メディアに載ることがゴールではないと意識しろ−−CNET Japan岩本氏が語るメディアとの上手な付き合い方

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スタートアップにとって、自身の知名度を上げたりブランド力を高めたりするには、記者やメディア関係者と良好な関係を作ることが大切だ。メディアとの付き合い方の作法を覚えることで、より効果的に事業を展開することができる。

IT系やガジェット、テクノロジーに関する記事を掲載しているCNET Japan。同媒体編集部の編集記者である岩本有平氏は、主にC向けサービスやスタートアップを担当している人物だ。

同氏が、MOVIDA SCHOOLで語ったメディアとの上手な付き合い方についてまとめた。

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メディアはどんな情報を求めているのか

メディアと一括りにしても、日刊、週刊、月刊、ビジネス誌、業界誌などそれぞれの媒体によって求めているものは違う。

週刊誌や月刊誌は特集を軸に構成されており、特集に応じたネタをピックアップしている。日刊やウェブ媒体は比較的ストレートニュースが多く、その中でもテック系媒体は、サービスリリースや買収、資金調達、提携といった話が中心となりやすい。

書き手を意識して、コミュニケーションすること

知名度の低いスタートアップが、メディアの窓口にプレスリリースを送っても取り上げてもらえる確率は低い。メディアに応じて、特定の記者がどのような分野に興味があるか、媒体の特性や読者層なども考慮しながら分析したほうが良い。その分析に合わせて、自社のサービスのポイントを媒体に合わせて調整し、記者個人にアプローチできるくらいまでコミュニケーションを取っていこう。

事前のコミュニケーションを大切に

記事を書いている記者も人間であり、時間や労力は有限だ。そのため、事前にコミュニケーションを図りながら、関係を構築していくことが大切だ。週刊や月刊といった媒体も、まずは接点を持つことで、特集の際に掲載のチャンスが回ってくる可能性はある。

媒体や記者それぞれによって、書く優先順位は変わってくる。少しでも書いてもらえる優先順位を上げていくためにも、自社の強みを理解してもらうためのやりとりが必要だ。また、プロトタイプやユーザテストなどを通じてサービスの感触などを記者に体験してもらうことで、記事やインタビューの際の質問の中身の深みも増してくることも多い。

スケジュールのすり合わせは、漏れなくすること

大手企業との提携など、ステークホルダーが多くなるリリースの際は、提携先とメディアに対するコミュニケーションの方法などをすり合わせながら、漏れがないように調整していくことが大切だ。また、スケジュールもできるだけ自分たちでコントロールし、しっかりとした広報体制を敷いて取り組んでいくべきだ。

知人の紹介から、記者との関係を作る

記者とのつながりを作るには、知人の紹介ベースが一番だ。もちろん、飛び込み営業やFacebookなどのSNSを通じた連絡も最近は増えたが、知り合いや一度取材した方を経由したほうが、信頼関係も作りやすい。

プレスリリースの作法を覚えろ

スタートアップは、少ないリソースだからこそ起業家がPR兼広報の役割を担ったほうが良い。少しでも掲載される確率を高めるためにも、プレスリリースの作法を理解しておこう。プレスリリースの基本は、5W1Hやデータが正確に記載されていることだ。根拠なく「世界初」とうたうなど、市場における自社の優位性を主観で表現するのではなく、客観的な数字を用いて説明しよう。

プレスリリースの内容はコンパクトに

プレスリリースは、できるだけコンパクトにまとめよう。A4用紙1枚から2枚以内にサービス概要や説明がまとまらなければ、もう一度練り直したほうが良い。文字だけでの説明が難しい場合は、グラフや写真などで補完しよう。また、サービスのURLや社名、役職、問合せ先など、会社の基本情報も漏れなく記載しておこう。Wordでリリースを送る時は、修正履歴を残さないようにし、PDFを利用してリリースを送るとよい。もちろん本文にも同じテキストを入れたほうがよい。

プレスキットを用意すること

プレスリリースにプレスキットを用意しておくと、掲載の際に画像やキャプチャも利用されやすい。リリースと画像を整理し、記事になりやすい体裁にしておくとよい。ファイルサイズが大きければ、ファイル転送サービスなども利用しよう。また、デモサイトやデモアカウントがあれば、一緒に送ることで使い方も理解されやすい。

リリースのタイミングにも気を配る

リリースを送る際は、メールのタイトルにも配慮しよう。100件以上ものリリースを受けとる日もあるため、タイトルに社名やサービス名など、意図が伝わる工夫が必要だ。ウェブメディアであれば、掲載タイミングについても意識しよう。土日や夜にリリースを送っても、すぐには記事化されない。メールを送るだけではなく、送った旨を別の手段、例えばSNSのメッセージなどで伝えると、より効果的だ。

メディアに載ることがゴールではない

どんなに華々しくメディアに掲載されて注目やトラフィックを集めても、継続してアクセスしてもらえるようなサービスでなければ意味はない。メディアに載ることがゴールではなく、優れたプロダクトを作ることに注力することが一番だ。プロダクトの力があれば、自然とメディアも注目してくる。メディア側からオファーが来るくらいのほうが良い。

メディアをどう活用するかが鍵だ

ただ闇雲に掲載されるのではなく、露出したことが業界としてインパクトがあるかどうかが重要だ。掲載して終わりではなく、サービスのフェーズやブランド作りのステップに応じて、掲載されるメディアを意識しながら、アプローチを図ったほうが良い。メディアをうまく活用することで、サービスを良い方向に進めることが大切だ。

プロダクトに込めた思いとストーリーを軸に語れ

起業家は、プロダクトについて説明する時に、機能だけではなく起業家自身のストーリーとプロダクトの関係も意識すべき。ストーリーがあり、その結果としてプロダクトがある、といったプレゼンのほうが、より記者もプロダクトのことを理解しやすい。自身の思いを込めたプロダクトを、良いものにするように日々行動してもらいたい。

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