年間のメディア取材250件を超えるアイランド粟飯原理咲さんが語る、話題になるサイトや企画の作り方

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ぐるなびウェディングが開催した、4日間にわたる「女性マーケット会議」。セールス、マーケティング、広報、プロモーションというテーマの中から、広報Dayに開催されたアイランド株式会社粟飯原理咲さんの講演についてレポートする。講演タイトルは、「女性ユーザーとコミュニケーションを深めるオンライン&リアルコミュニケーション〜女性向けポータルサイト運営の現場から」。広報の観点から、女性向けのサービス展開について、またメディアなどで話題になるための企画作りのヒントなどが共有された。

月間訪問者数が180万人を超える3サイト

粟飯原さんがアイランド代表になったのは、2003年7月のこと。それ以前は、NTTコミュニケーションズやリクルートなどに勤務。立ち上げ当初は、本業をする傍ら、それ以外の時間でサービスの立ち上げにいそしんだ。約10年間で、「おとりよせネット」、「レシピブログ」、「朝時間.jp」などの人気サイトを立ち上げ、現在の月間ユニークユーザー数は180万人を超える。ここまでの規模に成長したものの、これまで大きな広告費をかけることは一切してこなかったという。それにも関わらず、3サイトを合計すると年間250件のテレビや雑誌、webメディアから取材を受けている。じわじわヒットし、長く愛され続けるサイトを作る秘訣は何なのか。

注目されるサイトを作る3か条

ウェブサイトが星の数ほどある中で、メディアに取り上げられ、より多くのユーザーにリーチするためには、運営しているだけで自然と取材が来るサービスが理想的だ。サイトを立ち上げる際、アイランドが大事にしている3か条がある。

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1.ユニークであること
他にない、新しいコンセプトであること。ニッチでも構わない。

2.時代に沿っていること
オンタイムでも遅れてでもなく、時代の半歩先のサービスをいかに考えられるか。

3.わかりやすいこと
サービスをパッと見たときに、そのコンセプトがすぐ伝わるかどうか。
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同社のサイトはどれも、これら3つの条件を兼ね備えている。具体例を見てみよう。

時代の半歩先を行く「おとりよせネット」

美味しいお取り寄せ品を紹介する目利きサイトである「おとりよせネット」。サイトの名前を聞けば、瞬時にサイトイメージが湧く。女性誌などで使われるようになり、今でこそ人々が耳慣れしている「お取り寄せ」という言葉だが、2003年のサイト立ち上げ当初はまだ言葉の認知度が低かった。でも、粟飯原さんはこのキーワードに注目し、これから流行りそうだという直感をもとに早々にotoriyose.netというドメインを取得。その後、お取り寄せという言葉が流行するようになっていったと言う。時代の半歩先を行く着眼点が功を奏した。

otoriyosenet

また、おとりよせネットがユニークなのは、8,000人以上のモニター会員が商品を実際に試食することで集まるレビューだ。一般のユーザーが、楽天やYahoo!ショッピングの中から自分好みのお取り寄せ商品を見つけるのは簡単ではない。そんな課題を、おとりよせネットの実食レビューは解決してくれる。この第三者的な評価の仕組みが特徴となって、多くの取材依頼が来るように。サイトオープン2年目にはお取り寄せの書籍を出版し、その後も毎週木曜日、J-WAVEで「今日はおとりよせ日和」という番組を放送するなどメディアへの露出を絶やさない。お取り寄せにフォーカスするという発想のユニークさはもちろん、お取り寄せで生活を豊かにするという新しいライフスタイルの提案に真新しさがあったのだという。

一度で終わらせない、話題になる企画の考え方

ウェブサイトやサービスをリリースしたら、そこからが本当の始まり。新しさや独自性を備えたサービスなら、リリース時の話題性には困らないかもしれないが、肝心なのはそれを継続できるかどうかだ。積極的に話題を提供していかないことにはメディアに取り上げられるはずもない。この点に関して、アイランドでは普段の企画で意識している4つのポイントがある。

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ポイント1:旬であること
メディアは旬のものを追い、一般ユーザーがFacebookに投稿するのは旬のネタ。その時々で、「旬」な企画をいかに出すか。

ポイント2:意外性や面白さ
え、こんな切り口あったの?という面白さ。切り口の意外性があるか。

ポイント3:物語、課題解決
ストーリー性があるかどうか。ソーシャルメディアで次から次へと語り継がれる内容か。メディアの人が持つ課題、また、ユーザーが長年持っている悩みや、それらを解決する仕組みも強みになる。

ポイント4:ネーミング命
粟飯原さんの企画書はまずネーミングから入るといっても過言ではない。決まったキーワードがあることで、企画の内容がより伝わりやすくなり、企画そのものが通りやすくなる。
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アイランド流、「旬」の出し方

