食品工場の〝紙記録ゼロ〟を目指す「KAMINASHI(カミナシ)」がβローンチ、500 Startups JapanやBEENEXTなどから5,000万円をシード調達

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ユリシーズのメンバーと、今回のラウンドに参加した投資家の皆さん
Image credit: Ulysses

東京に拠点を置くスタートアップのユリシーズは16日、シードラウンドで 500 Startups Japan、BEENEXT、名称非開示の1社から総額5,000万円を調達したと発表した。あわせて同日、食品工場に特化した現場データを集計・管理する SaaS「KAMINASHI(カミナシ)」をβローンチした。KAMINASHI は、食品工場の現場で手書きで行われている帳票記録をデジタル化するサービスだ。例えば、温度計の計測温度を紙で記録していたものを、データとしてクラウドに自動保存することで業務の効率化を図る。

ユリシーズは2016年12月の設立。代表取締役の諸岡裕人氏の実家は航空機の機内食製造工場を営んでおり、諸岡氏のここでの体験から KAMINASHI が生まれることになった。

KAMINASHI
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機内食製造工場では、万一クレームがあったときに食品の安全を担保するために、1工程あたり30〜40種類程度の帳票を恒常的に記録している。諸岡氏は1日の製造工程がひと段落してから、記録された帳票をチェックする業務に就いていたが、工場では日本語の読み書きが必ずしも得意ではない外国人労働者も多く、ミスなどの確認作業で、毎日チェック作業が終わるのは夜の11時や11時半になっていたのだという。

今日のようなデジタルな時代にもかかわらず、食品工場の IT 化が進まない理由の一つに莫大なコストがある。2020年の東京オリンピックを前に厚生労働省は国際的に統一された努力目標の HACCP(ハサップ、危害要因分析重要管理点)による管理手法を義務化しているが、食品工場が独自システムを構築するには最低でも1億円程度の費用がかかるため、結果として手書きの帳票による管理手法が続いているのだそうだ。

KAMINASHI
Image credit: Ulysses

WiFi さえあれば、導入できます。食品業界全般で利用できますが、メインターゲットとしているのは食品工場。ユリシーズには、給食工場、食品工場、飲食デリバリ大手などから問い合わせをもらっています。(中略)

製品を一品だけやっているところはこれまでも機械化しやすかったのですが、多品種少量生産をやっている工場はそれが難しかったので、KAMINASHI が刺さりやすい。種類が多いところは機械に頼れず、人間が記録しているからです。惣菜関係を製造する食品工場とかは、特に相性がいいですね。(諸岡氏)

ユリシーズは今回調達した資金を使って、生産性管理に関する新機能の開発やサポート体制の強化を図るとしている。

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