2015年のアジアのスタートアップシーンにおける8つの予測

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Murli Ravi氏は、Unicorn Venture Capitalの共同創設者でジェネラルパートナーをしている。彼はベテランのベンチャーキャピタルファンドマネージャーであり、インド、シンガポール、シリコンバレー、ニューヨーク、オーストラリアにおいて、投資先探しからイグジット案件に至るまで20以上の投資業務を監督した経験を持つ。

今年もこの季節がやってきた。至るところでテック評論家が出現し、どんな年になるかを予測する季節だ。私もその1人となるべく以下のように予測してみたのでご覧いただきたい。(最後に要約版あり)

1. インドにおけるアーリーステージのスタートアップ評価額が、限界点に達するまで上昇し続ける見込み

インドは現在、アーリーステージの資金調達シーンにおいてかなりの活況を見せている。私が言うアーリーステージとは、その会社が直近のラウンドで調達した資金が、500万米ドルに(はるかに)及ばない場合のことだ。この活況の背景には妥当な理由がある。スマートフォン利用の加速的な成長、政府および政策面での積極的な開発、アーリーステージでの資本調達が容易になったことなどだ。一方で、そのような評価は少しばかり行き過ぎかもしれない、と言っておくべきだろう。

評価がさらに高まる余地はまだいくらかはあると思う。魅力的な市場においてクオリティの高い起業家を狙う資本があるからだ。この状況は現在のところまだ希少である。これは強気の見方をした場合だ。

弱気の見方をすれば、評価が行き過ぎ、上昇トレンドがストップするだろう。これは私が実際に起こると思っていることだ。それから、2、3の主要ベンチャーキャピタリストが市場をさらうだろう。彼らは、アーリーステージにしては多くの資本を使うことができるからだ。これで一息つく。私はこれが今年の後半に起こるだろうと予測している。その後、これらの大規模ファンドは撤退し、本来の関心である成長ステージの投資に戻るだろう。そしてアーリーステージは専門ファンドや小規模ファンドのものとなる。

2. スタートアップの評価上昇トレンドが続くシンガポール

シンガポールは非常に小さい国で、常に大きな成功を生み出しているわけではないが、政府がさまざまなサポートを行っている。補助金、株式ファンド、国外の起業家や金融関係者に向けてスマートに自国を売り込むこと、商業化と国際化を進め、自国に拠点を置く企業を援助すること、教育資源の充実などだ。その結果、シンガポールはその規模に見合った数よりも多くのアーリーステージのベンチャーを集めている。また、シンガポールのアーリーステージのスタートアップは、インドのスタートアップよりも多くの資本源の選択肢を持っている(政府からの援助だけではない)。このことは、質の良いアーリーステージのスタートアップならば、魅力的な条件で初期ラウンドの資金調達ができることを示唆している。

そのようなスタートアップが資金を獲得し続けていくだろう。それを妨げる要因が何もないからだ。2015年に限らず、この先しばらくの間アーリーステージにおいて調達可能な資本の量は、その資本を吸収できる企業の数に対してかなり多くなると考えられる。私の予測の根拠はここにある。

このストーリーが最終的にハッピーエンドを迎えるのか、そして誰がその恩恵を受けることになるのかという点は一考の価値がある。

注意してもらいたいのは、これは私が先に定義したアーリーステージのスタートアップについてのみ当てはまるということだ。シリーズB以上のスタートアップに関しては、魅力的な企業は適切な評価のもと資金を獲得し続ける一方で、横ばいになる企業もあれば、瀕死状態に陥る企業もあるだろう。そのようなステージでの評価については、おしなべて語ることは難しい。

3. Facebookによるアジア初の大型買収という可能性

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Facebookはこれまでアメリカやその他の地域で多くの買収を行ってきたが、それとは対照的にアジアでの動きは控えめなものだった。アジアの新興国(大まかに言うとインドと東南アジア地域)において、Facebookはこれまで2件の買収しか行っていない。それはLittle Eye LabsというインドのスタートアップとOctazenというマレーシアの企業の買収だ。

この状況は変わるだろう。

私は2015年、Facebookがアジア新興国で初めての大型買収を行うと見ている。ここで私がいう「大型」とは、具体的には5000万米ドルを超える規模のものだ。

その理由は単純だ。アジア新興国で最大の2ヶ国は、Facebookにとっても最重要な市場だからだ。それはインドとインドネシアである。インドにおけるFacebookのユーザベースは、近い将来アメリカを上回る見込みだ。インドネシアのユーザベースも引けを取らない。

Facebookがどこを買収するかについて、私は単にそのユーザベースを増大させてくれるだけの企業を買うことはないだろうと考えている。Facebookの牽引力はすでに大きく強力なネットワーク効果を有しているので、そのような企業を買収するのは筋が通らない。Facebookはインドとインドネシアに大部分のユーザベースを誇るWhatsappを買収したが、その理由はWhatsappが大きなユーザベースを抱えているから(だけ)ではない。そうではなく、Facebookに新たな市場を開拓する機会をもたらすからだ。同じことは、Instagram、Oculus Rift、Internet.org、Little Eye Labsなどにも言える。

では、アジア新興国においてFacebookはどこを買収するだろう?未開の領域で展開し、十分な収益を保証してくれるような企業はどこだろう?予測というよりは推論になるが、以下にいくつかの考えを示そうと思う。

・Facebookが、現在の典型的なFacebookユーザとは違う新しいタイプのユーザを獲得し、サービスを提供・維持していくのを可能にしてくれる技術。これはすでに明らかになっているMark Zuckerberg氏の中長期的な野望である(Internet.orgの買収はこの目標の具現化の一例だ)。おそらくアジアの新興国は大規模な実験をするのに理想的な場所であり、もしそれが成功すれば、世界の他の地域にも展開することができるだろう。

