従来のVC投資モデルは崩壊したのか? 3500万ドルを調達したSecretの失敗が問いかけること

by VentureBeat ゲストライター VentureBeat ゲストライター on 2015.6.1

Jenny Q. Ta氏はSqeeqeeのファウンダーで、VC投資とファイナンスの分野で15年以上の経験がある。過去にウォールストリートで総合証券会社を2社起業、経営した経験があり、その運用資産残高は2億5000万米ドルを超える。2社とも成功裏に売却し、その後テクノロジー業界に転身した。

Image Credit: Secret
Image Credit: Secret

匿名のソーシャルアプリSecretが大きな失敗に終わり、たった16ヶ月で会社をたたむこととなった結末は、起業家とベンチャーキャピタリストとの関係性をめぐる論争に火をつけた。

資金調達の話し合いの席に座る両サイドの関係当事者は今、この出来事がベンチャーキャピタルによる資金調達の将来に対してどんな意味を持つのか、そして豊富な資金を調達したスタートアップの終焉が、従来のベンチャーキャピタルモデルが破綻し、大々的な手直しが必要なことを示しているのかどうかということを厳しく問いただしている。

VCの視点から

Secretが3500万ドルという莫大な資金を調達するのを支援したVCにはGoogle Vantures(初期の投資家の1つ)、Kleiner Perkins Caufield & Byers、Index Ventures、Redpoint Ventures、何人ものエンジェル投資家たち、ベンチャーキャピタリストであるMarc Andreessen氏、そして俳優のAshton Kutcher氏などが含まれる。

こうしたかなりの資金援助がSecretにあったにも関わらず、アプリの人気は10ヶ月後に頂点に達したあと、早々に落ち込んだ。ファウンダー達は状況を好転させるため、人競合の人気アプリYik Yak、Whisper、Snapchatなどメッセージングアプリに対抗すべく必死にアプリのインターフェースを再デザインした。だが、その努力も報われることがなかった。

VCからの資金調達がどれだけ上手くいってもいかなくても、スタートアップが成功するかしないかの決め手は、急激な浮き沈みにあることがSecretのケースでわかった。

Secretと従来の資金調達モデル

SecretとのVCの契約は、従来型の方法に基づいて結ばれた。その方法とはこのようなものだ。ある起業家(仮にジムと呼ぼう)がいるとしよう。ジムにはジャックという友人がいて、ジャックはたまたまVCs‘R’UsというVC会社に友人がいた。ジャックはジムにそのVCを紹介し、ジムは一瞬にして資金調達への近道を手に入れる。

こうした流れとほぼ同じようなことが、Secretのケースに起きたことだ。SecretのDavid Byttow氏とChrys Bader氏の両設立者はGoogleの元社員だったため、昔のよしみで正式な紹介というお決まりの形をとらずに、初期の支援企業Google Venturesとのコネクションを築いた。

今回の事例をめぐる考察と疑問

Secretのケース以前にも多くの投資が失敗しており、今後も多くの投資が失敗に終わるだろう。では、Secretのケースはその他の事例とどのように異なるのだろうか。というより、現在の資金調達方法に問題があることを説明する際になぜSecretのケースが引用されるのだろう。答えは、大量資金がSecretに流入したことで収拾がつかなくなった点にある。Byttow氏は次のように説明した。「残念ながら、Secretは立ち上げた時に掲げていたビジョンから離れてしまいました。ですので、私自身、出資者そして社員にとっても、(閉鎖は)正しい決断であると思います。」だが、Byttow氏の発表を聞いていくつかの疑問が浮かんだ。

疑問1:先述の発言で彼は、ビジョンの方向性が大きく逸れた理由はVC間の問題であると言わんとしているのだろうか。こうした疑問を持つのは当然だろう。なぜなら、彼とBader氏が3ヶ月間のうちに2度のラウンドで3500万米ドル近くの資金を調達しながらも、あのような革新的で将来性のあるコンセプトの落ち込みを食い止めることが全くできず、完全な閉鎖にまで至ってしまったのはかなり衝撃的なことだからだ。

本来ならこれほど寛大な資金調達を受けていて、健全なプロダクトがあるのなら、適切なリーダーシップによってアプリの低迷を乗り越えられたはずだ。それが単なるトラフィックの低迷ではなく、適切な処置なしにはしっかりしたアプリでさえも失敗に追い込んでしまうような複雑な状況であっても。

