起業はアート、ビジネスは科学−−マイネット上原氏が語る企業の成長と失敗から得られる学び

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あらゆる起業家は様々な困難と苦労に立ち向かいながら事業を進めている。成功だけではなく、失敗からも大きな学びがあることは言うまでもない。

マイネット代表取締役の上原仁氏はNTTレゾナントに勤務し、2006年に起業。ソーシャルニュースサイト「newsing」などを運営していた。現在はソーシャルゲームの開発へと方向転換を果たし、シンガポールや韓国などに海外子会社を持つ。

同氏がMOVIDA SCHOOLで語った、企業の成長と失敗から得られる学びについてまとめた。

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マイネットの理念

現在は社員80名を抱え、事業としてはスマートフォンアプリを開発している。企業理念は「どこでもドアの実現」。つまり、インターネットを通じて会いたい人に会える社会の実現だ。時折、夢のようなものや具体性のないものをできるわけがないと指摘する人もいるが、科学でほとんどのことは実現できるのであり、それらを追いかけていくのが起業家だ。思考を停止せず、実現できると信じて突き進んでもらいたい。

自身の価値観で世界に届ける

日本のスタートアップとして世界に進出しようと考えているのならば、日本出自の価値観を世界に届けるようにすべきだ。海外に出て、その国の価値観にこちらが合わせるようなものを作っても上手くいかない。自身が持つその価値観を大事にして、売り込んでいったほうがいい。

ビジョンを共有し、起業準備をする

創業含めると約10年の出来事があり、これまでに成功も失敗も経験した。もともと大企業で働いていたが、それまでのキャリアを辞めて、自分でやってみようと考えた。もちろん、それが合理的な判断ではないと周囲から指摘されたが、自分でやってみたい強い思いがあった。

創業の準備として、まずは人の輪を広げることから始めた。オフラインイベントを定期的に開催し、自分が場を仕切ることで、人との縁を築いていった。事実、創業メンバーのうち2人はそこで見つけることが出来た。しかし、その当時はなんでも一人で考えようとしていた。特に、会社の理念や方向性について一人で悩んでいた。ゴーイング・コンサーンを目指す起業のメンバーは、思いや人間性で集めるべきだと思っている。サービスやプロダクト中心で仲間を集めると、別の事業に移った時にその人たちは離れていく。ビジョンを共有し、しっかりと事前に議論しておくことが大事だ。

社長の仕事は決断をすること

会社設立期は、あらゆるフェーズの中で一番充実する時期だ。毎日が楽しく、受託をやりつつサービスを開発し、初年度から黒字をだしていた。創業から約1年半は創業オーラが出ると言われている。最初のスタートダッシュでよい人材や衆目を獲得することができれば、次のステップにつながることができる。この頃の失敗は、社長がなんでもやりすぎたことだ。社長はビジョンを持ち、明確な判断をすることが仕事。なんでもやれるは何もできない、という気持ちを持ち、自分自身ですべてをやろうとしないことだ。

現状分析と仮説検証を怠るな

初年度を黒字化し、CGMサービスなどを開発し、投資もいくつか受けて6つほどの自社サービスを運営していた。この頃はメディア露出も多く、世間から注目されていた。しかし、目立つことと儲かることは違う。目立つこと露出することに躍起になり、かつて企業で働いていた時に実施していたサービスのKPI設定や、PDCAのサイクルで定量的に事業を回す現状分析と仮説検証を怠って突き進んだ結果、事業が成長しなかった。どんなに勢いがあり調子が良くても、基盤となるPDCAや仮説検証は怠ってはいけない。

自社サービスに集中する

リーマン・ショックの前後頃から大企業の研究開発の予算が減少し、次にサービス開発、そして現場へとお金がなくなってくる時期になった。そのため、自社サービスに集中する決断をし、単体での黒字化を目指した。集中する事業領域の選定基準は、「収益」と「業界1位」と「情熱」の3つの円が重なる領域を選ぶこと。スタートアップであっても、マクロ経済は勉強しておくほうがいい。社会情勢は、遠からず自分たちの業界や事業運営に関わってくる。

この頃は、ひたすらに事業を推進させようと躍起になっていたせいでスタッフの心が折れ、退職するメンバーも何人かいた。どんな企業であっても、仲間の精神状態や葛藤、モチベーション維持のためのマネージメントは必要だということを知っておいてもらいたい。

起業はアート、ビジネスは科学

2009年から2010年にかけてはとにかく黒字化を積み上げ、ストック収益を作ることに励み、企業としても成長期へと移っていった。KPIを設定し、コンバージョン率を高めるための施策をし、ビジネスモデルを日々組み立てていくことで確実に成長していった。

起業はアートだが、ビジネスは科学だ。起業は思いで創り上げるものであり、論理ではない。しかし、ビジネスは科学的な思考をもとに、数字を上げるためのロジカルさが必要だ。

事業の成長限界を読む

当たり前だが、成長期と成熟期がきたら衰退期が訪れる。事業の成長限界を読み間違え、当時のガラケーからスマホへのシフトに出遅れた。その頃から、仲間との事業に対する考えの食い違いも起き、パートナーと別れることとなった。時代の流れ、事業の成長限界を見極め、事業展開の修正を図っていかなければいけない。

とにかく生き延びてサバイブすること

ガラケー事業を撤退し、スマホ事業へ投入した。その後、事業として月商が3倍になるまで集中しようと大好きなお酒を絶つなどの制約を課した。それくらい事業一筋に没頭した。とにかく生き延びること、サバイブすると決めて走り続けた。結果、月商は4倍近くにまで伸び現在に至っている。

リーダーはとにかく決断をし、成長し続ける場所を探して走り続けなければいけない。決断というリーダーシップを発揮し、意志の力でチームを引っ張ることで、不可能を可能とすることができる。これこそが、起業家として一番忘れてはいけないことだ。

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