グローバル・ブレイン・アライアンス・フォーラム〜今年注目のスタートアップ経営者3人が語る、グロースのための必要条件

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本稿は、グローバル・ブレイン・アライアンス・フォーラム2014 の取材の一部である。

先週、東京で開催されたグローバル・ブレイン・アライアンス・フォーラム(GBAF) 2014 には、いくつか興味深いセッションがあった。日本において、急成長しているスタートアップ創業者3人によるこのパネルもその一つだ。

このセッションに登壇したのは

  • ビズリーチ代表取締役社長/ルクサ代表取締役会長 南壮一郎氏
  • メルカリ 代表取締役社長 山田進太郎氏
  • ラクスル 代表取締役 松本恭攝氏

また、TechCrunch Japan 編集部の岩本有平氏がパネルのモデレータを務めた。

スタートアップにとっての、グロースの定義

スタートアップ・シーンに限れば、グロースハックという言葉は2014年を席巻したキーワードの一つに選ばれるだろう。ユーザ数のグロース、売上のグロースなど、どのグロースを優先して求めるかは、スタートアップによってさまざまだ。

ルクサの南氏は、スタートアップの組織としての健全なグロースに、常に意識を傾けていると語る。

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南壮一郎氏

世の中に大きな影響を与えたいと考えている。球団で一度日本を盛り上げているので(編注:南氏は、現 YJ Capital の小澤隆生氏らと共に、楽天イーグルスを創業している)、それ以上のことを。

しかし、実際に日本で大きな影響を与えている会社を見てみると、100人とか200人とかの規模ではない。もっと大きな会社。

(かつての上司である楽天の)三木谷氏と話したことがある。彼によれば、創業者がやるべきことは、その大きな会社のピラミッドができあがっていく過程で、その頂点に立つ最初の数名を雇うことが創業者の役目であると。

今年に入って、メルカリ、ラクスルは共に頻繁にテレビCMの放映をスタートさせている。モデレータの岩本氏が、テレビCMがグロースに貢献しているのかと尋ねたところ、メルカリの山田氏とラクスルの松本氏は、共にユーザグロースがテレビCMにのみ依存しているわけではないと語った。

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山田進太郎氏

最初の頃は、ステルスで、外部には説明にも時間をとられるので、何も言わずにメルカリを作っていた。

数字が上がってきたので、LTV(Lifetime Value)という考え方もあるだろうという前提に立って、CM をやり始めた。決して、CM だけで伸びたわけではない。最近になって10%の手数料をいただくようになり、収益も付いてきた。(山田氏)

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松本恭攝氏

まず、価値あるサービスが作れるかということ。LTV の話があったが、一回使ってもらって、その後、何回使ってもらえるか。どれくらいのユーザが離れていくか、ということを考えた。

また、売上が急に伸びると、生産やカスタマーサービスのキャパシティが足りなくなる。現在の売上が1億であっても、それが100億になっても回せるようなしくみを作るようにしている。Eコマースは原価がかかるビジネスなので、収益性を確認することには注力した。

売上が数百億、数千億になったときでも、きちんと戦えるマネージメント・チームを作れているかどうかは重要。したがって、採用においては、自分より優秀な人しかとらないようにしている。採用においては、(南氏の方を向いて)ビズリーチを多用させてもらっている(笑)。そういう組織やしくみづくりをした上でCMを流している。決して、テレビCMだけで伸びているわけではない。(松本氏)

資金調達をして予算が確保できるようになったスタートアップの中には、メルカリやラクスルに限らずテレビCMを流すところが増え始めた。テレビCMは認知度を高める上で即効性が高い反面、CMを流さなくなった瞬間に消費者の反応が鈍くなるというネガティブな側面を併せ持つ。一度つかんだユーザをどうやってリテンションするか、スタートアップには、ユーザのローヤルティを高める努力が問われるところだ。

2015年のEコマースを占う

広義においては、ルクサ、メルカリ、ラクスルの3社は、Eコマースのスタートアップということになる。モデレータの岩本氏は、来年の抱負をそれぞれの登壇者に尋ねた。

ラクスルの松本氏は、より価値あるサービスを粛々と創出していくことで、これまでネットで印刷を発注できなかったような人たちがラクスルを使えるようにしたいと語った。具体的には、現在のラクスルでは原則的に完パケ入稿で印刷を受注するのに対し、今後は、デザイン代行のような機能も付与していくようだ。数あるデザインのクラウドソーシング・プラットフォームなどとの連携の可能性もあるだろう。

メルカリの山田氏は、今年9月から始めたアメリカ市場での展開に注力したいと答えた。アメリカでの個人間取引は Craigslist や eBay を使ったものがほとんどで、個人間取引に特化して決済やロジスティクスを提供するプラットフォーマーが存在しない。他の誰かと競争するというより、現在はまだ無い市場をスクラッチから創り上げるという意気込みが感じられた。

ルクサの南氏は、売上を伸ばすことはもとより、それに対応できる組織づくりに注力するようだ。おそらく、これまでの数度の起業経験から、組織がしっかりしていれば、数字は後からついてくるという信念を経験的にに体得しているのだろう。

モノを売るという、シンプルかつ古くからある経済活動に基づいているからこそ、Eコマースの形態はこれからも変貌を続け、また新たな業態を生み続けるだろう。しかし、どんなに形を変えても、結局その成長の源には、極めて当たり前で普遍的な努力が必要だということが、3人の登壇者の話から明らかになった。3社の今後の健闘を見守りたい。

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