朝時間.jpやおとりよせネットは、その規模からも既に旬を発信する側になっていると言えそうだが、それでも常に時代のトレンドや旬のネタを見逃さず、企画に取り込んでいる。例えば、アワードやコンテストは旬を出しやすい形の一つ。おとりよせネットでは、毎年「ベストおとりよせ大賞」を開催。第三者機関が選んだ発表には他にない情報の信憑性があるため、メディアなども取り上げやすい。他にも、旬を出すには旬のサービスとのコラボレーションがある。

「朝時間.jpでは、アメリカ発の画像共有サービスの「Pinterest(ピンタレスト)」が日本に上陸したての頃に、同サイト上で“World Morning”をテーマに、世界の朝写真のコンテストを開催しました。海外から来たばかりのフレッシュなサービスを活用することで注目され、メディアなどでも紹介してもらうことができました。」

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また、月間180万人のユーザーを抱えるアイランドでは、ユーザーアンケートも頻繁に実施している。アンケートは鉄板ネタで、過去に実施した調査のほとんどにメディア掲載の実績がある。でも肝心なのはアンケートの中身だ。例えば、14,000件の料理ブログ、430万件を超える記事が集まるレシピブログなら、今年流行っているのがノンフライヤー。そこで、その言葉がよく聞かれるようになった頃を狙って、ノンフライヤーに関するアンケート調査を実施して結果をまとめる。料理好きな一般の人はもちろん、消費者の動向に関心のあるメディアやビジネス人も興味を示してくれる。

「朝型人間になったことで年間どれくらい得しているかを金額に換算するといくらくらいですか?なんてアンケートも実施したことがあります。その結果、なんと10万円以上と答えた方が約3割に上ったのです。こんな風に、自社のサービスのテーマに絡めたアンケートなどを実施できると良いと思います。アンケートの母数は30名以上いればいいと言われていて、100名いれば市場価値がでると言われています。」

何事もネーミングが命

社内で企画をする際に粟飯原さんが繰り返し言うのは、「ネーミングが命」ということだ。朝時間.jpのコンテンツの一つで、同社で商標登録もしている「朝美人」がまさにその例。朝を豊かにすごす輝く女性へのインタビューコーナーだが、印象的な朝美人という名前から、雑誌などで特集されることもあるという。

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またレシピブログでは、今年の夏「よろこばれしぴ」というコーナーを立ち上げた。料理を作るなら、相手が喜んでくれるものを作りましょうというシンプルなコンセプトを素直に表現したネーミングだ。これを、例えば「夏バテレシピ特集」などといったありきたりな名前にしていたら、話題に上ることはなかっただろう。

「ネーミングで、その世界観をいかに伝えられるかがポイントです。最近よく聞かれるのが“菌活”です。塩麹やヨーグルトなどの発酵食品を食べる習慣は前からありますが、「ヨーグルトを食べよう」とプロモーションするのではなく、「菌活」というインパクトがトレンドに繋がっています。インパクトのあるネーミングが企画書のタイトルにあるだけでイメージのしやすさが全然違います。だから、まずネーミングから考えようということは社内でも良く話しますね。」

オンラインの100時間より、リアルな1時間

アイランドでは、ユーザーとのオンラインとオフラインのコミュニケーションをどちらも重視している。実際にユーザーに会うことでもたらされる気づきは多分にあり、昨年だけで小規模な座談会を100回開催。広報やマーケティングの担当者には、ユーザーとの会話から彼女たちのニーズやトレンドを発見できる利点もある。

「オンラインのサービスにとって、ユーザーは見えないものです。リアル店舗なら、お客さんがどこのコーナーにいて、何を探しているのか、見つかった商品への満足度などを汲み取ることができます。オンラインではそれが難しいため、実際にユーザーさんにお会いして、自分たちのサービスに興味がある人がオンラインでどんな振る舞いをしているかに耳を澄ませるようにしています。」

また、ユーザーはサービスにとってクリエイティブパートナーでもある。大きな企画の際などはメルマガなどでユーザーに呼びかけることを欠かさない。粟飯原さんがその具体例に挙げたのは、震災直後の話だ。

recipeblog-cover「節電のために火を使わないレシピをアップする人が増えているのを見て、レシピブログのブロガーさん全員に呼びかけて節電レシピを投稿してもらったんです。合計で2,000件を超える、火を使わないレシピや缶レシピが集まりました。いろんなブログに投稿された結果、一週間後には「少ない電力&火力でおいしくつくる」という書籍の出版が決まったほどです。書籍の売り上げは全て被災地に寄付されました。

ユーザーや社会の声を察知して呼びかけることで、それにみんなが答えてくださってすぐに形にすることができたのだと思います。」

今回の講演は、広報という観点以外でも、サービスを立ち上げた後の話題性の作り方など参考になる点が多かったのではないかと思う。朝という時間に区切ってライフスタイルを提案する朝時間.jp、さまざまなブログを回遊するのが面倒というユーザーの不便を解消するレシピブログなど、アイランドが提供するサービスには女性向けサービスのヒントがたくさん見つかりそうだ。

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