マレーシアの自動車ポータル「Carsome」、シリーズBラウンドで1,900万米ドルを調達——東南アジアでの中古車市場の活性化を受け

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Carsome 共同設立者兼 CEO Eric Cheng 氏
Photo credit: Carsome

マレーシアの Carsome は、中古車市場での競争が超激化している東南アジアでの地位強化に向けて1,900万米ドルを調達した。同国において、最も高額のシリーズ B ラウンドの一つとなった。

このラウンドをリードしたのは、ドイツのメディア企業 Hubert Burda Media の VC 部門 Burda Principal Investments。Carsome の既存投資家である Gobi Partners、InnoVen Capital、Lumia Capital も参加した。

今回の動きは、昨年6月に Gobi がリードした600万米ドルの調達案件のほか、500 Startups、マレーシアのプライベートエクイティ企業 IdeaRiverRun、2016年3月に日本の IMJ Investment Partners が投資して200万米ドルを調達したシリーズ A ラウンドに続くものだ。

同社共同設立者兼 CEO の Eric Cheng 氏は Tech in Asia に対し、新たな資金は新規採用やインドネシアとタイを中心とする国外展開に活用すると述べた。

Tech in Asia のデータによると、今回の案件はマレーシアで二番目に大きいシリーズ B の資金調達である。最多金額は、コンテンツストリーミングサービスの iFlix が2016年3月に調達した4,500万米ドル

消費者から企業へ

2015年2月に設立された Carsome は、新車の価格比較サイトとして事業を開始した。クアラルンプールを拠点とするこのスタートアップは、続く8月に行われたシードラウンドで35万米ドルの資金を調達した後、中古車の買い手および売り手の需要に対処する方向に舵を切った。

同社は、「消費者から企業へ(C2B)」のプラットフォームを構築。これにより自動車オーナーは、オンラインで車をディーラーに売ることができるようになった。所有権の変更や決済など全ての手続きが1日で完了できる可能性も生まれた。

ベンダーは、このプラットフォームを使って車の査定データを確認できるため、現実的な価格を設定し、最も望ましい取引ができるようになる。ディーラーはそれをもとに、入札システムを通じて登録されている車に応札する。

Carsome は自社に車検チームも抱えており、プラットフォーム上で公表される前に中古車を査定している。

中古車売買に関する同社のアプローチに対し、市場は好意的に反応しているようだ。

同社はプレスリリースの中で、2017年の事業開始以来、月間総取引額は4倍以上になり、プラットフォームを通して販売された自動車台数が同じ期間に4倍に増加したと述べた。

収益性確保に向けた展望について聞かれた Cheng 氏は、「2019年初頭の損益分岐点到達に向けて、順調に推移しています」と答えた。

増加を続ける機会

東南アジアにおいて自動車を購入する見込みの消費者の数が急速に増加している。BMI Research の推計によると、この地域における自動車販売のペースは昨年、他のどの地域よりも高かった。東南アジア諸国連合(ASEAN)の2017年における新車販売台数は前年比8.1%増と、2016年の3.1%を上回る見通し。BMI が予測する2017年のアジア全体の増加率である3.7%と比較すると倍以上の伸び率である。

この調査では、カンボジア、フィリピン、ベトナムの3か国での市場成長率が著しいとされた。2017第1四半期におけるインドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ベトナム、フィリピンを合わせた新車販売台数は、前年同期比14%増だった。

このデータは新車に関するものだが、Cheng 氏の考えによると、これは中古車市場の潜在力も表しているという。Carsome のようなプラットフォームが果たすべき主な役割は、中古車に対する信頼と自信を消費者に与えることだと彼は言う。

東南アジアにおける国民あたり GDP は毎年更新を続けています。自動車保有率も同時に上昇していますが、それにより中古車購入への関心も高まっています。しかし消費者の信頼性を向上させるには中古車の品質が特に重要です。この問題に対処するため、Carsome では購入決済と保証のソリューションを提供する計画です。

Cheng 氏によると、Carsome では今年、プラットフォーム上で新たな自動車ローンや保証のソリューションを徐々に導入していくという。

資金決済については当面、エンドユーザ向けよりも先にディーラー向けの提供に特化する予定である一方、Carsome で予定されている保証プログラムについては、自社の車検基準に基づくものになると述べた。

現在、中古車の90%には保証が付けられていません。それにより中古車の品質に対する消費者の信頼が低下しているのです。このプログラムによって買い手の間で消費者に信頼を植え付けるのに役立つ一方、市場における中古車ディーラーのイメージも向上するでしょう。

Carsome は、資金力のある競合と対峙するにつれて多角化が重要な要素であることを証明してくれるだろう。競合は全て、自動車保有ニーズの高まる東南アジアでの利益獲得を求めているのだ。

混み合う戦場

Cheng 氏の話では、査定、検査、所有権移転、決済をカバーする Carsome の C2B モデルは、CaramoCarro といった C2C サイトや、Carousell Motors その他ネットオークション事業者といったディーラーと見込み客をつなぐ B2C ポータルを含む様々な競合とは一線を画すのに役立っているという。

しかしながら、東南アジアでワンストップショップになろうとしているのは同社だけではない。

インドネシアの VC 企業 Intudo Ventures とドイツの Frontier Car Group によるジャカルタ拠点のジョイントベンチャーである中古車マーケットプレイス BeliMobilGue は1月、Intudo がリードするプレシリーズ A ラウンドで370万米ドルを調達した。同社は、調達資金を国内展開および隣接する市場への進出に活用する計画だ。

BeliMobilGue の広報担当は Tech in Asia に対し、同社のセールスポイントは、連携可能な価格データが多いことだという。

このスタートアップはデータを収集、分析しているため、将来の販売のために提供される中古車の査定と検査が迅速にできるという。その後、検査レポートを同社の携帯アプリにアップロードすると、個人の買い手は希望の自動車に応札できるようになる。売り手が取引を了承すれば BeliMobilGue は買い手が支払う金額の一部を受け取る。車が引き取られるまでは、同社の配送センターで保管される。

この業界にいる他社は、より身軽で、オンライン取引のみのマーケットプレイスやクラシファイドモデルを指向している。

マレーシアを拠点とする iCar Asia は、母国のほかインドネシアとタイで自動車販売ポータルのネットワークを運営している。

Rocket Internet によりローンチされ、自動車に関するクラシファイド広告サイトの世界的なグループである Carmudi は1月、掲載台数の増加と技術サービスの向上を目指して1,000万米ドルを調達した。このラウンドでは、HV Holtzbrinck Ventures、 Tengelmann Ventures、Rocket の地域ベンチャービルダーの Asia Pacific Internet Group(APACIG)が共同でリードした。

BMI の調査では巨大な事業機会のあることが示唆されているにも関わらず、市場に割って入るのが難しいことが証明されることもある。

Carmudi ブランドは複数のアジア太平洋諸国で浸透しているが、他社と比較すると一部の国ではあまり上手くいっていない。昨11月に Rocketは、Carmudi のベトナム事業をスウェーデンのベンチャービルダー Fram に現金のみの取引で5万米ドルにて売却した

Fram によると、Carmudi Vietnam の2016年会計年度における収益は16万9,000米ドルであったのに対し、51万8,000米ドルの損失を計上したという。しかし同時に Tech in Asia に対して、この事業を「収益に対しそれほどの、あるいはいかなるマイナスの影響を及ぼすことなく」以前の4分の1の運営費で操業していきたいと話していた。

状況は現在も進展している。最新情報を確認するようにしてほしい。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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