スタートトゥデイ取締役の大石亜紀子さんに一問一答:役員と出産を同時期に迎えた最大のピンチを乗り越えて、変わったこと【後編】

by Yukari Mitsuhashi Yukari Mitsuhashi on 2014.3.21

「1,000人規模になっても、今日スタートを切ったばかりのようなチームを:スタートトゥデイ取締役、大石亜紀子さん」の後編をお届けします。【前編】はこちら。

Akiko-Oishi-up-close

スタートトゥデイが求める「いい人」

同社が求める人材を一言で表すなら、「いい人」。ちょっとお人好しで頼りなくも聞こえるが、具体的に何を意味するのか。それは3つの要素を兼ね備えていることだと言う。

ユニークな着眼点や想像力を働かせ、そのアイディアを実際に創造することができること。アイディアをアイディアのまま終わらせず、それを組み立てて形にする業務推進の力を含めたクリエイション。この2つを両方兼ね備えたバランスがいい人。

また、ギブ&テイクができる人。これは、置き換えるとインプットとアウトプットのようなもので、いい好循環をもたらせるかどうか。例えば、ZOZOTOWNというサービスなら、お客さんを喜ばせることが利益となって会社に還ってきて、巡り巡って自分の幸せにもつながる。

最後に、そんな「いい人」を周りにさらに増やしていけるかどうか。これらの要素を兼ね備えたいい人をマネージメントのポジションに置くことで、それがどんどん伝染して行く組織を目指している。

マネージャーに裁量がある年中無休の昇格制度

一般的に決まったタームで実施される人事の評価査定が、スタートトゥデイの人自には存在しない。人の「影響力の度合い」によってポジションが上がる仕組みを設けている。

「人の成長は必ずしも数字では測れないですし、半期に一度など会社が決めたタイミングで人が成長するとも限りません。個々とちゃんと向き合って、ひとりひとりを見ようという意味で、部署のメンバーを適切だと思うタイミングで昇格させる権限をマネージャーに与えています。どのタイミングでも構いません。」

さまざまな個性を持つメンバーひとりひとりが輝けるマネージメント。マネージャーに裁量が与えられる同社では、そのやり方は人それぞれ。チームに厳しい人もいれば、褒めて伸ばす人もいる。新卒の配属を決める際は、育成する上司のもとでその人が成長していく姿を描いて適性を見出して行く。

「会社のあり方に関して、人としての働き方や生き方を問い続ける姿勢をすごく大事にしています。時には壁に打ち当たったり、矛盾してしまうこともあるけれど、その思考を停めたことはないですね。」

一問一答:役員と出産を同時期に迎えた最大のピンチ

ここからは、大石さんへの一問一答の形でご紹介します。これまで最大のピンチ、結婚と出産を経て変わったこと、尊敬する人、そして大石さんがこれから目指すこととは。

三橋:これまでの大石さんにとっての最大のピンチってなんでしょう?

大石:ちょうど役員になったのと同時期に妊娠しました。今思えば、会社やみんなに対してすごく無責任だったなって思います。その後産休に入ることがわかっている状態の人間に役職を与えるって、会社としてすごいことだったと思います。今自分が人事をやっていて、これから産休に入る人に大きなミッションを与えられるかというと難しいと感じてしまう。

三橋:なるほど。そのタイミングで妊娠してしまったことが無責任だった、と。

大石:ちゃんと計画できていなかったし、当時は産休を取らないでも何とかなるだろうって思っていたんです。でも、初めての妊娠だったし、リアリティがなくて突っ走ってしまった。結局、予定日の2週間前まで出社して、産後1ヶ月で復帰しました。自分は何とか人海戦術でクリアしたつもりだったけれど、会社の文化やサービス、事業を育てなきゃいけないない立場で、でも正直こなしているだけの期間ってあったと思うので大反省です。

三橋:それでも、誰も大石さんのことを止めなかった?休んだら?とか。

大石:自分の中では皆さんに申し訳なさすぎるし、さっさと辞任した方がいいのかなって思っていました。でも、社長を含め、誰一人やめたら?って言う人はいませんでしたね。応援をしてくれていたし。役員を降ろされるっていう恐怖は全くなくて、でも、なんとしても続けるプレッシャーはすごくあって。出産後、2、3年くらいは壁でした。

三橋:もしやり直すとしたら、どうしますか?

大石:もし時間を巻き戻せるなら、2002年くらいにさかのぼって、ちゃんと計画をしますね。2008年に出産することに向けて、もっと自分の能力を上げていくということをすると思います。

三橋:ご自身のターニングポイントはいつでしょう?

大石:そうですね。大きく自分の中の価値観が変わったのは、結婚した時と出産した時です。もともと特にキャリアアップしていこうっていう意識はなくて、むしろ結婚したら家に入りたいと思っていたくらいで。

三橋:役員にまでなったかたの口から聞くと意外な感じがします。

大石:2つのことを同時にやるのが苦手だし、好きじゃなかったから。結婚したら仕事はやめようと思っていたんです。でも、なんでそうなったかわからないけれど、突然社長に「会社の設立記念日に入籍します」って伝えたんですよ。その日が大安だったので。

三橋:お相手の方と相談されて?

大石:ずっと長い間付き合ってた人で、そもそもお互い自由にやっていたので、結婚する時期も全部自分で決めちゃいました。会社の設立記念日だから、この日に結婚することに決めたって伝えて。だからプロポーズとかそういう段取りもなかったですね(笑)

三橋:でも、その結婚が結果的に仕事の面でも良かった?

