ブロックチェーンが実現する「個人」の時代(後編)

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前編からの続き。後半では壇上で議論された規制のゆくえ、それとブロックチェーンがもたらすインターネットビジネスの変革についてその可能性をお伝えする。

通貨とユーティリティの規制は分けるべき

暗号通貨関連の話題を追いかけている人であれば理解できると思うが、デイリーのニュースは値動きと各国規制の話で埋め尽くされている。これは暗号通貨が主に投機ツールとなっているためであり、例えば昨年に発生した中国におけるICO全面禁止のニュースは相場に大きな影響を与えたと言われている。

規制の話題の影響力が大きくなる一方、その理解は大変難しい。まず、国によってそのルールは異なるし、また、発行される暗号通貨やトークンの利用目的、機能によっても規制対象となるかどうか判断は分かれる。例えば先日本誌でお伝えしたセキュリティ・トークンは明らかな有価証券であり、これを日本で展開するのは正しい法規制を遵守する必要がある。

問題はこういう規制を十把一絡げで強めることで「もったいないこと」が発生する可能性があることだ。モデレートを務めた渡辺氏もこんな指摘をしていた。

「取引所は日本だけではありません。国内の規制が強くなる一方、スイス(ツーク州)やエストニアは外貨を取りたいわけで自由に開放している。こことどう折り合いをつけるのかというのが日本の省庁の課題」。

国内で暗号通貨を発行する場合、金融庁の認可や取引所での取り扱いなど、相当高いハードルが用意されている。一方で発行体が海外法人であれば抜け道はいくらでも用意されている。それでもって日本人が購入してしまえば日本の資金はどんどん海外に流出してしまうことになる。

木村氏はこの課題に対してより進んだ規制の解釈が必要だと語る。

「仮想通貨で膨れ上がったお金がユーザーの手元にあるわけです。それを現実世界に戻す必要がある。それがユーティリティなのか、セキュリティ(有価証券)なのかで法規制も変わってくる。その整備いかんで日本にお金が返ってくるかどうか影響してくるんじゃないでしょうか」。

取引所タイプのビジネスが資本力と経験、信頼性などの必要な大人の戦いに移行するなか、スタートアップのような新興企業の戦場は徐々にDAppsのようなアプリケーションレイヤーに活路を見いだすことになるだろう。その場合、彼らが発行するトークンが国内のどのようなルールで運用されるかによっては、引き続き海外への資金やプレーヤーの流出は避けられないのかもしれない。

マイナーを呼び込まなければ未来はないーーコミュニティの重要性を認識すべき

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CryptoKittiesのキャラクターはイーサリアムで取引される

ではDAppsに活路を見いだすとして、具体的にどのようなモデルが有望視されているのだろうか?参考になるモデルのひとつにCryptoKittiesが例として挙げられる。ブロックチェーン時代のポケモンと表現した記事もあるように、仮想キャラクターをトレードできるシンプルなマーケットプレースだ。

特筆すべきはそのキャラクターが最高額で20万ドルもの値を付けた、という事実だ。

これはコピーがやりたい放題だった従来インターネットでは考えられない世界観で、ユニークなデータを保持してトレードができるブロックチェーン技術ならではのサービスと言えるだろう。ゲームエンターテインメントに精通している國光氏はここがまず最初の起爆剤になると予想する。

「やはりゲームエンターテインメントは面白いですね。インターネット時代はコピーができるので、NetflixにしてもHuluにしてもコンテンツを販売するんじゃなくて視聴というサービスを売るモデルでした。ビットコインはそのものはデータであるけどユニークで取引できる。コピーできない。ここが凄まじく面白い」。

実際にソーシャルゲーム大手のアクセルマークは先日、dAppsへの事業参入を発表して株価がストップ高を示すことになった。市場もまたゲームエンターテインメントに対してはここへの舵取りを期待しているのだ。

一方でこういったトークンエコノミーを考える上で、重要になるのがマイナーの存在だ。

木村氏も指摘していたが、誰かにトークンを使って送金する場合、そこにはCPUリソースが必要で電気を使うことになる。この「役務」を分散的に担ってくれているのがマイナーであり、彼らのコミュニティがあるからこそこの世界が「非中央」「分散型」と呼ばれるのである。しかし、残念ながら日本は電気代が高く、マイニングした際の報酬が割に合わないことからコミュニティの存在は希薄と言われてきた。

去年に発生したビットコインとビットコインキャッシュの分裂は、こういうコミュニティの存在があればこそ起こったわけで、プラットフォームの命運そのものを決める重要な存在なのである。日本がもし、今後、暗号通貨を大きなビジネスチャンスと捉えるのであれば、何らかの方法でコミュニティを育成する必要がでてくるだろう。

個人の時代がやってくる

今回開催されたカンファレンスのテーマでもあるのだが、トークンエコノミーの出現によってより個人が重要視される時代が近づいてきた。ブロックチェーンはP2Pでのセキュアな取引を可能にしたし、昨今起こっているインフルエンサーやフリマアプリ、クラウドファンディング・ソーシングなどの事象も、これまで大企業で集中的に管理してきた資本やサービスが個人の手に戻っている流れのひとつと捉えることもできる。

具体的に考えてみよう。音楽をやっている人はこれまでミリオンヒットのようなごく僅かな大成功のみが「成功」とされる狭き門だった。しかし前述のようなP2P世界が広がればまた違った景色が見えてくる。

フォロワーがしっかりと付いているようなアーティストであれば、十分に作品は売れるようになるだろうし、さらにそこに個人が発行するコインがあれば、それを取引する人たちの手によって作品の価格はちゃんと適正なものに調整されるだろう。

セッションの最後に渡辺氏が「今回のディスラプトはデカい」と締めくくっていたが、スマートフォンシフトの時に乗り遅れた事業者がその後どうなったのかは歴史が証明してくれている。これを実感値として今、感じられているかどうか、行動できているかどうかは本当に重要なのではないだろうか。

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