疑問2:Google Venturesの経営パートナーのBill Maris氏はSecretの初期支援者の1人だったにもかかわらず、なぜシリーズAラウンドで同社が840万米ドルを調達した直後の追加の2500万米ドルの資金提供を断るよう、2人の設立者を説得できなかったのだろうか。Google VenturesでSecretを担当していたMaris氏は次のように述べている。「私たちは賛成しないと忠告しました。その資金は必要ないとも伝えました。また、そんなに多くの資金をそんなに早い段階で集めると、将来的に期待に応えることができなくなります。」

疑問3:もしSecretがシリーズBラウンドで2500万米ドルの資金調達を行った後に成長拡大し、それに伴い評価額も十数倍に増えていたとしたら、それでもMaris氏は追加の資金調達をすべきでないという忠告を無視するSecretのファウンダーを褒めていただろうか。

起業家側の見解

当然ながら、後から物事を言うことは簡単だ。しかし起業家の観点からすると、Secretがいとも簡単に消滅してしまうと、そこにまたいくつかの疑問がわいてくる。特に、設立者の2人がシリーズBの株の一部300万米ドル分を売却したことだ。

疑問4:多くの一流VC会社の意向に反して600万米ドル相当の株を売却したのは、ファウンダー達に落ち度があったのだろうか。ある会社が間違いを犯すことは考えられるものの、多くの会社が同じような間違いをすると考えられるだろうか。

疑問5:ファウンダー達がこれらの株を売却したことは正しかっただろうか。多分そうではない。しかし、このような状況下で株の一部を売却したファウンダー達はSecretが初めてではない。Secretのケースは失敗に終わったが、おそらく多くの企業は結果的に何の問題にも直面しなかっただろう。

疑問6:ファウンダー達はお金を返すべきなのか。The New York Timesの「Bits」のブログによれば、Maris氏は返さなくて良いという立場をとっている。もし事業が失敗せずに会社が急速な成長を遂げ、天井を突き破るような評価額になりVCが大もうけしていたら、VCは手にしたお金に見合う報酬を払ってくれただろうか。もし答えがNoであれば、なぜ彼らにお金を返す必要があるのだろうか。

疑問7:ファウンダー達は次の新規事業の立ち上げに、今回得たお金を使うだろうか。2度目の起業となれば、ファウンダー達は今回得た「経験」という名の教訓を手にしており、早い段階でVCからお金を借りるのは災難の元になりうることをよく理解しているだろう。

まとめ

今回のSecretの盛衰から、私たちはいくつかの教訓を得ることができる。

教訓1:投資に関しては、予測は不可能である。原則として、VCは「内輪で投資する」、もしくは既存のつながりに基づいて投資する、という暗黙のルールに従ってきた。そして、その暗黙のルールは慣習となった。この慣習は間違っていることをSecretは証明した。

教訓2:一般的にVCは投資先企業の意思決定のコントロールを握るため、それによってファウンダー達は間違った方向に進んでしまい、当初のビジョンに近づくよりも逆に離れてしまうことがある。これが、Byttow氏が自分が共同設立した会社を閉鎖するときに発表したコメント内で示唆したことだ。

教訓3:そもそも、なぜVCは会社の意思決定に割り込んでくるのかを問うべきである。スタートアップに投資を決めるときには、おそらく、その時点までにファウンダー達がどれだけ効果的な意思決定をしてきたかという基準に従って判断したはずだ。これが間違った戦略であることをSecretは証明した。ファウンダー達を怒らせてしまうと、彼らはただ単に出ていく決断をして、砂上の楼閣は崩れ落ちてしまうかもしれないのだ。こういう事態になれば、誰も得をしない。

教訓4:VCは自分たちの業界内の評判だけで起業家に投資するべきではない。往々にしてプロダクトは使い物にならないものだたり、ファウンダーがリーダーに向いていないことがある。VCは二つの基準となる価値に基づいて投資先を決めるべきだ。一つ目は、革新的な製品を進化させること。二つ目は、ファウンダーの専門性とビジョンを支援することだ。

最後に:

Secretの失敗は「シリコンバレーのありふれた日常」であり、VC投資のリスクの高さを示す実例がまた一つ増えただけと考える人もいるだろう。とはいえ、こうした失敗がVC事業の一部であり、シリコンバレーの日常であるかどうかはさておき、ある疑問が残る。現行のVC投資モデルが抜本的に変化すれば、こうした事例は減るかどうかという問いだ。その答は間違いなくイエスだ。

【via VentureBeat】 @VentureBeat
【原文】

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