大石:そうですね。結婚をして生活基盤を安定させたら、あとはもう仕事に集中するぞってなりました。仕事に対する姿勢や価値観が変わって、そもそも仕事とプライベートを分けるっていうことがその時点でなくなったというか。

三橋:なるほど。そういう生き方を応援してくれるお相手を選ばれたんですね。

大石:自分の人生を思うように生きるためにはパートナーが必要だったり、自分が力を出す上での基盤は大事です。それが出来たら、それで持って何をやるか、そこから何を生み出して行くかにスイッチが切り替わったのかも。

三橋:出産されて、ご自身の価値観はどんな風に変わりましたか?

大石:自分の使命感の時間軸が、100年くらい伸びたっていう感じがします。赤ちゃんが生まれたら幸せだし可愛いし、この子を守らなきゃって。でも、この子がお母さんになって同じように子どもを生んだ時に、私が感じている幸福感を持てるようにしてあげなきゃいけないって思ったんです。っていうことはそのひ孫も…って、そこまで長く幸せが続くようでないと。

三橋:お子さんや、そのお子さんにとっての未来ですね。

大石:だったら今、何をするのか。食べるもの、選ぶもの、会社でやること全部関係してきます。長さだけで100年って考えてしまうと難しいけれど、自分のひ孫の時にって考えると自然と頭がついてくるんです。子どもが生まれたことで得た新しい視点や考え方が、仕事に生きてきてるなって思いますね。

三橋:なるほど。ちょっと話は変わって、大石さんが特に尊敬する人ってどなたですか。

大石:尊敬する人ですか。社長の前澤もそうですし、あとはいろんな部分でこの人すごいって思うことはありますね。前澤は、ビジネスや経営の視点、あとチャレンジしていく姿勢がすごいなって思います。

三橋:社長とは毎日顔を合わせる感じですか?

大石:会う時は会いますけど、直接よりメールとかLINEのほうが多いかな。週末でも、ちょっと何か思いついたアイディアを会社のメンバーとLINEすることはよくあります。

三橋:長く、近くでお仕事をされてきて、前澤社長のすごさってどこにあるんでしょう。

大石:バランス感覚ですかね。経営のセンスというか。数字にめちゃくちゃ強いし、合理的でロジカル。経営のセンスもあるのに、ひとりひとりの立場で物事を見ることができる。木を見て森を見るっていうのは前澤がよく言うんですけど、そういうバランス感覚はすごく持っていると思います。

三橋:大石さんを駆り立てるモチベーションはなんですか?

大石:子どもが生まれて思うのは、ひ孫の時代に世の中がどうなってるんだろうと想像することです。私が育ったような環境が自然と担保されるかというと、それを誰かがやってくれるわけではない。だから、社会の中で企業はどうあるべきで、その企業の中で人がどんな風に働くべきか。その辺が使命感になっていますね。

三橋:もう疲れた、とかなったりしませんか。

大石:ちょっと疲れたなとか、ラクしたいなって頭をよぎることがあるけれど(笑)。目の前に子どもがいて、その子の将来って考えるとやるしかないなって感じますね。

三橋:大石さんがこれから目指すことを教えてください。

大石:会社のメンバー全員が、本当に楽しい!って働いてくれることですかね。サークルみたいな楽しさじゃなくて、一生懸命頑張って、限界に近いところに到達したときにアドレナリンを感じるような。昨日までと違う自分との出会いですよね。

三橋:達成感から生まれる楽しさ、ですね。

大石:働くことを通して得られる楽しさ、そういう機会を与える会社でありたいです。組織になってルールが増えても、本来そういうことがしたくて会社をやっているので、そのあり方が社会にもいい影響を与えると思うんです。今以上にもっとスピード感をもってやっていきたいです。

三橋:今日はどうもありがとうございました。

編集後記

ここ最近、別の取材で何度か幕張のオフィスにお邪魔する機会がありました。今までいろんな会社さんを訪問しているけれど、これほど挨拶が気持ちいい会社はないと思う。年齢、性別、ひとりでいようとグループでいようと、皆さん「こんにちは!」と挨拶してくださる。それだけで、ウェルカムされてる気がして嬉しい。

大石さんは、お部屋に入ってきてくださったそのタイミングから、見送ってくださる最後まで、終止自然体な方でした。「取締役の大石さん」という、会社また外部を含む周囲からの期待やプレッシャーはもちろんあるのでしょうけど、あくまで大石さんでしかないというか。その真っすぐな姿勢や揺らぐことのない感じとかが、きっと会社の皆さんの信頼につながっているんだろうな、と。

今回は、大石さんが人事のご担当ということもあって、結果的に大石さんへの取材を通してスタートトゥデイという企業を垣間見ることができた気がします。会社の方針や制度のひとつひとつには、必ずメッセージがある。面白い人事制度ということで、「ろくじろう」(六時間労働制)についてはよくメディアで取り上げられるらしいのですが、そんな制度ひとつひとつに、スタートトゥデイから社員さんへの問いかけがあります。

「ワークライフバランスはもちろん大事だけれど、みんなのライフを充実させるためにワークは短くしようってことではないんです。働くということがみんなにとってどういうことか、考えてほしい。仕事でいい影響やいい成果を出すためのインプットの時間に何をするのか。1日の24時間という時間を、どういう風に生きたいかを考えてほしいと思っています。」

個人的に、チームから組織になる限界値は、50人くらいかなという印象があるのですが、スタートトゥデイさんはその20倍以上の組織。それでもやっぱり「組織」より「チーム」という言葉がふさわしい感じ。まさに、止まずに問いかけていることの証なのかも。

大石さん、この度は素敵な取材をどうもありがとうございました。

ニュースレターの購読について

毎日掲載される記事の更新情報やイベントに関する情報をお届けします!

----------[AD]----------