ウェブサービス開発にはエンジニアの存在が必要であり、彼らをまとめて組織の技術力を向上させるCTOは、企業を成長に導くキーとなる存在だ。
ハウツーサイトnanapiを運営するnanapi取締役CTOの和田修一氏は、2005年に楽天に就職、2009年から同社代表取締役の古川健介氏とともにnanapi.jpを立ち上げた人物だ。
同氏がMOVIDA SCHOOLで語った、CTOに必要な役割とエンジニアの組織づくりについてまとめた。
ビジョンとマネジメントが必要な「役員型CTO」
CTOには、大きく2つに分類されると考えている。その1つが役員型CTOだ。私自身がまさにこちらの立場で、役員型CTOはエンジニアリングだけでなく経営全般に対しても責任を持ち、コミットしていかなけばならない。そのため、技術よりも経営を立場上優先しないといけない場合もある。
もちろん、役員といえども技術力は必要だ。ビジョンを持ち、技術力をもったエンジニアとコミュニケーションができ、組織づくりのためにマネジメントをするポジションにならなければいけない。
圧倒的な技術力をもった「技術リーダー型CTO」
もう一つは、技術リーダー型CTOだ。技術型は、圧倒的な技術力によりメンバーから尊敬される立場であり、社外からの評価も高い。取締役に就任しない代わりに、スーパープレイヤーとして企業の中の技術部門を牽引していく存在だ。もちろん、組織づくりなどへの分野はコミットは必要ないため、社長が技術型CTOをハンドリングする必要がある。
組織にとって、どちらのCTOタイプが良いかを考える
社長が技術について分からないならば、役員型CTOがエンジニアを組織していくべきだ。逆に社長がエンジニアを理解し、マネージメントが可能ならば技術リーダー型CTOのもとで開発を強化していこう。
どちらが良いというものではなく、社長の素質や組織体制にとってどちらのタイプが必要なのかを見極めることが大事だ。
サービスにどのような技術が必要かを考える「サービス指向型」エンジニア
またエンジニアも2種類に分類される。1つがサービス指向型のエンジニアだ。どんなサービスを作り、そのサービスに必要な手段として技術を見据えている人間のことを指す。UIやUXなどデザイン面にもこだわりも持ち、サービスを形にするためにどうすべきかを考えられる人間だ。
とことん技術を突き詰める「技術志向型」エンジニア
もう一つは、技術志向型のエンジニアだ。自身の技術をとことん追求し、ひたすらコードを書き続けていくことに熱意を持っている人間を指す。1つの分野に特化したエンジニアは、企業としての本質的なアセットになり、時に大きなイノベーションを生み出す可能性を持っている。
サービスのフェーズに応じて必要なエンジニアの役割
サービス志向型も技術志向型もどちらもが必要であり、組織にとってどのようにバランスを取っていくかを考えなければいけない。初期のウェブサービスやアプリを立ち上げようとするならば、サービス志向型の方がバランスの取れたよいサービスを作りやすい。しかし、サービスとしての追求をしていくのならば、技術力がないとサービスとしての質は向上していかない。
CTOは採用にフルコミットしろ
エンジニア採用の過程は仕事量が多い。連絡や内定通知、書類審査などは雑務ではなく、すべてが採用のプロセスとなる。nanapiの場合は選考フローはすべてCTOが担当し、採用要件の作成や求人票の確認、書類審査や一次面接、内定後のフォローなど採用すべてをカバーしている。
良いエンジニアを採用するためには、エンジニア自身で面接すること
今はエンジニア側が働く場所を選べる時代だ。そのため、採用側はいかに入社してもらうためにエンジニアをやる気にさせるかが大事だ。面接時には、どういった言語が書けるかではなく、どういった分野の技術に興味があり、システムを作る上でどこにこだわりがあるのか、その分野に対してどういった考えを持っているのかという人間性を引き出さなければいけない。
エンジニアの気持ちはエンジニアにしか分からない。面接などの採用プロセスは、同じエンジニア部門の人間と採用過程を共有させ、納得のいく採用を実施しよう。
働くために必要な最高の環境を整えること
エンジニアは、自身の働く環境に対して強いこだわりを持っている人たちが多い。そのため、意見を尊重して働きやすい環境を作りあげることが大切だ。Macが使えない、支給されるマシンスペックが低いなどの条件では駄目だ。働く環境のために必要な設備投資を惜しまず、最高の働く環境であることをアピールしよう。
人が増えても崩壊しない組織づくり
CTOが現場にいることは大事だが、時に現場にいることでボトルネックになることもある。エンジニアと同じ目線だからこそ見えてこない問題もある。nanapiでは、組織図を作りプロジェクトやサービス軸で組織を構成し、エンジニアやデザインの品質を保つために横断的にマネージメントするチーフを設置して組織を運営している。
スーパープレイヤーがいることはたしかに大事だが、スーパープレイヤーに頼りすぎな組織は脆い。できる人間だけではなく、組織としてサービスを開発できる体制づくりを構築することで、組織がスケールしても対応できるチームを作ることができる。
ビジョンを浸透させ企業を成長させよう
サービスを開発する企業の役員は、組織全体に対してしっかりとビジョンを浸透させなけばいけない。そのためには、しつこいくらいに言い続けていくことが大事だ。ビジョンを浸透させるのは役員の仕事であり、ビジョンを強く描き社長とともに企業を成長させることを忘れてはいけない。
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