ロンドン開催「Blockchain International Show」参加を通じて見えた、仮想通貨・ブロックチェーン業界4つの世界トレンド【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.6.13

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Image credit: BIS London Show

6月6日〜7日の2日間にわたり、ロンドンで開催された「Blockchain International Show(BIS)」に参加してきた。本カンファレンスは国際イベント運営会社 Smile-Expo が主催し、ヨーロッパを中心に世界各国で開催されている。今回は30名の登壇者がそれぞれテーマを持ち寄り、仮想通貨やブロックチェーンを取り巻く現状、未来について議論がされた。メイン会場の外には、ヨーロッパを中心に活動する28のプロジェクトによる展示ブースが会場を賑わせていた。

このカンファレンスへの参加を通じて感じた、世界における「4つのトレンド」について、講演内容を一部抜粋しながら紹介したい。

カンファレンスの流行

インターネット上で「Cryptocurrency Blockchain Conference」などと検索すると、仮想通貨やブロックチェーン分野において数多くのカンファレンスが世界各国で開かれていることがわかる。直近で言えば、アメリカで開催された「Consensus 2018」が記憶に新しい。なぜこれほどまでにカンファレンスが開かれているのか。また、チケットが1枚10万円を超えるものも多い中、なぜ多くの来場者が会場に足を運ぶのか。

確かに、IoT や AI などフィンテック領域では今尚多くのカンファレンスが世界各地で開かれており、仮想通貨やブロックチェーンもまたその類に当たるのかもしれない。しかし、この分野において、カンファレンスが流行している理由は別にあるように思う。「プロモーションの連鎖」とでも言えば良いだろうか、主催者、登壇者、来場者の利害関係が完全に一致しているのである。

  • 主催者……登壇者、来場者を増やし利益を得たい。
  • 登壇者……自身のプロジェクトを PR して(間接的に)利益を得たい。
  • 来場者……報告記事あるいは報告会によって(間接的に)利益を得たい、または新たな投資先を見つけ(将来的に)利益を得たい。

どの業界のカンファレンスについてもこのような利害関係は言えることであるが、仮想通貨やブロックチェーンでは相性が良すぎる。他のフィンテック領域とは異なり、投資的側面を含むこともその要因だろう。そのため、今ある仮想通貨やブロックチェーン分野のカンファレンスは、講演内容が議論というより PR 寄りであるものも多い。

証券型トークンの流行

Image credit: Baroque Street

今回 BIS の講演内容で多く取り上げられたテーマの一つに証券型トークン(Security Token)が挙げられる。何かしらの資産の裏付けがあり、保有高に応じて配当等が割り当てられる通常の証券をイメージしていただければ分かりやすい。世界的なトレンドとして「今ある証券市場に似た証券型トークン市場が近い将来できるだろう」と主張する人は多い。

今回のカンファレンスでも、Arnab Naskar 氏(ICO コンサル会社 SICOS の CEO)や Eddy Travia 氏(投資会社 Coinsilium の CEO)といった複数の登壇者から証券型 トークンに関する議論がなされた。日本においても、AnyPay の木村新司氏をはじめ、業界界隈で同様の主張をする人はいる。これらの主張の正否はさておき、興味深いのは事業投資の目線を持った人たちが同じ未来を見ているということである。

仮想通貨の証券性については今年に入って米国証券取引委員会(SEC)を中心に多くの議論がされてきた。規制を回避しようとトークンを Utility Token(証券性の無いサービス内通貨)設計にするプロジェクトも増える中、証券型トークン市場の形成には課題も多いが、アメリカの動向次第によっては一気に証券市場としての仮想通貨市場の形成が進むかもしれない。

プライベートセールの流行

イニシャル・コイン・オファリング(ICO:トークン発行による資金調達)には、プライベートセールとクラウドセールがある。一般に言う、私募と公募と位置付けに大きな違いはない。今ある ICO プロジェクトのほとんどはクラウドセール(あるいはプライベートセールと両方)によって資金調達を行なっている。

しかし、「将来的にはプライベートセールが主流になるだろう」との主張もまた世界的な議論のトレンドと言える。登壇した Juergen Hoebarth 氏 (クリエイティブコンサル会社 Hexagon Concepts の CEO)や James Roy Poulter 氏(投資コンサル会社 Blockchain Reserve の CEO)の話は、ベンチャーキャピタル(VC)の ICO 参加が次第に増えていると語った。

今やスタートアップ企業の資金調達手段として一般的な VC であるが、ICO が登場してまもなくは、そのほとんどが不透明感から ICO を敬遠していた。しかし、今では多くの VC が投資先として有望な ICO プロジェクトを探している。実際に筆者が面談した ICO プロジェクトの中には、VC へのプライベートセールによって資金調達したという関係者も多い。ICO 投資企業といった新たなプレイヤーの登場もまた、VC の ICO 参加を促していると思われるが、今後規制や管理コストの観点からもプライベートセールによる調達割合が増える可能性は十分に考えられる。

金融領域外でのブロックチェーン技術の流行

オランダ政府ブロックチェーンチームの責任者 Marloes Pomp 氏
Image credit: Baroque Street

昨年以降 ICO の数が激増したことを受けて、特に金融分野においては国際資金決済、店舗決済、レンディング等似通った事業内容のプロジェクトが乱立している。限られたコミュニティ内での運用を目指すならばまだしも、その多くは世界規模での運用を構想に掲げており、取引所についても言えることだが、今後競争による自然淘汰が進んで行くだろう。

今年に入って金融領域外でのブロックチェーン技術の応用を目指す ICO が増えている。今回のカンファレンスにおいても人材マッチングへの応用を目指す HiDone や芸術作品の保有権利への応用を目指す ArtNoy、ゲーム領域への応用を目指す Game Protocol 等多くの特徴的なICOプロジェクトが多く見られた。

また、オランダ政府ブロックチェーンチームの責任者 Marloes Pomp 氏の講演では、廃棄物運搬処理や妊婦の健康管理、寄付金といった様々な分野へのブロックチェーン技術の応用を政府とICOプロジェクトが一体となって検討しているとの話もあり、今後世界各国でブロックチェーン技術をどの業界・分野で応用できるかといった実用化を目指した議論が進んでいくと思われる。Pomp 氏が最後に語っていたが、真に実用化できるかどうかは次の段階の議論であり、まずは国・政府としてどういった技術的な応用が可能かを学ぶ段階にある。日本はこの業界における官民連携がヨーロッパ各国に比べ足りないように思う。

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