばれます。利用者は配送品をそのまま渡すだけです。ピックアップ作業が終わった後は配達者が「Shyp」の拠点工場へ配送品を持って行き、そこで各品に合わせた形でボックスが組み立てられ発送されます。

「Shyp」の課題点はコストと1回当たり収益の大きさです。独自で配達者ネットワークを構築するのは、バックグラウンドチェックを含めて、必要以上のプロセスを費やす羽目になるでしょう。加えて自社梱包拠点を持つので大きな固定費になりますし、C2C市場の梱包を請け負っている分、1回当たりの収益が小さいのが成長のネックになります。つまり初期コストが膨大になる分、収益は少しずつしか上がりません。

一方「Lumi」ではB2Bの梱包市場の独占を狙っています。B2Bに限定することで企業の信頼性が試されますが、一度構築したネットワークは非常に堅固なものになりますし、収益の安定化を図ることが可能になります。

梱包市場の動向:自動化の流れがやってくるのかに注目

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Image by  VFS Digital Design

最後に、梱包作業の自動化の未来に軽く触れたいと思います。

「Amazon」の梱包作業は未だ完全自動化されていません。 こちらの記事及び動画 によれば、在庫管理と在庫品移動のプロセスはロボットを導入できているようですが、未だ荷造り作業はマニュアルです。

一方、在庫品を振り分けるピックアップ作業は「 RightHand robotics 」のような自動識別ロボットの導入で、2〜3年以内には自動化されるでしょう。同ロボットは「Amazon」が主催するロボットの商品識別及び振り分け性能を競う大会「ピッキングチャレンジ」で好成績を収めています。

こちらの記事 によると、2016年に優勝したロボットは1時間当たり100個の物体を17%のエラー率でピックアップしたそうですが、「RightHand robotics」の方は500〜600個の物体をピックアップしたそうです。エラー率のデータは開示されていませんでしたが、ピックアップスピードは単純計算で5、6倍早くなっています。

「RightHand robotics」の登場により、例えば「Lumi」の提携工場に送られてきた商品をピックアップして各ライン毎に振り分ける作業の自動化が可能になるかもしれません。またピックアップ以外の梱包に関わる各タスクの自動化も長期的に見れば十分考えられるでしょう。

梱包作業のアウトソーシングから事業を立ち上げて、作業の完全自動化を図ることができれば、「Amazon」や「Walmart」のような大手小売企業による大型買収の未来も想定できます。もし「Lumi」がロボットを通じた自動化の未来にまで戦略を見据えているのならば、今後も数千万ドル単位での資金調達に成功できる可能性も考えられます。

日本は世界有数のEコマース市場を抱えます。未だにサブスクリプションボックス市場が北米ほど熱を帯びているとは感じませんが、「楽天」や「ZOZOTOWN」「Yahoo!ショッピング」に参画するEコマース事業者やD2Cメーカーの梱包プロセスを、「Lumi」と同じモデルでサポートすることで、急成長する日本のスタートアップが登場する可能性も少なくありません。あまり表立った市場ではありませんが、今後も梱包市場の動向に期待が集まりそうです。

via Forbes

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