・今のFacebookが得意としていない新たなコンテンツを提供する企業。例えば、中国最大のアプリストアはAppleのストアでもGoogleのストアでもなく、サードパーティのマーケットプレイスである。インドネシアでも今同じことが起ころうとしており、その傾向はインドネシアにとどまらないだろう。Facebookはすでに1つのプラットフォームに留まらない存在で、新たな買収はFacebookにとって、より包括的なクロスプラットフォームになり得る方法だ。フィーチャーフォンからスマートフォンに、ローエンドスマートフォンからハイエンドのモデルに移行するユーザをつなぎとめておくという付加価値を持つことになる。

・インフラストラクチャー。早くも2012年半ばの時点で、Facebookは将来を見据えて海底のネットワークケーブルに投資していた。アジア新興国でのネットワーク容量を確保し、ユーザにより良いサービスを提供できるようにするためだ。もし私が彼らの立場だったら、その他の似たような投資についても倍賭けしておくことを検討するだろう。

・B2Bの顧客側の観点では、広告主と契約できる配信能力を持つ小企業、またはそれらの広告主を助けるツールを持っている小企業は、Facebookによって自らの目標達成が簡単になる。

4. Googleはアジアで買収を実施しない見込み

ユーザベースの面で言うと、Googleはおそらく最もグローバルなシリコンバレー企業である。だが依然としてビジネスの多くがアメリカとヨーロッパにフォーカスされている。コアサーチ広告ビジネスからなる大部分の収益がありながら、Googleはユーザや新しいテクノロジー、また新興アジアの広告主でさえ積極的に追求してもたいして利益を得ていない。これは彼らが新興アジアにおいて組織的にビジネスを発展させていかないだろうというのではない。ただ、国内市場におけるM&Aがずっと簡単に正当化されるというだけだ。是非ともこの予測が誤りであると証明されたい。

5. 政府系投資会社が、GICとTemasekにならいレイトステージのテック企業に投資する

シンガポール政府の支援を受けている2つの投資会社、GICとTemasek Holdingsは、他の同業者の追随を許さず競うようにアメリカ、中国、インドやその他地域でテクノロジー企業大手への大型投資を進めた。それは、単に日和見主義的に投資をするのではなく、それぞれの企業の公式プログラムにも参画した結果だと思われる。Temasekは、Vertex Venture HoldingsやPavilion Capitalといった関連企業により、将来的な潜在能力のある大物からの注目をさらに集めている。私が知る限り、Qatar Investment Authorityが最近Uberに投資したような単発の取引は見られるが、同じようなことをしている他の政府系投資会社は多くない。私は今年、この状況は変わると思っている。他の政府系投資会社も、評価が10億米ドルをゆうに超えるような大型のテック系企業を追いかけ始めるだろう。

6. 中国のテック系大手が国外マーケットに資金ををつぎ込む

中国の多くのテック系企業は、本業重視の成長や投資活動のおかげで既に国外でも名の知れた企業になり始めている。私たちはこれらテック系大手による投資やM&Aが2015年、特にアジアの新興国やアメリカで実質上増えると見ている。最も注目すべき企業は、Alibaba、TencentやBaiduなどだが、他にもさほど有名ではない企業がいくつか現れるだろう。

7. 東南アジアで、最初に5億米ドルのイグジットを果たすテック系スタートアップが現れる

今回の予測で、最も自信が持てない予測だ。既にそこまでの評価レベルに達している東南アジアの企業は知っている。しかし、その企業が今年イグジットに成功するかどうかは自信がない。

8. 日本企業のアジア新興市場における投資活動は堅調が続く

過去数年間、日本の投資家は福島からの放射性物質、自国市場の縮小、中国以外の多角化など様々な理由でアジア新興市場を魅力的な投資先として見てきた。日本企業は概して注意深く慎重な意思決定をして、進路を変えるのに強い理由がない限り「現状にとどまる」という傾向がある。ベトナム、インドネシア、インドその他アジア新興地域への日本企業による投資は概ねこのパターンにしたがったものであり、私はこれが2015年も続くとみている。

慎重なアプローチの1つの例外はSoftBankである(当然の話)。同社はアジア新興市場で最近巨額の投資を行い、今後も同様の案件でこの動きを続けるとみられる。これに関連する投資家はTemasek Holdingsと、Softbank設立者孫正義氏の弟である孫泰蔵氏が共同で出資したVisionnaire Venturesである。

この投稿では、スタートアップやVC向けの魅力的で新しい機会についての広義の予測ではなく、以下の理由から主に投資活動について着目してきた。

・このような予測は限定された期間内で見積もることがより容易であることと、
・他のトレンド予測は実行に移されるまでに1年以上かかるか、もしくはおそらく1年以内に起きるだろうが、無意味なくらい陳腐なものであるからだ。

以上だ。

要約版:

1. インドにおけるアーリーステージのスタートアップ評価額が限界点に達するまで上昇し続ける見込み
2. スタートアップの評価上昇トレンドが続くシンガポール
3. Facebookによるアジア初の大型買収という可能性
4. Googleはアジアで買収を実施しない見込み
5. 政府系投資会社はがGICとTemasekにならいレイトステージのテック企業に投資する
6. 中国のテック系大手が国外マーケットに資金ををつぎ込む
7. 東南アジアで最初に5億米ドルのエグジットを果たすテック系スタートアップが現れる
8. 日本企業のアジア新興市場での投資活動は堅調が続く

【via Tech in Asia】 @TechinAsia
【原文】

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