【投資家・起業家対談】「成長が止まった時、死ぬほど考えた」ーーインキュベイト和田氏×ビヨンド一谷氏

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投資家と起業家の関係は興味深い。特にシード期の投資家と起業家は共同で経営にあたり、資金だけでない特別な関係を結ぶことが多い。そこにはどのようなやり取りや葛藤があるのだろうか。

このインタビュー・シリーズでは、投資家と起業家のお二人に対談形式でその内情を語って頂く。前回に続いてインキュベイト・ファンド共同代表パートナーの和田圭祐氏とビヨンド代表取締役の一谷幸一氏。

一谷氏と和田氏の年表
2006年:24歳の一谷氏と和田氏、サイバーエージェントで出会う
2007年:和田氏が25歳でファンド(セレネベンチャーパートナーズ)設立
2008年6月:一谷氏が26歳で起業、ビヨンドを設立
2009年12月:和田氏がビヨンドに投資
2012年:グロービス・キャピタル・パートナーズからシリーズAラウンドとなる第三者割当増資を実施。

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外れたシリーズA以降の「アプリ量産」戦略

前回からの続きーー

和田:分かりやすい戦略だったけどワークしなかった。プラットフォーム側の規約ひとつで左右される影響が大きすぎた。

一谷:確かに社員が大分動揺してたのは覚えてます。「この戦略大丈夫なのか?」って。

和田:当時って一谷さんの考え方ちょっと雑だったかもね。収益が立ちそうな所を発見してそこを攻めるのが得意な反面、プラットフォームの意向ひとつで影響受けたり、基盤が崩れたり。その後に骨太な事業を作る体制に舵を切れたのがよかった。

一谷:でも、(アプリ量産が失敗に終わって)じゃあその次何やるんだって。経営会議は難航してましたよね。

和田:うん。ちょっとしたミニゲーム作るとかそういうのは社内からも出てくるんだけどね。それやってどれだけ大きな所を狙えるんだって。これじゃあ前の繰り返しになるんじゃないかと。次やる事業はホームランを狙いにいこうよってことになった。

和田:「さあ、どうする」って、あの時はあらゆる目線を変えてました。

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SD:何かきっかけってあったんですか?

一谷:これまでの延長線上で軽いものを作っても何も積み上がらないのは分かってたんですよね。そこでいわゆる「ダム」という、ユーザーをプールできるもの、プラットフォームを狙おうということになったんです。さらにツールではなく、コミュニティサービスでなければ横の展開が生まれづらい、事業を載せにくいんです。こういう話を合理的に進めてました。

和田:経営会議では私と高宮さん(グロービス・キャピタル・パートナーズの高宮慎一氏)、経営チームでどう変わるんだって話を散々してました。究極的には「一谷さんってどういう勝負をしたいんだっけ?」って話になってましたね。そうしたら目先の細かい収益はさておき、これで振り抜けるっていうところまで吹っ切れた。

一谷:その時はビジョンや戦略などをまとめるのに合宿したり自身のほとんどの時間を割いてましたね…。

和田:そうだよね。ただあのタイミングで人も少し離れたりしたよね。

一谷:心えぐられるような気持ちってああいうのを指すんでしょうか。当時は諦めるわけにいかないって自分に言い聞かせてました。

和田:確かに足下の収益で数字を出して達成感を得てきたチームだったから、この収益基盤がぐらつく事態というのは厳しかったよね。目に見える数字を追いかけるのって安心感あるもんね。

一谷:そうですね。

和田:何をやるっていうのをゼロベースから考え直さなきゃいけない状況になって、強烈なストレスがかかるわけだから、追いかけられる人だけが残るのは必然かもしれない。一谷さんは辞めたいとかってあった?

一谷:さすがにそれはなかったですね。自分がどうなりたいかは考えましたよ。同時に組織はつくらなきゃいけないし、そこにウルトラCはないわけで、もうここは「一歩一歩しかない」って毎日言い聞かせてました。

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起業家のスイッチが入ったきっかけ

SD:回答って出たんですか?

一谷:スマートフォンでプラットフォームを作ろうと。

和田:もはやランキングが上がっては消えていくアプリはもうどうでもよかったのよね。それよりもユーザーが長く集まって愛される場所を作ろうって。そういう舵切りだったね。

一谷:その結論が出るまでの間、和田さんと毎週一回以上会ってましたよね。

和田:うん。ちょっと儲かりそうなアイデアはいっぱい持ってるんだけど、それらの小さなアイデアの延長線上で実現したい世界が見えてこなくて。

「で、一谷さんが目指しているものって何でしたっけ?」ってことを、色んな角度から百回ぐらい聞き続けた覚えがある(笑。

一谷:確かに。本当にそのときは何度も自分自身に問い続けることで磨かれていきましたね。

和田:単純に収益がおいしそうとかそういうのじゃなくて、世の中に何を問いたいんだっていうのが明確になっていったよね。

SD:和田さんは一谷さんの「起業家スイッチ」を入れられたんですか?

和田:あるひとつの事象をもってスイッチが入ったってことはないんですが、「これさえ成功すれば後のチャンスはどうでもいい!」って思えるようになってきて、その覚悟が見えてきたのは事実ですよ。

ただ、今もまだまさに苦しんでいる最中とも言えるんです。だって次に出すアプリがまだ当たってませんから。

一谷:そうですね。道中ではありますが、やることが明確になったことで組織としても次のフェーズに向けての準備が整いつつあります。

和田:いいチャレンジは出来てると思ってるんだけど。これまでと違ってさ、アプリで多少の収益を稼ぐとかそういうのじゃなくて、大きな世の中のインフラになろうよって考えにシフトしたわけだし、やってて楽しいよね。

一谷:やっぱりそこ大切ですよね。

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器用貧乏からの脱出

SD:前回がビッグマウス対談ということもあったので、やはり一谷さんも起業家として大きなものを目指したりってあるんですか?

一谷:それで言えば「世界のメディア王になる」っていうのが実はキーワードでありまして。

和田:本当にそれは最初の頃から変わらないよね。じゃあそれを目指すとして今何やってなきゃいけないのっていうのを考えてきたといえば、そうとも言える。

一谷:大変な時とか、結構この言葉に救われたりすることもあります。はい。

和田:さすがにさ、エモジバだけをやってた頃はさすがに世界のメディア王はイメージしづらかったけど、やってく中で色んな事業の経験を積んでみると徐々に「狙えるかも」思えるようになるのが面白いよね。

経営者としての成長や組織の経験値が溜まってくるとさらに一歩、二歩先を目指したくなるっていうか。

一谷:想いっていうんですか、そういうの強く持つようになりましたね。確かに過去、私って器用貧乏なところがあって、他社を見て「これはいけるんじゃない」って取り組むとやっぱり多少はできたりしちゃったんですよね。でも会社の規模も大きくなってくるとさすがにそれは無理になってくる。

和田:5年前の一谷さんのままだったら、経営者というより、インターネットメディア作って器用にそこそこの広告収益あげるのが上手なだけの商売人で終わったかも(笑。

一谷:厳しい(笑。

和田:でもそれが経験することで大振りできるようになるんだから不思議よね。シリーズAまでは波乗り上手で、その後に一皮むけた感じ。

一谷:成長してる時って別にいいんです。それが止まったときに本当に究極にまで考えるんですよね。

ーー一谷氏が尊敬する経営者とは。和田氏やその他の投資家を交えた経営会議の中身まで語った最終回は明日公開予定。